パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

ある男★★★★

2022年12月24日 | アクション映画ーア行

                       

芥川賞作家・平野啓一郎の同名ベストセラーを「蜜蜂と遠雷」「愚行録」の石川慶監督が映画化し、妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝が共演したヒューマンミステリー。

あらすじ:弁護士の城戸は、かつての依頼者・里枝から、亡くなった夫・大祐の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経験後に子どもを連れて故郷へ帰り、やがて出会った大祐と再婚、新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていたが、大祐は不慮の事故で帰らぬ人となった。ところが、長年疎遠になっていた大祐の兄が、遺影に写っているのは大祐ではないと話したことから、愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明したのだ。城戸は男の正体を追う中で様々な人物と出会い、驚くべき真実に近づいていく。
弁護士・城戸を妻夫木、依頼者・里枝を安藤、里枝の亡き夫・大祐を窪田が演じる。

<感想>冒頭でのある絵が印象的でした。原作は読んでいません。「ある男」戸籍売買、いわゆる、なりすましの犯罪を描きながら、その根底に犯罪者の普通の暮らし、ささやかな「普通の幸せな家庭を作る」への願いが込められていて切ない悲しみを感じた。田舎町の小さな取り残されたような文房具店にある日、その男(窪田正孝)が画材を買いに来る。シングルマザーで店を、一人で切り盛りしている(安藤サクラ)扮する里枝が応対している。

初対面の二人が、相手のことが気になりながらも互いに控えめでいる様子が微笑ましい。男はその後にまた店に来る。ある時、スケッチブックを里枝に見せる。何気ない町の風景が薄い色彩で描かれていた。その絵を見て里枝は心を動かされる。その後、彼女はその男と再婚をする。物語は一気に三年後に飛ぶ。二人の間には娘が生まれ、夫婦と二人の子供(最初の夫との間の中学生の男の子と、三歳の娘)と、里枝の母親の五人家族である。家族はいまだに懐かしい丸いちゃぶ台で食事をしている。それは男の描く絵の素朴さと重なる。

男は何処からこの町にやってきたのだろう。その男は他の町から移住してきて、地元の女と結婚をし、その町の地場産業である林業に従事し、新しい家庭を作る。人口が減少している町にとってはありがたい存在だろう。

ところが、愛した夫が事故死した後に、別人だったと判明するのだ。戸籍交換という題材から、現代社会のさまざまな矛盾を浮き彫りにしていく。家族とは自然にそこにあるものではない。それぞれが相手を気遣いながら作っていくものだろう。ところが、その平穏な暮らしが突然に、男が自分で切り倒した木の下敷きになって死んでしまう。

男が死んだ後に、伊香保温泉旅館の兄と名乗る男がやって来て、仏壇に置かれた遺影を観て、思いがけないことを云う。「これは弟ではない」と、では夫であった男は誰なのだろう。何者だったのかと、里枝は弁護士に男の正体を明らかにしてほしいと依頼する。

弁護士の城戸が調べていくうちに、その男は暗い過去(父親が殺人者)を消すために他人の戸籍を手に入れ、別人に成りすましていたことが分かる。ここからはミステリーたっちで描かれ、そこから、別人に生まれ変わり、新しい人生を生きたいという切実な想いが込められていた。

そして、主人公の弁護士の城戸は在日三世と言う設定なので、彼は亡くなった男が成りすましをしていたことが判明すると、城戸も少しは成りすましということに、感情移入してたのではないだろうか。ラスト、妻の浮気LINEを偶然みてしまった弁護士の城戸は、彼もまた冗談半分に他人になりすまして、バーで出会った男に自分の話をしていた。という、オチが意外性を帯びて面白かった。

 

 

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