ある日、ケンジ先生は疲れていて、ボヤッとしていた
ふだんなら、職場ではピシッとしているのだが、今日はだるい
気が集中していなかった
それでも、なんとか仕事をしていたのだが、翠さんが来院すると、負担の値がMAXになった
ただでさえ、ややこしい客だ
ふと、手を止め汗をふきたい (夏の終わりだった)
茫然と遠くを見ると、意識がもうろうとした…
これは、私とアダム=キリストが仕組んだことだった
次の瞬間、翠さんはあれっと思った
先生の、治療の手が止まった……動け! 先生、どうしたの! 動いて!
動かなくちゃ! 懸命に心で訴えた
と、ケンジ先生はやっと我に返り、翠さんが何か問いたげに自分を見ているのに気がついて驚いた
何が起きた?!仕事ホウキ? ばかな! この私が!
先生にもプライドがあった
優秀な人だから、誰にでもとても細やかに気を配ってきたつもりだった
だのになぜ?!
それからのケンジ先生は失態を取り戻そうと、必死で治療を行った
自分でも、なぜあんな事になったのか、わからない
とにかく、急いで済ませた
翠さんは、治療をしてもらったのだから、さして気にはしていなかったのだが、先生のプライドはズタズタになった
それからの次に彼女が来院するまでの彼は、悩みに悩んだ
…もし、悪い噂を立てられたら、どうしよう
あの先生はボケッとする時がある、腕にギモンあり、なんて言われたらどうしよう……
考えは悪い方へ悪い方へ転んでいく……
彼女が来た時、彼は最悪の心理状態だった
翠さんは先日の事はもう忘れており、なんや先生、今日は難しい顔したはるな、難しい手術でもあるんやろか、てな程度や (お前やろ!原因は!)
…それで、先生は治療をいつもより断然スピーディーにしてみせながら、彼女の意向を探った
まだそこの歯の治療が終わっていなかったので、彼女は来ざるを得なかったのだが、もし今日の治療が完了したら、次から又、別の歯のために来るだろうか
…それとも、こんな先生、もう嫌やと思ウテ、来なくなるかどっちかやな……
患者の信頼を失うのは悲しいが、先生は腹を決めた
…そして次の歯の話をしながら、どうしますかと聞いたら、驚いたことに、翠さんはよろしくお願いしますと言い、来る気満々やないか、嫌のやの字もない
当たり前や、彼女は先生の異変の様子を一過性のものやとしか、見てへんかったのやな……
先生は、こわばっていた肩の力が抜け、ほうっと安堵の深いため息をもらした…
(それは、翠さんにもわかった)
(この人は、失態をした私を許してくれたのだ……なんと、寛容な人だ……)
医者の業界も、競争は熾烈ですから、ちょっとした失敗でも客足に響くことがあります
彼はそれを恐れたのですが、彼女はなんとも思っていなかった
ただ、滅多にない人徳と腕前のよい先生だから、自分はラッキーな先生に当たった、としか思ってへんのやな、治療をやめないで下さい、と彼女の方から頼みたいぐらいや
…それでやっと安心した先生だった…
彼女が帰宅してから、 (わしは今のように、霧状の気のもやでできていて、球形に圧縮して翠さんの丹田によく宿っており、自在に彼女と心で対話ができたので)
私は彼女に、実は先生はこの前の失敗をとても気に病んでいたのだ、と教えてやった
なんだ、と翠さんは驚き、理解した
しばらくして、ケンジ先生は他の事でいろいろ悩み、考え込む日々があった
とても困っているようで、私は察してやり、ある夜彼が寝ている時に、アダム=キリストの霊と、翠さんを幽体離脱させて、
彼女にはすらりとした仏像的な弥勒菩薩の姿に変身させて顔も変えてから、先生の元に行かせた
そして、彼の夢の中で弥勒が現れたように、仕組んだ (アダムは空から見ていて監督役)
翠さんは中性的なミロクとして振る舞い、彼の悩みを聞いてやった
そんな夢の現象を 2日ほど行って、彼の悩みを軽減してやった
ある日とうとう、アダムは自分も翠さんのミロクと共に彼の夢に現れ、自己紹介をした
驚く、ケンジくん
彼はアダムに仲間になれ、と言われ、取り乱した
彼にはまるで現実の事のように、感じられたのだ……
(続く)
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