シャンパンブレイク

30年以上JAL国際線客室乗務員としてフライトし現在癌の治療中。お酒大好き旅が大好き趣味はランニング~

生き方が確実に変わっていく

2016年05月14日 | 
《病気になってよかったこともある》


留守電に残された一つのメッセージが貴重な体験の始まりでした。

[先日の健診の結果で胃癌もしくは胃潰瘍の疑いがあります。早急に胃カメラの検査をしてください。]

それから数カ月後。
癌専門病院に入院手術。

今でも思い出すのは手術後の入浴のこと。

9階にある展望風呂に入ります。
お風呂は結構空いていました。
まずは、ゆっくりと湯船につかる。

まるで温泉気分。
ひさしぶりにお風呂に入れる喜び・・・しみじみと幸福感に包まれる。
あたりまえだとおもっていたことが・・・当たり前のことではなくなった今・・・些細なことでも幸せと感じられる。

胃の手術傷痕がまだ怖いくらい生々しい。

身体を全身鏡に映して見る。
人間って不思議だなぁと改めて思う。

胸の下の真ん中からお臍のうえまでのホチキスで止めたような傷跡。
自分で見ても、自分の体はまるでサイボーグみたい。

普通の温泉なら他の人に見られないように気を使うところだが、ここでは全員が癌患者なので気にする必要もない。

湯船に温泉気分でゆっくりと使っていると、後から入ってきた方が私を見て(かなり生々しい傷痕なので、胃がんの手術後ということがすぐわかる)

「胃がんですか?私もですよ。全摘出しました。」

「えっそうですか?私は3分の2摘出です。今日抜糸したので、やっとお風呂に入れました。」

「あら、残せて良かったですねぇ~。

私は毎年人間ドッグ受けていたのに・・・バリウム検査ではわからないらしいですね。

ちょっと胃が・・・と思って胃カメラの検査をしたら・・・もう胃の中全部に癌細胞が・・・べっとりと広がっていて・・・

こういう癌はバリウムでは見つけにくいんですって・・・

そして即手術、脾臓までとりました・・・そうして今回は抗がん剤治療のための入院なんですよ。

10日間です。

でもここはいいわ。

皆さん癌だし、私のように抗がん剤治療の人が、お仲間がたくさんいるので元気づけられます。」


それを聞いて

「あら~わたしはもう抗癌剤治療は7年ですよ。

もうすぐ8年になるかしら・・・こうして生きていられるからありがたいと思ってますよ。

吐き気やなんかつらいことはつらいけど、次の抗がん剤治療までは元気だし。

だんだんと慣れてくるもんですよ。」

お風呂の中でこんな井戸端会議が始まります。

癌専門病院だからこそ仲間意識があり、恐怖と闘う勇気がもらえます。

どんな境遇にもささやかな喜びや希望を見つけることができるのも一つの才能だと気づきました。

これからの生き方が確実に変わっていく、そんな第一歩を踏み出す決心につながったのです。

そして、いま

時々そんなことがあったということを忘れたり

後遺症のダンピングの時に思い出して

再発や転移の恐怖が

症状が治まるとケロっとして

そんな繰り返しです。



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