ハンプティ・ダンプティ

おうさまのおうまをみんな あつめても
おうさまのけらいをみんな あつめても
ハンプティを もとにはもどせない

Juliet Berto

2011-05-14 14:41:21 | 映画
最近このブログの趣旨に沿うようなことがないので、手持ちの風呂敷を広げて好きな役者さんについて語ります。


ジュリエット・ベルトというフランスの女優さん。
60~70年代で主に活動していて、42歳という若さで亡くなった方で、
出演している作品もそこまで多くないです。
彼女が出演した作品の中で、自分が観たものは今のところ3つだけです。
内1つは、1シーンのみの名もなき役なので、実質2作品かな。



その1つはゴダールの「中国女」

これが初めてジュリエット・ベルトを観た作品。

レーニン主義の学習のために合宿を行っている若者5人を中心に描いた映画で、
その5人の中の1人をベルトが演じている。
たぶんこの役柄が個人的ツボだったのが、ずっとひきずっているような気がする。
もともと凄いキレイな人だなーとは思っていたけど、こんなにもハマってしまったのは容姿以外のワケがあります。
というのは・・・

この映画自体、社会派映画でけっこう小難しいものです。
当時のパリを舞台背景に、主人公達はレーニン主義を学んでいる合宿中、ラジオや新聞を通じて当時中国で起こっていた文化大革命の影響を大きく受けていく。
そして次第にマオイストになっていって・・・

という中で問題のシーンが入ります。
マオイズムの影響の元、5人の中である文化人の暗殺を計画をされ1人がそれに反対するというシーン。
それぞれが思想を持って意見を言い合う中で、唯一人ベルトが演じた子だけひたすら反対した男に向かって「修正主義者!修正主義者!」と叫んでいる・・・。
この姿にグッと来ました。

この役は元売春婦という設定で5人の中のオバカ担当みたいなもんです。
物語は文化大革命を背景に社会主義的思想や哲学に触れてけっこう難しい中で、このオバカキャラがすごく良い存在感を放ってました。

役柄的には自身は物事を深くまで理解していないけれど時代や周囲の人々に流されて乗っかる(ついでに自分自身はそんな芯のない自分を自覚していない)人間の像を担っていると受け止められます。
こういう人、よくいるよね。
例えば、そんなに政治とか詳しくないのにメディアに乗っかって政治批判をする人とか。
そんな、普段は嫌悪感を抱く人種の象徴のような役なんだけど、彼女が演じることで愛すべきバカになる不思議。

なにはともあれ、この「修正主義者!修正主義者!」って一人で叫んでる姿で完全に心が奪われてしまいました。

堅い内容の中で、このキャラの存在は一番の見所な気さえします。



もう1つがジャック・リヴェットの「セリーヌとジュリーは舟でゆく」

中国女が社会派で現実的なものに対して、この映画は不思議な世界を描いてます。
当時のパリを舞台にちょっと裏の方で起こっている不思議な事件的内容です。
不思議の国のアリスをモチーフにしている感じで、この映画の主人公の二人であるセリーヌとジュリーは不思議の世界へ導くウサギとアリスの関係で物語が始まります。
そして不思議な超然現象に二人で立ち向かっていく、という大まかなストーリーです。

中国女のベルトは20歳で、こちらは27歳。
でも相変わらずのベビーフェイスで、役柄的にも幼く見えます。
序盤、図書館でベルトが本を乱雑に扱うシーン、これがまた可愛い。
この時着ているオーバーオールが似合っていて、それがまた幼さを感じさせる感じです。

ベルトはちょっと頭のネジが緩いキャラがハマる、と思ってます。

ベルトの演じたセリーヌは最初ちょっとエキセントリックな性格ですが、映画の進行に従ってじょじょに常識人になっていきます。
逆に相方のジュリーは最初は落ち着いた人でしたが、後半どんどん暴走気味になっていきます。
少しずつ振り回す方と振り回される方の立場が逆転していくんですね。

そして最後に・・・。ていう決まり台詞ですね(笑)

てとこで二種類のジュリエット・ベルトを堪能出来ちゃう映画です。



ちなみにこの映画、個人的に好きなんですが、3時間超えの長さと、独特な演出で観る人を選ぶ映画だと思います。
中国女も、ゴダールの空間演出は素晴らしいですが、内容的にあまり人にオススメするような映画じゃないです。
この時期のゴダールの映画はいわゆる娯楽映画じゃないので、個人的にもなかなか観る気になりませんし。

まあどちらもちょっと前のフランス映画なんで、ハリウッド映画や最近の邦画を好んで観てる人には向かない感じはします。

そんな訳でジュリエット・ベルトの良さを誰かと共有したいんですがなかなか人に勧める機会もないので、ここでちょっと語ってみました。


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