NORIX シンプソンヘルメット

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トルコ珍道中 番外編2

2016-04-25 | Agean












サメット氏の親戚が工場近くで農業を営んでいる。 せっかくだからと立ち寄った。 親戚は典型的なトルコの農家で家の作りも昔ながらの物だそうだ。  日本同様、靴は脱いで家に入るらしい。 近所の女の子が遊びに来ていた。

パイ生地で出来た、中にチーズと卵が入ったおやつを頂いた。 トルコの家庭料理らしいが、中々美味しい。 少し残してしまったので、「残した分をホテルに持って帰りたい」と言うと何を思ったか新しい物を3個も入れてくれた。 断るわけにも行かず、そのまま持って帰る事にした。

トルコの印象を聞かれたので新しい物と古い物が入り混じった非常に興味深い国だと答えると「実に的確な答えだ」と褒められたのにはちょっと照れてしまった。

別れ際にはみんな表まで見送ってくれ、「いつか又会いましょう」と言って別れた。 人情味ある田舎の人は万国共通だ。 言葉は必要ない。 また、北海道の羽幌町を思い出してしまった。












トルコ珍道中 シンバル編3

2016-04-25 | Agean


























シンバルの良し悪しは素材である合金で決まる。 その後何度も加熱とローラーでパイ生地のように薄く延ばし、シンバルの原型である円盤に仕上げて行く。 しかしこの状態ではシンバルとしての役目は果たせず、鍋のふたのように全く響かない、もろい鉄の円盤に過ぎない。

ハンマーで叩き、延ばし、分子構造を変え、歪を取り、平な円盤にして初めて響きのあるあの音に近づくのである。 シンバルの大きさにもよるが、物によっては5千回以上叩く。 このハンマーテクニックは長年の経験と勘が必要であり、熟練工にしか出来ない仕事だ。

最近まで耳栓をする者は皆無であったが難聴になる者が多く、Ageanでは耳栓をするように指導している。工場内はハンマーと機械の騒音で、会話はほぼ出来ない状態である。  よくこの状態で今まで耳栓無に耐えていたのか不思議だ。

ハンマリングを終えると、表面を削るレーシング作業に入る。 一枚一枚重量を計り指定の重さに仕上げてやっとシンバルが完成する。



 

トルコ珍道中 シンバル編2  

2016-04-22 | Agean






シンバルの良し悪しはその材料である合金作りで決まる。 400年前からの伝統的な火入れ、石炭による加熱は、今現在Agean以外に知らない。 イスタンブール近郊のシンバルメーカーは環境問題により火から電気炉になり、伝統的なハンマリングも機械による自動打ち付けに代わってしまった。 

最大手のZ社やS社などは北米の環境問題と大量生産の使命から何十年も前に電気炉、自動ハンマリングに変更されている。  Ageanはブルガリア国境の田舎町故、400年前の製法がそのまま許されているのだ。

初めてAgeanを聞いた時、「シャーン」という実に濁りの無い澄んだ音にショックを受けた。 私のような素人でも違いがはっきりと分かるのだ。 

この独特の澄んだ「シャーン」はシンバルを薄く削れば出る音だと信じていた。 ところが、薄くしても、厚くしてもAgeanの「シャーン」は「シャーン」なのだ。 薄くするとトーンが下がり、低い「シャーン」。 厚くするとトーンが上がり、高い「シャーン」になるのだ。 

ちなみに某有名メーカーの電気炉、自動ハンマーで製造されたシンバルはどれも濁った「ゴワーン」に聞こえてしまうのは私だけだろうか?
    

Agean工場に来て初めて分かった。400年前の製法そのままに手間を惜しまず、手抜きを一切しないのが澄んだ「シャーン」の秘密なのだ。 日本刀を作る時、何百年も前の製法そのままに、火入れして何度も手打ちして作らなければ良い刀が出来ないのと同じ理屈だ。 

電気炉と自動ハンマーで手抜きをして作った「なんちゃって」日本刀など何の値も無い。  
 
シンバル編3に続く











トルコ珍道中 シンバル編1

2016-04-22 | Agean


Norixはドラム関連の仕事もしております。 今回のトルコ出張は6年前から取引のあるシンバルメーカーAgeanとの初顔合わせです。 シンバルと言えば小学校の音楽で大太鼓や小太鼓といった人気の打楽器に比べ、いまいち人気の無い楽器でした。

