商品説明
これといって取り柄もなく、容姿も至って平凡な内海庸二(うつみようじ)三十二歳、独身、男。そんな俺に突然告白してきたのは、部下の高槻薫(たかつきかおる)二十四歳。名前は可愛らしいが、高槻もれっきとした男である。しかも、今年一番のイケメンと言われる新入社員。
仕事帰りに飲みに誘われ、同期で同い年の浅丘肇(あさおかはじめ)と一緒でよければと逆に誘ってみたものの、蓋を開けてみればトンデモナイ事に!
天然平凡なサラリーマンの身に降りかかる困難や如何に。
R-18 BL小説です
著者名
ヒトミマサヤ
販売者
M,D,J.
書籍情報
製本サイズ:B6サイズ
ページ数:32
表紙加工:カラー
本文カラー:モノクロ
綴じ方:無線綴じ
【R18】同期と部下に狙われました。
*2020/06/05 誤字の一部を修正しました。
■ちょい読み
『好きなんです』と、そう言ってはにかむような笑顔を見せたのは、今年新卒で俺の部署に配属されてきた新人の高槻薫たかつきかおる二十四歳、独身、男。今期の新入社員の中で一番かっこいいと、女性社員たちがはしゃいでいたのを覚えている。
だがしかし、好きとはいったいどういう事だと、そう思う。尊敬しているとか、憧れてるならまだしも。俺は男で。どうしてそんなナチュラルに男に告白されなきゃならんのだと、そう思う間もなく高槻はあっさりと踵を返して部屋を出て行った。思わずその場にへたり込む。
――好きです…って…。マジか?
内海庸二うつみようじ三十二歳、独身、男。至って平凡な、目立つところも何もない冴えないサラリーマン。ちなみに身長は百七十センチ…という事にしてあると言えばお分かりいただけるだろうか。大学を卒業して高槻と同じ二十四の時にこの会社に入社し、今では一応この部署、営業部第三課の課長である。
話の流れ的に、その前に何が好きだなんだという名詞が出てきたかと思い返してみても、それらしいものはなく。思い出せる範囲での遣り取りは明らかに俺の話。
『内海課長って女性にモテそうですよね』
『嫌味かお前。女にモテてたら今頃結婚してるだろ。子供は二人くらいかな』
『じゃあ、彼女さんとかもいらっしゃらない?』
そう、確かそんな話。どうしてそんなに俺の事を聞くのだと、そう言った俺にあいつが言った言葉。
『好きなんです』
ごく自然にもたらされた言葉が頭の中をぐるぐると回る。デスクの真横に座り込んだまま頭を抱えていれば、いつの間に戻ってきたのか、二課の課長で同期の浅丘肇あさおかはじめの声が降ってきた。
「何してんだお前」
「ぉわっ!? っな、何でもない」
「ふぅん? その割に顔真っ赤だけど、女にでも告られた?」
「こっ、告白なんてされてないっ」
「アヤシイねお前…」
浅丘は、高槻に負けず劣らず入社時から女性社員株を総ざらいにしている男である。男の俺から見ても、仕事も出来るし男らしいと、そう思う。ついでに言えば実家が金持ちだ。
ニヤニヤと口角を歪ませて顔を覗き込んでくる浅丘の額をぐいっと手で押しやる。どうしてこう、この男はいつも揶揄ってくるのかと渋い顔をしながらも、俺は口許を手で押さえた。そんなに、赤い顔をしているだろうか。
だが浅丘は深く突っ込んでくる訳でもなく、俺の隣にある自分のデスクへとあっさり戻って行った。