パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分★★★

2015年08月23日 | アクション映画ーア行
ロサンゼルス映画批評家協会賞やイギリスのインディペンデント映画賞などで称賛された異色のサスペンス。思わぬ状況に追いやられる中、高速道路を車で走る男の胸中に漂う不安や焦燥を見つめる。監督と製作総指揮に『ハミングバード』などのスティーヴン・ナイトと『つぐない』などのジョー・ライト、主演は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などのトム・ハーディ。先の読めない展開に加え、車内を舞台にしたトムの一人芝居だけで物語が進む特異なスタイルが斬新。
あらすじ:超高層ビルの工事を手掛け、翌日に重要な作業に控えている大手建設会社のエリート社員アイヴァン(トム・ハーディ)。妻と息子たちの待つ家に帰ろうと愛車のBMWに乗り込むと、1本の電話がかかってくる。それを機に、彼は自宅ではなくロンドン方面の高速道路に車を走らせていく。電話で部下に翌日の作業を一方的に押し付け、妻に自宅に戻れなくなった原因を告げるアイヴァン。一刻でも早くロンドンに向かおうとする中、困惑する部下、解雇を宣告する上司、憤怒する妻からの電話を受け取る。

<感想>スクリーンに映る登場人物は、全編を通してハイウェイを走行する車のドライバーだけという一人芝居劇の主人公トム・ハーディ。シンプルな構成で、男が夜のハイウェイを車を運転しながら数人と電話で話す会話劇なのだが。
つまらないかというと、前編、86分ということもあり結構スリリングでのめり込んでいきます。

電話の会話の展開が、ロンドンへ出張した時の、たった1回の浮気で中年の女が妊娠してしまい、この日が出産だという電話が入る。途中でその浮気女との回想シーンとかは一切なしで、ロンドンへ向かう車内というワンシチュエーションだけというもの。
どうみても、この男は歩が悪い。奥さんに電話でこの浮気の事を話、子供が出来たことを話、これから出産に立ち会うということにも、妻としては腹ただしく許せないことだ。
妻子に向けた愛情の会話、「俺が悪い、愛している、許してくれ」なんて電話で言われても簡単には許せないのが当たり前だ。一時の過ちを償いたいと願う男の責任、頼りない部下をやる気を起こさせる管理職の側面など、刻一刻と変わるトム・ハーディの表情から目が離せない。

それに、明日の朝には大事な建築の仕事も控えている。それを、人に頼んでロンドンまでいくのだから、上司に電話をしたら即刻クビだと宣言される。そういう自分勝手なことで、家庭や仕事を棒にふってしまう男っているんですよね。とにかくひっきりなしに電話がかかってくる数人からの電話は彼を切迫させ、人生最大の決断を下すまで追いつめるのだ。
このシンプルすぎる状況で何をどう見せるかは、綿密に計算された脚本や編集の技も重要だが、何を置いても俳優の腕によるところが大きいようだ。
この内容に不満はないが、浮気相手と何度も逢ってそういう妊娠ということになったのなら、事前に対処できたのでは?・・・どういうわけか、1年前の浮気の代償が家庭崩壊と会社の解雇宣言とは、男ってよくよく動物的に出来ているのね。自業自得だから、同情の余地もなく誰も恨むわけにはいくまい。
夜のハイウェイで見えるのはフロントガラスに反射する美しい光と、平凡な男がリアルタイムで進行する86分は長くて短い。ラストのゴールの終り方もいい。男の今後の展開は、果たして破滅なのか希望なのかは観客に任せているのだ。
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