見た映画のあらすじを書いていて、ふと思い出しました。
むかしはこんなことにも悩んだなあ、と。
『あらすじ』とは筋書きを荒く述べたものですが、
筋書きを述べていないものでもあらすじと一部の人は呼ばせています。
そっちのほうが有名になってしまったので、
『あらすじ』というものはその概念をゆがまされがちです。
さて。ここで思い出していただきたいのが昔話の『桃太郎』です。
これについて二つの文を書いてみましょう。
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桃太郎は、ある日、桃から生まれた。
こどものない老夫婦の家で育てられることになった桃太郎は、
不思議な力と愛情によって人を超えたスピードでぐんぐん成長する。
一人前に成長したころ、桃太郎は近隣を騒がせる鬼を倒すことを決意し、
刀を手に鬼の本拠地へと向かうのだった。
だが、道のりは決して平坦ではなかった。
思いもかけぬ出来事に桃太郎はつぎつぎと遭遇していく。
果たして桃太郎は無事に旅を終えることができるのか――!?
熱い決意と友情の冒険活劇、ここに始まる!!
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……というのが、ありがちな『あらすじ』。
本の表紙おりこみ部分に書かれているようなものですが、
実はこれは筋を追っていないので『あらすじ』ではありません。
冒頭部分だけをおもしろおかしく強調して、
本を読みたい気分を煽るものなので『アオリ』と呼ばれます。
一方、『あらすじ』は、
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こどものいない老夫婦が拾った桃からこどもが誕生する。
老夫婦はこれに桃太郎と名づけ、自分たちのこどもとして育てた。
桃太郎は急激に一人前の男にまで成長し、
ある日近隣を騒がす鬼を退治しに行くと言い出す。
老夫婦はとまどうが、最終的には武器と食料を持たせ、旅に出す。
桃太郎は道中で動物と出会い、食料を分け与えて仲間とする。
桃太郎はお供の三匹の動物と鬼の本拠地へ乗り込み、
鬼たちを調伏する。
鬼に二度と悪事を働かないことを誓わせた桃太郎は、
奪われた財宝も取り戻し、岐路に着くのだった。
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というような感じです。
もっと簡単に言えば、誰かと話をしていて、
「あの話、どんな内容だっけ?」
なんて聞かれたときに、
『だれが』『どうして』『どうなった』を説明して、
相手もうなづけるのがあらすじです。
アオリは『だれが』『どう』しそうまでしか述べず、
『どうして』『どうなった』部分をぶちきったものです。
わたしも昔はまったく違いがわかりませんでしたが、
いやになるだけ映画を見てあらすじをまとめていたら
ようやくわかりました。
今なら、夏休みの自由研究に、見た映画のあらすじと感想を
まとめて提出できるのにと思います。