養老孟司 石油問題の〝ウソの顔〟

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養老孟司
石油問題の〝ウソの顔〟 

いわゆる経済発展は、エネルギー消費と並行する。経済学がそれを「発見」するのは1970年以降のことで、しかもそれを発見したのはドイツの物理学者だった。という話をストローンの本で読んで、開いた口が塞がらなかった。素人が口を出す意味があるわけだ。それまで経済学者は、どこを見て、何を考えていたんだろうか。

なぜ文明はエネルギーを消費するのか。その根本はエントロピー問題にある。自然界では、秩序はいわば同量の無秩序と引き換えでしか手に入らない

なぜ秩序を要求するのか。意識とは、秩序活動にほかならないからである。意識的にランダムな行動が可能か。それを考えたら、すぐにわかるはずである。意識はランダムに働けないからこそ、サイコロのような単純極まる道具が、古代から残っている

意識が秩序的であるなら、意識が一定時間存在したら、その分の無秩序が溜まるはずである。つまりエントロピーが増大する。それは脳に溜まる。意識は脳の働きだからである。だからわれわれはイヤでも眠る。寝ているあいだは秩序活動である意識はない。寝ているあいだに、脳は溜まったエントロピーを処理する。

文明とは意識の産物である。文明とはその意味でつまり秩序であり、あるシステムの秩序はシステムの外部に無秩序を放り出す。それが炭酸ガス問題、環境問題の本質である

身体は意識より大きい。ゆえに根本的には意識は身体をコントロールできない。

昨年秋に、たまたまラオスのお百姓に質問した。「年に何回、米をつくるんですか」。途端に叱られた。「冗談じゃない、あんなシンドイこと、年に1度でたくさんだ」。世界銀行で働く人と、ラオスのお百姓と、どちらが人間として余裕があるのか。


会社や官庁なんて、あんなシンドイとこ、週に3日でたくさんだ。あとの4日は自分で薪を集め、木を植え、苗を育て、畑をつくればいいのである

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