以上のことから、歴史的町並みを観光資源としてまちづくりを行っている地域を支援する理論を構築することを目的とした。事例を通して良好な町並み景観を維持・形成しながらまちづくりを行う一手法を提案することで、同様のまちづくりを目指している地域にとって、有効な知見を得られると考えた。事例としては、重要伝統的建造物群保存地区に選定された町並みを観光資源としてまちづくりを行っている。
これらから得られた知見を総括して考察を行い、歴史的町並みを観光資源としたまちづくりを支援する理論として以下の四つを提言し結論とした。 (1)町並み保存を支援する観光活動設計について 地域住民は観光振興から経済的効果を得るだけではなく、来訪者との交流を通して町並みの価値を再認識し誇りを回復している。観光活動を意識したまちづくりは、地域を活性化させ町並みの価値を住民に再認識させる有効な手段となりうる。また、町並みを観光資源としたまちづくりをするしないに拘わらず、外部との交流が発生する以上は、地域が主体となった適切な誘致設計、空間設計、演出設計の観光活動設計を行わなければ、住民はプライバシーの侵害や交通混雑などの被害を受けることになり、地域が望む町並み保存のまちづくりは実現しない。三つの設計ステージを用いた観光活動設計が、町並み保存のまちづくりには必要である。 (2)町並み保存を支援する町並み整備について 観光のみを重視した町並み保存は、やがて観光資源そのものである町並みを変質させることになる。生活環境としての価値や文化財としての価値も重視し、三つの価値のバランスをはかりながら町並みを整備することが重要である。文化財としての価値を重視した修理が行われることにより、伝統家屋が持つ本来の生活環境の良さも享受できるようになり、それらと周辺の環境が織りなす町並み景観も蘇るこになる。それはまた町並みが持つ固有性を維持することになり、本物の町並みであることが観光資源としての魅力も高めている。 (3)町並み保存を支援する運営システムについて まちづくりを実現する運営システムにおいては、八女福島で見られる。
福岡県八女市ホームページ
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福岡県八女市観光協会「八女福島」