防災の財源確保「最善手」はコレ ゼロ金利まで国債無制限発行

大賛成!!

髙橋 洋一

台風の甚大な被害に思う…防災の財源確保「最善手」はコレしかない  一石二鳥にも三鳥にもなる 

災害防止策の重要性を改めて実感

台風19号が、東日本に甚大な被害を与えた。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された方にお見舞い申し上げる。

筆者は、週末に大阪に行っていたため、12日(土)に大阪にとどまらざるを得ず、自宅のある東京都板橋区周辺の状況が気がかりだった。というのは、今回の台風は61年前の1958年9月、関東地方に甚大な被害を与えた「狩野川台風」の再来と言われていたからだ。

当時、筆者は3歳だったので明確な記憶はないが、子供の頃に周囲の人からそのときの被害については聞いていた。近くの石神井川が氾濫し、板橋区の資料には「浸水面積5平方km、浸水戸数12800戸におよぶ大被害」と書かれている。その後に来た台風でも、石神井川がしばしば氾濫したことをよく記憶している。

石神井川は小金井公園北部(小平市)に発し、西東京市、練馬区を流れ、板橋区から北区を経て隅田川に合流する一級河川だ。延長は25・2㎞、流域面積は62平方kmに及び、都内の中小河川としては比較的規模の大きな河川といえる。奇遇だが、石神井川の源は筆者の勤務する大学のすぐ近くであり、川を下っていくと、筆者の家の近くまで来ることができる。

狩野川台風襲来後の1959年から、10年以上の月日をかけて石神井川の拡幅・深掘工事が行われた。筆者の家の近くでも、かつて川の両岸には美しい桜並木があったが、それらを伐採し、川幅を広くし、同時に深さもより深く掘られた。それ以前には川岸に簡単に降りることができたが、拡幅・深掘工事の後はできなくなった。

それでも、1976年9月の台風17号では近くの町が石神井川の氾濫で被害を受けている。そのとき改修工事が行われてからは、2010年に下流で溢水があったものの、大きな氾濫はなかったはずだ。

最近では、1991年から「白子川地下調節池事業」及び「石神井川緊急取水事業」の工事が始められ、2017年から調節池の運用もなされている。これで、より石神井川の水位を制御できるようになった(https://www.zenken.com/hypusyou/zenkensyou/h29/P29.pdf)。

かつては、川が氾濫する場所はある程度決まっていたので、そうした地域には人は住まなかったが、今では立派な住宅地になっている。もっとも最近では、氾濫が予想される場所は、あらかじめ更地化して防災拠点としているところもある。

そんな中、今回の台風では石神井川がかなり気がかりだった。現在の筆者の自宅は川からかなり離れているので、もし氾濫しても浸水することはまずないものの、親戚の中には、板橋区のハザードマップでみると、場合によっては危ういところに住んでいる人もいるからだ。

それにしても、今はいい時代になった。上記のようなハザードマップは、本当に重要な情報だ。かつては、「このあたりまでは大丈夫」と経験によって知るしかなかったが、今ではそうした知識のない人でも、危険な場所がわかるのだから。

大阪にいながらにして、石神井川の様子がわかるようにもなった。水防災総合情報システムのライブカメラもある。また、石神井川の防災情報もネットで得られる。

そうした中、12日の夕方、石神井川が氾濫危険水位を超えたというニュースが入ってきた。筆者の住んでいる地域にも「避難準備」の情報が出された。ただし、後にそれらは解除され、大事には至らなかった。

今や、インターネットで入手できる様々な情報を活用しない手はない。ぜひ読者の皆さんも、自分の住んでいる場所や、関心ある場所の防災情報を収集できるようにしてほしい。NHKの防災アプリも有用だ。NHK放送をそのまま同時に(十数秒程度の遅れはあるものの)ネット配信してくれるのがいい。

なお余談だが、これまでも災害報道のネット同時配信は行われていたものの、今年6月に改正放送法が成立したため、近い将来、NHKの全番組が同時にネット配信されるようになる。そうなると、民放を含めた放送業界がネット番組とどう向き合っていくのかが興味深い。

全国で防災を進めるための「財源」

さて、上記のような災害対応の話は、東京に住んでいる筆者にとっては身近だが、全国の皆さんにとってもそうであるというわけではない。はっきり言えば、東京は公共事業に恵まれている。河川の管理は国家百年の計であり、全国で地道に整備すべきだ。

そのために、先立つものは財源である。9月9日の本コラム「残り3週間!『消費増税で日本沈没』を防ぐ仰天の経済政策がこれだ」でも書いたように、マイナス金利環境をいかして、「金利がゼロになるまで無制限に国債を発行する」というのが、筆者が考える最善手である。

国債を発行して何もしないのも一つの手ではあるが、いっそのこと、インフラ整備に使うという「王道」も、もちろんいい。

国交省内では一応、公共投資の採択基準がある。「公共投資による社会ベネフィットがコストを上回る」ということが条件だ。これはつまり、無駄な公共投資を行わないという意味であり、先進国ではどこでも採用されている常識的な基準である。社会ベネフィットをB、コストをCとすれば、B/C>1と書ける。

ここでは、BについてもCについても、将来受け取ることのできるベネフィットの見通しを現在価値化するために、割引率という考え方を使っている。一般的に割引率は4%とすることが多いが、本来は、期間に応じた市場金利に合わせた数値を使うべきものだ。

今の市場金利では、15年くらいまで国債金利はマイナスである。それをそのまま使うと、よほど酷い公共事業でない限り、B/C>1という採択基準はクリアできる。つまり、ほとんどの公共事業は正当化できる。

一石二鳥にも三鳥にもなる

しかし、国交省は割引率4%を見直そうとせず、自らタガをはめて公共投資を限定することで、財務省の緊縮財政に協力している。国土強靱化に熱心な人ほど、最近話題のMMT(現代貨幣理論)に熱心であるが、ここに述べたような正攻法はあまりとらない。

MMTは、どうやらその数式表現においては、どうも筆者らが推し進めてきた「リフレ」と同じもののようだ。それなのに、「リフレと同じである」とは言わずに、左派の政治運動に利用しているフシがある。さすがに「アベノミクスと根っこが同じ」では、政権批判に使うのに都合が悪いという理由からだろう。

そのようなよこしまな政治運動を優先するのではなく、国交省の割引率を変え、このマイナス金利環境を生かして建設国債を精一杯発行するほうが、はるかに国土強靱化の役に立つだろう。

なにしろ、ゼロ金利までは国債発行が可能で、すぐに公共事業に使わず、基金として積んでおくだけでいいのだ。おそらく、国土強靱化基金を100兆円以上積むことができるだろう。

しかも、この国債発行には大きなメリットがある。金融機関を苦しめるマイナス金利を是正でき、その結果、金融機関の経営改善にも役立つのだ。一石二鳥にも三鳥にもなる「ゼロ金利まで国債無制限発行」をやらないという選択肢は、筆者はないと考えるのだが、どうだろうか。

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