「留守だったからね、とりあえず入って掃除でもしてやろうと思ったの。あんまり触るといけないから、掃除機と雑巾かけくらいなら良いかなって。そしたらね、御不浄（トイレのことですよね）の掃除しようと思ったら、御不浄用の雑巾が無いわけよ。どうやって掃除してるのかしらね。色々探したけどそれらしきのが無くて、仕方ないから一番古そうなタオルを下ろして、拭き掃除をしたわけ。ねーぇ！どう思う？」
私と同じ歳の男の子のお母さんで、几帳面を絵に描いたような真面目な人で。ついでに、気が強くて強くて。
その子は一人っ子でとても優秀、ハキハキとしていて、かけっこも一番歌を歌わせてもボーイソプラノの良い声だった。
もっさりとした私は引っ込み思案で、「ありすちゃんはおとなしいからねー」とか言いつつ、いつも母と私は、すごいねえ、と感心していた。
その彼がお嫁さんもらうわけだから、それはそれは綺麗で優秀で、と「うちの嫁はね、英語が喋れるのよ。語学が得意でね。賢いの」
ふんふん…。すごいなあー。
ま、ご想像通り、その御不浄の雑巾事件から程なくして、息子家族は九州に転勤になった。
そりゃあ、そんな留守に家に入られて、掃除して、トイレの雑巾なかったわよ、でしょー？普通のお嫁さんなら気を悪くしますよね。それが原因かどうかわからないが、実家近くから離れていったと思わざるをえない。
今日は久しぶりに用がないので家で掃除していて、普段ならトイレ用のウエットティッシュか、洗剤をトイレットペーパーに振って掃除するところを、ボロ雑巾で拭いたらやはり、さっぱりした。
私もキレイ好きの姑が、よくあららー、とか言ってたなあ、でも、本気でそれは、だらしない！とか言わなかったからおばあちゃん偉いよね、と今さら思う。
その友達のお母さん、認知症になって息子が時々訪ねて来ていたが、ついぞお嫁さんの姿は見なかった。
うちの母もホームに、姑は鬼籍に。おばちゃん、どうしてるのかな。
トイレの掃除はそのとき、自分がしたいようにしたらええやん、と思うこの頃です。
