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(多事奏論)沖縄慰霊の日 名は命そのもの、個人として立つ 高橋純子 2024年7月6日 5時00分

2024年07月06日 06時40分12秒 | 朝日新聞社

 月がこんなにも明るく、頼りになるということを久しく忘れていた。

 午前4時、沖縄戦最後の激戦地となった沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の丘の「てっぺん」を目指し、急な階段を上がる上がる息もあがる。たどりついた「黎明之塔」には多くの報道陣らが集まっていた。

heiwa-irei-okinawa.jp

 

 

 まつられているのは、沖縄戦を指揮した牛島満司令官と長勇参謀長。本土防衛のための「時間稼ぎ」に沖縄をつかい、住民の犠牲を膨らませた責任者だ。

 もともとは、2人を埋葬したと思われる場所に木柱の墓標が立っていただけだったが、1950年代に元部下たちが整備したという「黎明之塔」。それを、2004年から18年間、那覇市を拠点とする陸上自衛隊第15旅団が「集団参拝」していた。制服を着て、両氏が切腹したとされる6月23日の明け方に合わせて。陸自側は「私的な参拝」と説明してきたが、一昨年と昨年の参拝は見送られた。理由ははっきりとはわからない。

 さて、今年はどうかと構えつつ、前日会った牛島司令官の孫・牛島貞満さん(70)を思い出す。集団参拝をどう思うか尋ねた時の、少し意外な答え。

 「なんというか、滑稽なんですよね。『牛島』の字が間違っているし、命日も、牛島家では22日と伝わっています」

 スマホで塔の脇の説明文を照らす。ほんとだ。「牛嶋」だ。体裁ばかりで肝心なところがぐずぐず。マヨネーズ状の軟弱地盤のごときこの国の特徴をよく表していると、ひとり深く合点した。

     *

 牛島司令官をめぐっては、辞世の句が15旅団のホームページに掲載されていたことが今年地元紙に報じられ、国会で取り上げられるなど問題となっている。

 秋待たで枯れ行く島の青草は 皇国の春に甦(よみがえ)らなむ

 秋を待たずに枯れてしまう沖縄の若者たちの命は、春になれば天皇中心の国に甦ってほしい――そんな意味ととれる。

 「自衛隊皇軍の連続性を示している」。沖縄県平和委員会の大久保康裕事務局長(61)らは6月20日に那覇駐屯地を訪れ、削除を要請。炎天下、門の外で応対した担当者は迷彩服のネームタグをはずしていて、名刺交換もかたくなに拒んだ――という話を月明かりの下で大久保さんに聞く。ホームページは今もそのまま。「甦って」いるのは実力組織の慢心かもと、ひとり静かに合点した。

 丘に、戦没者の遺骨収集を40年以上続けている具志堅隆松さん(70)が登ってきた。遺骨が混ざっている可能性のある土砂を辺野古の埋め立てに使うなと、抗議のハンガーストライキ4日目。報道陣に囲まれ、牛島司令官の辞世の句への「返歌」を詠んでみせた。

 島ぬ青草や 皇軍が枯らち 戦さ枯骨や 土になゆる

 沖縄の住民は日本軍の戦争によって滅ぼされ、戦没者の遺骨は土になっている――そんな意味の「琉歌」だ。

 いつしか夜が明けた。今年も参拝はなかった。さあ「平和の礎(いしじ)」へ向かおう。

     *

 何度訪れても圧倒され、言葉を失う。

 刻まれた24万人超の戦没者の名前名前名前……そのひとつに泡盛を注ぎ、何度もなでこすっているおばあさんがいた。名前とは命そのものと感じ入る。

 間違われた名前、隠された名前、刻まれた名前、まだ刻まれていない名前――二度と戦争を繰り返さない。そのために、名を持つ個人として屹立(きつりつ)し、「青草」扱いしてくる国家と対峙(たいじ)する。そう決意を新たにする私の名前は高橋純子です。

 編集委員


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