パピとママ映画のblog

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ヒトラーの忘れもの ★★★★

2017年02月25日 | アクション映画ーハ行
第2次世界大戦終了後、ドイツ兵捕虜がデンマークで地雷処理に動員されたという史実を基に描くドラマ。恐ろしい体験を共有するうちに、戦時中は敵同士だったドイツ兵捕虜とデンマーク人軍曹が次第に人間として距離を縮めていく過程を丁寧に描写する。デンマークのマルティン・サンフィリートが監督と脚本を担当。人間の善と悪の二面性を浮き彫りにする物語に引き込まれる。
あらすじ:ナチスドイツが降伏した後の1945年5月、デンマークの海岸にドイツ軍が埋めた地雷を撤去するため、ドイツ兵の捕虜が投入される。まだ幼さの残る10代の少年兵たちを監督するデンマーク軍軍曹ラスムスン(ローランド・ムーラー)は、徹底して彼らをこき使おうとする。だが、少年兵たちは誤爆や撤去作業の失敗で次々と命を落とし……。

<感想>今年になってやっと東北にも観たい映画が上映された。実話だと言うが、デンマークでの第二次世界大戦直後の5年間に、こんな不条理なことがあったこと自体に、まずは驚愕した。戦時中に、ナチが連合軍の上陸を阻止するため、デンマークの砂浜に数百万個の地雷を埋めたというもの。これを除去するのにドイツの捕虜少年兵にそれを担わすという物語。

憎しみに満ちたデンマークの鬼軍曹は、11名の少年兵たちに命がけの作業を命じる。少年たちが浜辺に埋められた無数の地雷を手探りで撤去していく。いつ爆発するか分からない。死と隣り合わせの作業が、デンマークの戦後処理の恥部というべき出来事を真っ向から描いた作品であります。

これは辛いだろうな、と覚悟して観ていたが、やはり非常に辛かった。暴力や死傷をリアルすぎるほどリアルに描写するのは、デンマーク映画の特徴なのか?しかし、その結果、目を背けるべきではないと、目を背けないという真摯な論理的姿勢が画面に宿っていたのだ。
主演のローラン・ムラが素晴らしい。彼の憮然とした表情の、刻々とした変化が、希望という微量なことを表現しているのだ。

それに、少年兵による少女救出のシーンでは、何も分からず地雷原に入ってしまった近所の少女を助けるべく、少年が手前の地雷を一つ一つ取り除きながら、たどり着くまでの間、逆の方向から別の少年が無謀にも地雷原に踏み込んで少女のもとに寄り添い、救出までの時間を共に過ごしてやるという、心が現れるような感じがした。もし、少女が地雷で死ぬのなら少年も一緒に死のうという心構えがあってのことだろう。

痛ましいシーンなのに、真っ直ぐに少女のもとへと歩み寄った少年の神々しさは忘れられない。実はその少年は、兄を地雷で亡くしていたのだった。

デンマークは大戦中ドイツに侵略され、支配されていたので、ナチに対する怨念は深いのだが、この映画では、一連の反ナチ映画とは大きく異なっている。デンマーク当局は、地雷の撤去に捕虜のナチス少年兵を使う。」
まだあどけなさの残った彼らに、課せられた労働の非人道的な残酷さはアウシュヴィッツに匹敵するであろう。十一人いた少年たちが、一人また一人と爆死していき、最後には4人になるも、その緊迫感は凄まじい。

戦勝国が無理を通してドイツの少年兵を、地雷撤去に当たらせたのだろう。ナチの被害者が今度は加害者になる。憎しみの連鎖だった。
隠された自国の恥ずべき歴史を正面から取り上げた企画が、素晴らしくて、少年たちの演技が心に残ります。ラストは夢なのだろうが、それこそが映画にできる唯一の救済なのだろう。

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