太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視点を交えたスクリューボールコメディとして「グッドバイ」のタイトルで戯曲化、演出した舞台を大泉洋、小池栄子主演で映画化。大泉洋が田島役を、小池が舞台版でも演じたキヌ子役をそれぞれ演じるほか、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、濱田岳、松重豊らが顔をそろえる。監督は「八日目の蝉」「ソロモンの偽証」の成島出。
あらすじ:戦後の復興期、文芸雑誌の編集長・田島周二は何人もの愛人を抱えていた。さすがにこのままではまずいと思った田島は彼女たちと別れる決心を固めるが、愛人たちを前にすると優柔不断な性格が災いし、別れを切り出すことが出来ずにいた。困り果てた田島は、ガサツで金に金にがめつい担ぎ屋・キヌ子に女房を演じてくれと頼み込む。しかし、泥だらけの顔を洗ったキヌ子は誰もが振り返る美しい女性だった。
<感想>2015年に文豪・太宰治の未完の遺作を脚色したケラリーノ・サンドロヴィッチが、「グッドバイ」を舞台化した恋愛群像劇を、成島出監督で映画化。中でも主人公の大泉洋演じる田島よりも、”マイ・フェア・レディ”的な偽女房で、本領発揮を出している小池栄子の素晴らしさに脱帽。着飾るより、泥まみれで働く大食い、怪力の闇市かつぎ屋女のズタボロ衣装がたまりません。彼女がせりふを”だみ声でしゃべるのには、さすがによく考えたものだと。
戦後の混乱から復興へ向かう昭和の日本を舞台に、水と油のような男女が繰り広げる恋愛狂騒劇。情けないのに、なぜかモテる文芸誌の編集長田島。10人以上もの愛人を持ち、バラ色人生を謳歌していた田島編集長が、そろそろ疎開先の青森から妻と子供を呼び寄せようと決心するのだが。
その愛人たちと別れ話をつけるのには、の至難の業だ。一計を案じた彼は、闇市で稼ぐ貧乏な担ぎ屋のキヌ子に「ニセの妻を演じてくれ」と、始めはイエスと言わずに断るキヌ子が、田島を投げ飛ばし2階の部屋から落とされるのだ。よくも大怪我をしないで生きていて良かった。そして、お金に弱い彼女を、大金で雇いニセの妻役を依頼する。
それが、風呂に入り化粧をすると、キヌ子はもの凄い美人に早変わり、田島の仕事場へ美しく着飾ったキヌ子を見た、社員の浜田岳が一目惚れしてしまう。ところが宝くじに大当たりして一攫千金。成金となった彼は、真っ白いスーツに金歯をキラキラさせながらキヌ子に近づいていく。
舞台版でも同じヒロインのキヌ子を演じた小池栄子は、人生の伴侶はお金といいながらも、恋愛には奥手でウブな一面もみせる。今回では、愛嬌たっぷりで余裕すらあり、貫禄もあった。
一人目の愛人・花屋の戦争未亡人の緒川たまきのところへ行く。美人の妻を連れた田島に、手切れ金を掴まされて別れ話を切り出され、そのまま「グッドバイ」。二番目の愛人・押し絵画家の橋本愛の部屋に行くも、大男で共謀な兄貴がいて上手く話しがつかないのだ。
それに田島は、胃痙攣という持病があり、3番目の愛人でもある内科医・水川あさみのところへ行く。それが、田島はキヌ子ともいい感じになり、まぬけなことで半殺しの目に遭い大騒動になってしまう。
青森の妻・静江のところには、朋友で文士・漆山連行の松重豊を差し向けるも、妻と松重がいい関係になってしまい、田島と離婚すると言い出すのである。大きな屋敷もある小説家の漆山・松重に、娘も懐いてしまい、妻の木村多江も浮気な夫の田島よりも、経済的にも安定するし、夫のように愛人にうつつをぬかすということはない。だから静江も、すっかり漆山との結婚することに、本気になっているのだ。
昭和モダンの洒落っ気をまとい、一目で役の個性がわかる衣装は、ほとんど衣装デザイナー・宮本茉莉によるオリジナル&ハンドメイド。小池栄子の美しさにぞっこんな、成島監督の思いを受け、キヌ子の衣装は8着を用意。グラマーな小池のスタイルを活かしたデザインやヴィンテージアクセサリーにも凝っていて素敵すぎるのだ。
大泉洋演じる田島という男は、ほぼ太宰治の人生でした。たくさんいる愛人と付き合い、八方ふさがりになる男の顛末をユーモラスに描いたもの。かれのコメディセンスの演技で、面白おかしく描かれていて、田島にとっては悲劇だけれど、端からみたら喜劇だという。しかしながら、映画のコメディすぎるドタバタ劇に、少しうんざりしながらもそれなりに成し遂げていた感じでした。
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