書評
「ヤルタ密約」のはるか前からルーズベルト政権は共産主義のスパイが手繰っていた 気がつけば、シナも東欧も共産化され、自由主義諸国も左翼的に陥落していた
江崎道朗『アメリカ側から見た、東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)
戦後70年以上を経て、やっとこさ「歴史の真実」が次々と明るみに出た。フーバー大統領はルーズベルトを「狂人」と呼んでいた。年内にようやくフーバー回想録の邦訳が日の眼をみる。
「ヴェノア文書」とは、ソ連コミンテルンのスパイ達の交信記録である。
「1940年から44年にかけて、アメリカにいるソ連のスパイとソ連本国との暗合電文をアメリカ陸軍が密かに傍受し、1943年から1980年までの長期に亘ってNSAが英国情報部と連携した解読した」一連の文書である。
ソ連が崩壊したので、1995年になって公開された。この「ヴェノア文書」がもたらした衝撃は戦後の歴史観を根底的に覆すに足る内容を持つ。ゆえに日本の大手マスコミは一切報道しないのだ。
ばれたらまずいことが書かれているからである(「パナマ文書」とは性格も歴史的価値観も異なるが、ともかくパナマ文書の衝撃などあまりに小さくて目立たないくらい)。
要は日本に戦争を仕掛けたルーズベルト政権にはコミンテルンのスパイがごろごろといて幹部の位置を占めており、不都合な情報はすべて握りつぶし、大統領を たぶらかして、なんとしても日米開戦へもって行く目的があった。「アメリカを使って日本をたたきつぶす」というのがコミンテルンの当初からの秘密の戦略 だったと江崎氏は分析する。
日米が消耗し、その隙をつけばシナ大陸は共産化し、東欧諸国もごっそりとソ連影響下にいただける。
ヤルタの密約でスターリンに騙されたルーズベルト、ワインを飲んでいたチャーチル。戦後、「中国と欧州を失ったのは誰か」と議論されたが、とき既に遅く、各地で共産主義独裁が成立していた。スターリンは横暴を極めていた。
批 判者は粛清され、国民は党の命令に背けば刑務所か労働改造か、あるいは処刑が待っていたため、沈黙を余儀なくされた。世界中で数千万の無辜の民、民主と 戦った知識人が消された。バルト三国、ポーランド、チェコスロバキア、ブルガリア、ルーマニア、そしてモンゴルが全体主義に転んだのだった。
コミンテルンに呼応したアメリカにおけるソ連のスパイはルーズベルト政権の内部、それも政策決定権をもつレベルに浸透したばかりか、政党、マスコミ、教育界、労働組合に浸透した。
キリスト教会、とりわけプロテスタント系にも、共産党と組んでフラク組織を雨後の竹の子のように増殖させた。YMCA、YWCAも、工作され青年組織も根こそぎ、共産党の「人民統一戦争」という戦術に騙されてしまった。
こうして日本もルーズベルトもコミンテルンの世紀の大陰謀に嵌められた。
ア ルジャー・ヒスや、デクスター・ホワイトや、ノーマンがスパイであることはマッカーシー議員が強烈に暴いたが、左翼マスコミの妨害で、変な結末をされてし まった。追求は中途半端におわった。あたかも大統領弾劾をいつのまにか矮小化し、罷免を免れたビルクリントンへの左翼マスコミの支援をみていると、原型の パターンはここにあることが分かる。
こうした史観は、ニクソンの時代から言われていたし、戦前、駐米の日本大使館も、その本質的な動きを知っていた。
しかし日本はドイツと同盟していたため、偽造文書や攪乱、陽動情報によって操作され、日本は「軍国主義の悪魔」というコミンテルンの情報操作によって悪いイメージに仕立て上げられた。
もちろん米国の保守系知識人のなかには、ちゃんと事態の危険性を把握していた一群の知識人、歴史観、政治家がいた。
チャールズ・ビーアド博士の『ルーズベルトの責任』(藤原書店)は2011年に翻訳され、ハミルトン・フィッシャーの『ルーズベルトの開戦責任』(草思社)は、なんと2015年になって、邦訳がでた。
左翼マスコミは、これらの本を書評せず、黙殺する戦術で対応しているが、徐々にネットを通じて真実が浸透している。
けっきょく、著者が声を挙げて警告するように、「ソ連は滅んだ。しかし、中国共産党と北朝鮮という二つの共産主義国家がアジアの平和と繁栄を 脅かしている。そして、この二つの共産国家に呼応するかのように、世界中に張り巡らされた共産主義ネッワークがいまなお、暗躍している」
こうした事態を単に憂慮しているだけではすまされない。