「そうだ！百名山に行こう！！vol2」

さて、家族全員で最近マイブームの「塩飴」を舐めながら歩を進める。
道は２．３日前の雨でぬかるみ、さらにはその上を２００人以上のハイカー達が歩いているもんだから、グッチャグチャ。
ズボンを汚し、足を取られながら一歩づつ着実に高度を上げていく・・・・
途中何度も抜いては、抜かれ、抜いては、抜かれを繰り返す「仲良し長野在住３人組」とのすれ違いの会話も弾む。
僕も、母ちゃんもどうしても周囲の人間に話しかけたくなる性分。
遺伝というものは怖いもので、確実にこういうところを受け継いでしまう。
兄貴と、父さんはそれを半ば呆れながら、急かしつつペースを作る。
これが「小峰家流登山」。
昔からそうだ、僕と母ちゃんは道草ばかり。
木苺を見つけては足を止め。
綺麗な花に見とれ。
山菜があれば立ち止まり。
人とすれ違えば立ち話。
吾亦紅（ワレモコウ）が大好きな母ちゃんは、見つけるとなかなかその場を動かなかった・・・・

逆に兄貴と、父さんは先を急ぎ、ペースを作る。
どちらかというと寡黙に歩き、後ろを振り返り僕らを見届ける。
兄貴にいたっては若干の連れて来られてる観丸出し。
（当時の兄貴はメソメソ、愚痴愚痴・・・・反抗期だったのだろう）
頼もしくも、せっかちな二人・・・・

しかし、この立場もここ１０年で随分変化を遂げた。
相変わらず前者の僕と母ちゃんのスタンスは変わらず、見るもの全てに感銘を受け、感嘆する。
兄貴も昔と随分変わり、丸くなった。
植物を愛で、心にゆとりを持ち、じっくりと自然と向き合うようになった。
きっと大学生生活の静岡カントリーライフがそうさせてくれたのであろう・・・・
人は身の回りの環境で随分と変わるものだ。
兄貴を見ていると年々、トゲやアクが取れ、柔和な顔つきになってきているのに気づく。
実に良い事だ。塾や受験などの競争社会でギスギスしていた頃とは別人の、活き活きとした表情を見ているとこっちまで嬉しくなってくる。
もちろん、そんな立ち振る舞いの中にも、「帰りの渋滞」＆「明日からの仕事」への焦りやストレスはあるようだが・・・・

最後に父さん。
昔のハイペースと力強さは見れないものの、一歩づつ着実に、呼吸を整えながら、そして母ちゃんに叱咤激励されながら頂を目指す・・・・
その姿を見るのは当時の「強力」ぶりを知っている僕としては切ないが、仕方ない。
４０年間サラリーマン一筋で、僕らを養ってきてくれたのだから・・・・
とは言え、今でもヒョイと自転車に跨り、埼玉から乗鞍まで、埼玉から群馬沼田まで、挙句の果ては徒歩で軽く５０キロなどを踏破。
どうやら「１人２４時間テレビ」のような事をするのが好きらしい・・・・
そんな６０代の哀愁たっぷりの背中が晩秋の焼岳に映える。

こんな取り止めのないようなことを考えながら、今度は兄貴に変わりペースメーカーを勤める僕が振り返りつつ薮道を急ぐ。
地形図で確認していた顕著な小ピークを超え、傾斜のある薮道から、平坦な泥道に変化し始めた。
どうやら主尾根に取り付いたようだ。

と思っていた瞬間。
目の前に写真の景色が姿を現した！！
「一同、言葉を失い、ただただその姿に息を呑む・・・・」
と表現したい所だが、ここは小峰家。
そうは問屋は卸さない！！

四者四様で感想を述べ、四者四様のアングルで目の前に広がる絶景を愛でる。
おそらく、２００人以上のハイカーの中でも、群を向いておしゃべりで、やかましい４人組であろう・・・・
「まあ良いさ、自然と人に迷惑を掛けなければ、楽しみ方は自由だ」。

こんな調子でまだ行程の半分・・・・
ここからがガレ場の急登の始まり。
若干父さんの息切れが増し、顔色が良くない・・・・
果たして！小峰家は焼岳の山頂２４５５ｍに立つことが出来るのであろうか？

しかし、見渡す限り３６０度紅葉の海。
こんな素晴らしい紅葉に恵まれたのは何年ぶりだろう・・・・
疲れ気味の父さんには悪いけど、どんな事があっても登頂を目指す。
こんな晴天＆無風の日に登れるチャンスはそうそう無い！！

またまた４人で「塩飴」を頬張り頂を目指す小峰家の姿・・・・