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温家宝来日の政治学
温家宝来日の政治学
温家宝中国首相が来日した。3年ぶりのことである。前回の訪問時、彼は国会で日本の対中ODAに「感謝を表明」(中国のメディアは報道していない)、この発言に感激した日本の無知蒙昧な議員たちはこれに感激し、顔を紅潮させながら、一斉に立ち上がり、大きな拍手で歓声を上げた。
なんとおろかな光景だろう。過去の謝罪にだけは人一倍熱心な議員たちは、これまで日本が世界で最も中国を財政支援したばかりか、小泉政権の下で、円借款が中止された後も、財務省が管轄するアジア開発銀行(ADB)や世界銀行からODA以上の援助が総裁である日本の財務省官僚の積極的なバックアップのもと、継続している事実すら知らないのである。
この事実を前に、温首相が感謝しなければそちらのほうがおかしい。だがおろかな議員たちは彼の深謀遠慮にすら気づかなかった。実はこの援助への感謝発言こそ、ODA再開のための布石であったという事実に、である。
先日、日中韓の三カ国の環境大臣の会議が北海道で開催され、この場で日本が中国の黄砂対策に1兆7500億円もの援助を行うことがあきらかにされた。
援助の中身についてはまだ詳細はあきらかではないが、いずれにしても中国の環境対策に日本から公的支援が正式に復活するという宣言である。
今回温首相は毒餃子事件の結果、日本の消費者の中国農産物への警戒感をなだめるべく、「食の安全」覚書に調印もしている。新聞テレビの背景説明は不十分である。
なぜ毒餃子事件の「犯人」がいきなり逮捕され、温が来日して調印したのか。
それは世界経済危機で中国の海外マーケットが縮小していること、そのため日本への輸出を拡大したいこと、さらには鳩山首相の訪韓で話しあわれた日中韓のEPA協議をさらに進展させたいからなのだ。
なぜなら日本がEPAに加わる際の最大のリスクが中国や韓国からの農産物の輸入にあるからだ。加盟すれば、日本の農業はさらに安い中国産に押され、一層不利な立場に追い込まれてしまう。いま中国野菜の対日輸入の最大の障害が中国品の残留農薬の危険性なのだ。温はここをなんとかしたい。それには中国製品の安全性を政府がイニシアティブをとって、日本にアピールすることが緊急である。だからこそ、中国首相が来日しての「食の安全」覚書なのだ。
現在、中国では経済の第11期5ヵ年が実行中で、計画は今年が最終年度に当たっている。
その結果、来年、2011年からは12期の中期計画に移行するのだが、この計画の達成を温は見ることができない。
なぜなら彼はすでに、2012年の秋の党大会を経て、翌年3月の全人代での引退が決まっているからである。これでは2011年から2015年にかけての次期経済計画には関与できない。だから彼はこの時点で首相として、懸案の課題、なかでも経済貿易分野の話し合いのために、来日したのである。
具体的には、環境(黄砂対策を含む)と省エネへの技術および財政援助を日本から手に入れること、これに財界経団連などの影響力を期待すること、そして中国野菜を毒餃子事件以前のように、日本の輸出し、拡大させること、である。(経団連はEPA加盟に熱心だが、農業団体は大反対である)
大国中国は常に日本に優越している。そのような迷論、珍論ばかりが花ざかりである。冗談はやめてほしい。
温の訪日を見るまでもなく、冷静にあの国を凝視すれば、中国要人たちは自国の経済政策の先行きに対して強い焦りを感じている。
一向に改善しない世界の経済危機。そして国際経済の縮小と保護主義の台頭。
いま、輸出主導で成長してきたこの30年間の大前提が崩壊しつつある。さらに党内では、成長第一主義と、安定重視の政治対立が地域間の利害衝突と平行しつつ、進行している。この対立が2012年秋の次回。18回共産党大会の人事に関連するのである。
中国の日本接近にはこれほどの背景がある。
3年前温は国会で日本のODAに「感謝」した。今回は、彼は「日本をいつまでも恨み続けるつもりはない」とも発言している。
発言の裏にあるのは反日外交のつけである。
中国は日本に対して散々、恫喝と謝罪を強要して、時の首相の靖国神社参拝にまで抗議を行ってきた。そればかりか反日デモすらしかけたのである。
ついにことここに至って、日本人は切れた、なめんじゃ、ねえよ。こうなったのだ。この世論が対中ODAを中止に追い込み、媚中政治家や田原総一郎を筆頭にした「ジャーナリスト」たちを孤立化させたのである。
いまや田原の「中国解説」は2ちゃんねるの絶好のネタと化している。
胡錦濤よ、日本国民の正当な怒りを思い知るがいい。私たちはこう言ってやらなければならない。
最後に。
ジャーナリストは冷静で、リアルな解説をすべきである。だが温の焦りを新聞もテレビも正確に伝えることはなかった。まだある。ホンダの広州における労働争議に見られるように、中国ビジネスの現場においても、根強い社会不安が広範に存在していたことすら、ほとんど指摘してこなかった。
(私は「北京五輪後に何かが起こる」
(PHP研究所)のなかで、中国国内において外資に対して、義和団的な敵意が広範に生まれつつあることに触れている)
山雨来たらんと欲して風楼に満つ やんぬるかな花の落ち去るを。
これが近未来の中国の姿である。
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