いつまで北京詣でを続けるのか 大手町の片隅から 乾正人

全く正論 恥をしれ 

いつまで北京詣でを続けるのか 大手町の片隅から 乾正人

会談する自民党の森山総務会長(左)と中国の王毅外相=23日、北京の釣魚台迎賓館(代表撮影・共同)
 

もう聞き飽きた、という読者の声が聞こえてきそうだが、何を隠そう私はメディア界きっての「親中派」である。

何しろ日本人で大学の入試(2次試験)を英語ではなく、中国語で受け、合格した記者は、朝日新聞にも東京新聞にもしんぶん赤旗にもそうはいないだろう。胡錦濤政権時代には、日中ジャーナリスト交流会議の一員として何度も訪中し、中国側メンバーを東京や沖縄で歓待した。

そんな古くからの「親中派」である私でさえ、いかがかと思うのが、国会が閉会して再び盛んになった与野党国会議員の北京詣でである。

自民党の森山裕総務会長が23日、王毅共産党政治局員兼外相と会談したほか、海江田万里衆院副議長や武見敬三厚生労働相らが相次いで訪中している。

暑い中、ご苦労なことです、とねぎらいたいのはヤマヤマだが、一連の訪中で、日本側が得たものは何もなかった。武見氏は、中国側と感染症のワクチンや薬の開発で両国が協力することで一致した、と誇らしげに発表したが、新型コロナウイルスの発生時にあらわになった中国の隠蔽(いんぺい)体質をもうお忘れか。おめでたいにもほどがある

懸案にはすべてゼロ回答

一連の会談で、中国側は、日本側が求めた福島第1原発の処理水放出を理由とした日本からの水産物輸入禁止の解除も日本産牛肉輸入禁止の解除も公安当局に理由もはっきりしないまま拘束されている日本人の解放もすべてゼロ回答だった。

李強首相以下、幹部は習近平国家主席の意を受けて(あるいは忖度(そんたく)して)発言するだけで、自らの裁量で決定できる事項は、ほとんどないからだ。

 

しかもその李強首相ですら一連の訪中団には、顔すらみせなかった。

王毅外相は、森山氏との会談で、多くの日本の国会議員が台湾を訪問していることに不快感を示し、「(台湾問題で日本は)言行を慎み、中日関係の基礎が損なわれないようにすべきだ」と厳命した。

舐(な)められたものである

国会議員が北京よりも台湾へ行きたがるのは、台湾ではそんな居丈高な扱いを受けないからでもある。そんなことすらわかっていないのなら外相失格だ。森山氏は会談後、「できるだけ多くの与野党の国会議員が中国にも訪れるし、対面の意見交換をすることが大事だ」と語ったが、ベテランの森山氏でさえこの程度の認識とは、なんとも情けない。

象徴的な日本製鉄の撤退

習近平独裁体制下では、習主席以外の誰と会っても意味がないし、会ったとしてもまともな話し合いはできない。オフレコで忌憚(きたん)のない意見交換をしてきた日中ジャーナリスト交流会議も中国側が自由な討論に難色を示し、長らく中断したままだ。

 

折しも日本製鉄は、宝山鋼鉄との合弁事業から撤退すると発表した。

日鉄は、昭和52年に中国初の近代製鉄所となる宝山製鉄所の建設に協力した日本最大の「親中派」企業だ。そんな日鉄が半世紀近くにわたった縁を切るというのだから、よくよくのことである。

政治家の皆さんも無駄な北京詣でをやめて地元まわりをされてはいかがかな。そろそろ総選挙も近いことだし。(コラムニスト)

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