仕事帰り蓑虫の巣の鞄屋さんの角を西に折れて少し自転車こいでラジコン屋、つまり商店街の終わりを今度は南に折れたら急に真っ暗な路地になってまた少し自転車こいでたらぼわっと青白く光る店。おそろしく間口の狭い店。急にその店に入らなきゃいけない気持ちが湧いて、溢れた水が低所に流れ込むように、わけわからんのだけどなんか当たり前のようにするうと入ってみると、そこにはへんてこ物体が置かれている。商品らしきものはこれだけで、店の奥におかっぱのこども。店番だな。「もう生け花は古いんですぅ。これからは昆虫や魚とか獣とか生けるのがいいんですぅ。これは名人の作なんですぅ。値引きはできないんですぅ。」声は老人のようだ。といわれても買う気はない。また来ます。と出口に向かうと、こどもが水爆級のでかいくしゃみ(だと思う)をして、その衝撃で私の意識が飛んだ。気がつくと私は草ぼうぼう真っ暗な更地に突っ立っている。なんだったんだ?ふらふら自転車に歩み寄ると自転車のカゴにコンビニの袋が投げ込まれていて、またいたずらかとつまみ上げると嗅いだことのない心地いい香りがする。結び目を解いて袋の中をのぞいてみると、中にはタコの足の切れ端とオオスズメバチの腹部と巨大な蛾か蝶の触覚と角みたいなカルシウムの塊が入っていた