「政府は民の立てたもの 法度は自由を護(まも)るため 官的(かんて)きゃ吾儕(おいら)の雇いもの」。高知出身の自由民権思想家、植木枝盛(うえき・えもり)の「民権田舎歌」だ。官的は公務員。短い言葉で民権思想の本質を言い表している▲植木起草の「東洋大日本国国憲案」は明治期に民間で作られた「私擬憲法」で最も民主的とされる。早世し、忘れられていた植木の著作を戦前に掘り起こしたのが、福島生まれの憲法学者、鈴木安蔵(すずき・やすぞう)だ▲「日本国の統治権は日本国民より発す」。鈴木ら在野の学者らが主権在民を明確に規定した憲法草案を発表したのは敗戦の年の12月末。鈴木は植木らの私擬憲法を参考にしたと語っている。約1カ月後に小紙がスクープした政府案は主権在君の旧憲法の骨格を残していた。政府案を一蹴した連合国軍総司令部(GHQ)も鈴木らの案は「自由主義的」と高く評価した。GHQ草案作成にも強い影響を与えたといわれる
▲きょうは憲法記念日。一部に「押し付け憲法」批判があるものの、成立の経緯を考えれば、より良い政治のあり方を模索してきた先人の知恵が脈々と受け継がれていることは確かだろう
▲先月末の衆院補選では自民党派閥の裏金問題に対する有権者の厳しい審判が下された。だが、投票率の低さには「国民の厳粛な信託」が果たされているかが心配になる
▲自由民権運動の始まりから150年。「民選議院を早く立て 憲法(おきて)を確かに定めーよ これは今日(きょうび)の急務じゃぞ」。立憲政治の確立を求めた植木らの思いも引き継ぎたい。
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