デパートで北海道フェアみたいなものをやっていたらしく、
お昼に駅弁が買ってありました。
中身はカニとウニといくらなど。
わー、うにー! と喜び勇んで口にしたところ、
走った違和感に思わず口から出しました。
「このウニはできそこないだ。食べられないよ」
頭の中でどこかのシロウがつぶやきます。
舌に乗せるだけで感じる洗剤のような苦さ。
舌がぴりぴりとして危機すら感じる味です。
「ウニを食べるときはね、苦味に邪魔されず自由で、
なんというか救われてなきゃあダメなんだ。甘くてとろけて豊かで……」
どこかのゴローがつぶやきます。
これはいったいなんだろうと観察します。
わたしも北海道よりの人間ですし、遠い親戚は海に近いので
ウニは食べたことがあります。
そんな記憶では、ウニはおいしい食べ物だと思っていたのに、
これはなんなのでしょうか。
――これは、ウニじゃない……?
まじまじと見ますが、姿だけはウニの身です。
でも味はやっぱり洗剤。
洗剤をしみこませたスポンジ片を口に入れているようです。
これはやだなあ、作ってる人が間違えて
洗剤でもこぼしたんだろうなあと、
捨てようと思いましたが、それなりのお金も払っているはず。
いったいどうしたものかと考えていると、
その変な味は薬のせいで、おかしくないものだと言われました。
……そういえば、産地から遠く運ぶウニの処理には
なにか薬剤を使うというようなことを聞いた覚えがあります。
これが、それなのでしょうか。
お高いものしか食べていないと安いものが食べられなくなって
大変だなあとは思っていましたが、
まさかわたしにもそんなことが起こるとは思いませんでした。
ほんとのウニの味なんてもう忘れるくらい食べていないような気がしますが
さりとて忘れきるほどではなかったようです。
しょうゆをかけるとごまかせるというので、ちょびちょびかけたのち
気にしないように無理やり食べました。
せっかく楽しんで食べられそうなものが、
がまんしないと食べられないものだったなんて
かなりがっかりです。
食べ物は、難しいです。