『赤いアモーレ』原作のマルガレート・マッツァンティーニの小説が基になったドラマ。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で夫を亡くしたローマ在住の女性が、同国への再訪を機に彼から向けられていた大きな愛を改めてかみ締める姿を見つめる。主役となる夫婦に、ペネロペ・クルスとのエミール・ハーシュ。監督を務めるのは、原作者の夫でもある『赤いアモーレ』のセルジオ・カステリット。壮大かつ感動的な物語に加え、ヒロインの女子大生時代から中年期までを見事に体現したペネロペの熱演も見ものだ。
あらすじ:サラエボで運命的な出会いを果たし、夫婦となったジェンマ(ペネロペ・クルス)とディエゴ(エミール・ハーシュ)。切望する子どもが望めなかった彼らは代理母候補を探し出し息子ピエトロを授かるが、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が勃発する。息子を連れて難を逃れたジェンマだが、ディエゴだけが街に残って命を落としてしまう。それから16年後。ローマで暮らしていたジェンマは、サラエボ時代の友人に誘われてピエトロと一緒にボスニアへ向かう。街の風景を眺めながら、ディエゴとの深い愛を思い返す彼女だが……。
<感想>現代ふうのメロドラマ、とでも言うべきか。イタリア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナなどと、物語の舞台は交錯していき、時代もまた、現在と過去を何度となく往還する。
そしてヒロインを演じるペネロペ・クルスが、女子大生時代から16歳の息子を持つ母親までを演じた叙事詩でもある。
明らかに時代と年齢が交錯し過ぎで、物語りの展開ももたついているようだが、ペネロペは若い時から中年までを上手く演じわけて熱演しているのがいい。
サラエボ、盛んに語られ始めた眼耳を覆いたくなる暴力の時代に出会い、強く愛し合う二人と、追い詰められる不妊の悩み。愛する彼の子供が欲しいと強く願うあまりに、不妊治療をしても子供が授からず、青い目の赤毛の女に代理母親になってもらい子供を産んでもらおうとする。もちろん大金を支払う。そこまでしても子供が欲しいのだろうか。養子縁組も考えるが、父親であるディエゴが薬物中毒でダメ。
その代理母なる青い目で赤毛の女の、サーデット・アクソイがゾクっとするほど妖艶で魅力的である。男の子を授かるも、ボスニア紛争の最中で夫のディエゴの間の子供ではない。何人もの兵士に乱暴されて出来た息子である。そのことを後で知ることとなるペネロペ。息子だって自分の本当の母親と父親を知るための旅だとは知らなかったのだ。真実を知ってどうする。現代っ子の息子。
母親になりたいばかりに、生まれたばかりの赤ん坊を抱いてボスニアからイタリアへと飛行機で。そこで夫のディエゴにはパスポートが無く、一緒にイタリアへ行くことが出来なかった。親切なイタリアの兵隊が、赤ん坊を抱いたペネロペに好意を示す。そして結婚。
個々のエピソードへの俳優たちの熱演や場所の印象は深く忘れがたいのだが。それらを滑らかに繋ぐハーモニーが生まれず、エモーションが削がれて感動が弱まるのが惜しいですね。これでは、泣けと言われても泣けないですよね。
多国語映画ゆえのミス・キャスティングも含めて、いくつもの重要なメッセージをはらんだこの壮大な物語は、長時間の大河ドラマの方が良かったのではないかと思った。
アンジェリーナ・ジョリーの初監督作「最愛の大地」が絶望と怒りに貫かれていたのに対して、こちらはユーゴ内戦の圧倒的な暴力の中から、なお希望を見出そうとする作品。
エミール・ハーシュの演じる人物のイメージを、ニルヴァーナのカート・コベインと重ねるという演出アイデアが秀逸でよかった。
堂々たるメロドラマ世界のなかで、恋の情熱と、母になることへのオブセッションを表現し、老け役まで演じ切るペネロペはもちろんいいのだが、代理母を演じた妖艶なサーデット・アクソイの存在感も忘れがたい。
2014年DVD鑑賞作品・・・21 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:サラエボで運命的な出会いを果たし、夫婦となったジェンマ(ペネロペ・クルス)とディエゴ(エミール・ハーシュ)。切望する子どもが望めなかった彼らは代理母候補を探し出し息子ピエトロを授かるが、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が勃発する。息子を連れて難を逃れたジェンマだが、ディエゴだけが街に残って命を落としてしまう。それから16年後。ローマで暮らしていたジェンマは、サラエボ時代の友人に誘われてピエトロと一緒にボスニアへ向かう。街の風景を眺めながら、ディエゴとの深い愛を思い返す彼女だが……。
<感想>現代ふうのメロドラマ、とでも言うべきか。イタリア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナなどと、物語の舞台は交錯していき、時代もまた、現在と過去を何度となく往還する。
そしてヒロインを演じるペネロペ・クルスが、女子大生時代から16歳の息子を持つ母親までを演じた叙事詩でもある。
明らかに時代と年齢が交錯し過ぎで、物語りの展開ももたついているようだが、ペネロペは若い時から中年までを上手く演じわけて熱演しているのがいい。
サラエボ、盛んに語られ始めた眼耳を覆いたくなる暴力の時代に出会い、強く愛し合う二人と、追い詰められる不妊の悩み。愛する彼の子供が欲しいと強く願うあまりに、不妊治療をしても子供が授からず、青い目の赤毛の女に代理母親になってもらい子供を産んでもらおうとする。もちろん大金を支払う。そこまでしても子供が欲しいのだろうか。養子縁組も考えるが、父親であるディエゴが薬物中毒でダメ。
その代理母なる青い目で赤毛の女の、サーデット・アクソイがゾクっとするほど妖艶で魅力的である。男の子を授かるも、ボスニア紛争の最中で夫のディエゴの間の子供ではない。何人もの兵士に乱暴されて出来た息子である。そのことを後で知ることとなるペネロペ。息子だって自分の本当の母親と父親を知るための旅だとは知らなかったのだ。真実を知ってどうする。現代っ子の息子。
母親になりたいばかりに、生まれたばかりの赤ん坊を抱いてボスニアからイタリアへと飛行機で。そこで夫のディエゴにはパスポートが無く、一緒にイタリアへ行くことが出来なかった。親切なイタリアの兵隊が、赤ん坊を抱いたペネロペに好意を示す。そして結婚。
個々のエピソードへの俳優たちの熱演や場所の印象は深く忘れがたいのだが。それらを滑らかに繋ぐハーモニーが生まれず、エモーションが削がれて感動が弱まるのが惜しいですね。これでは、泣けと言われても泣けないですよね。
多国語映画ゆえのミス・キャスティングも含めて、いくつもの重要なメッセージをはらんだこの壮大な物語は、長時間の大河ドラマの方が良かったのではないかと思った。
アンジェリーナ・ジョリーの初監督作「最愛の大地」が絶望と怒りに貫かれていたのに対して、こちらはユーゴ内戦の圧倒的な暴力の中から、なお希望を見出そうとする作品。
エミール・ハーシュの演じる人物のイメージを、ニルヴァーナのカート・コベインと重ねるという演出アイデアが秀逸でよかった。
堂々たるメロドラマ世界のなかで、恋の情熱と、母になることへのオブセッションを表現し、老け役まで演じ切るペネロペはもちろんいいのだが、代理母を演じた妖艶なサーデット・アクソイの存在感も忘れがたい。
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