しかしシンバルの歴史は古く、1618年オスマン帝国時代アルメニア人の合金技術によって錫、銅、銀などを素材に、全く新しいシンバルを完成させたのが現在のシンバルのルーツだとされます。 その製造法は秘伝とされ、代々その子孫に受け継がれてきました。 日本に唯一存在するシンバルメーカーでさえ、その材料はトルコから輸入しているというから驚きます。

さて、取引先のAgeanは400年前の製造法をそのまま現在に残す世界唯一のシンバルメーカーと言って過言ではありません。  合金の製造の燃料となるマキはトルコ産、石炭はシベリア産を使用、錫はブラジル産をトルコで微妙に加工して使用します。 

まずは動画を御覧下さい。 



トルコ珍道中1

2016-04-21 | Agean
ちょっと時間が開いてしまいましたが、ヨーロッパ珍道中を再開します。トルコに着いた翌日か翌々日に熊本の震災が起きました。 被害報告がニュースで流れる度に東日本大震災が思い起こされ、ブログを更新する気になれませんでした。 しかし頭を切り替え小さくても良い、自分に出来る事を素早くやる事が被災者の「役に立つんだ」と 思うようにしました。 また、珍道中がみなさんの気分転換に少しでもなるなら、こんな嬉しい事はありません。











何とか間に合ったイタリアミラノからトルコのイスタンブールへはトルコエアーで移動。 到着ロビーでは取引先シンバルメーカーのサメット氏が私の名前を書いたプラカードを持って待っているはずだが、それらしい人はいない。

これは行き違えたか、サメット氏の携帯に電話しようとしたその時、若者が「Norixですか?」と英語で聞いて来た。 「え~?」 「プラカードも持たないでどうやって私を見つけるつもりだったの?」と突っ込みを入れたかったが、会えたからまぁいいかぁ。

到着したのがアジア側のイスタンブール空港、ホテルがあるのはヨーロッパ側。 イスタンブールは黒海が流れる橋を隔ててアジアとヨーロッパに分かれる。 サメット氏が「この混み方だとホテルに到着するには3時間以上かかる。お茶でも飲んで渋滞が収まってから出発しよう。」という事になり、エーゲ海に面したちょっとおしゃれなカフェで夕方過ぎまで時間を潰しホテルまで送って貰う。 










翌日、サメット氏ともう一人がホテルまで迎えに来た。 シンバル工場はイスタンブールから250キロも離れたエディルネにある。 ほぼブルガリア国境に位置している。 往復500キロでは今日中にホテルには戻れないのでは? 行くだけで丸一日かかってしまう。 と素朴な疑問を投げ掛けると、あっさり 「片道2時間だから余裕で帰れる」との返事。 「そんなわけないだろ。何キロで走るんだよ」と頭の中でつぶやき、いざ出発。

「ほら、見ろ! 渋滞してるじゃん。50キロ地点ですでに40分も経ってる、今日中にホテル帰れるのか?」と小さく日本語でつぶやいた途端、 あれっ? 今何キロ出してんの? あっ、ヤバ、時速160キロ!!  

怖いので、「えっと~ 制限速度って何キロだっけ?」とさりげなくスピードを落とすように諭したつもりが、「120キロだけど、誰も守らないよ」と今度は180キロまで上がった。 「あれ~逆効果かい!?」

トルコはテロが怖いから「安全なホテル」と念を押して予約して貰ったが、ある意味テロよりも怖い。生きた心地がしなかった。
















本当に2時間で着いてしまった。 あ~怖かった。 
エディルネは農業が主体の小さな田舎町。 何となく実家がある北海道の羽幌町と重なる。トラクターが我が物顔で国道を走ったり、古い廃車がドンと置き去りにされたり、懐かしい気分になる。 真っ青に晴れ渡る空を見ると羽幌に帰りたくなる。

















工場に到着。 写真右がサメット氏、左がサメット氏の友人で今回初めてエディルネに来たそうだ。 いくらレンジローバーでも時速180キロは怖かった。 帰りはゆっくり走って欲しいものだ。

トルコ珍道中2に続く