パピとママ映画のblog

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ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区 ★★

2013年10月28日 | は行の映画
ポルトガルにある世界遺産「ギマランイス」を舞台にした物語を、マノエル・デ・オリヴェイラ監督ら4人のヨーロッパの巨匠が紡ぐオムニバス。孤独なバーの男を主人公にしたアキ・カウリスマキ監督のコメディー「バーテンダー」、1974年のカーネーション革命を背景に黒人と亡霊の会話を描くペドロ・コスタ監督の異色作「命の嘆き」。
閉鎖された繊維工場跡地で元従業員が思い出を語るビクトル・エリセ監督のドキュメンタリー「割れたガラス」、ギマランイス城を舞台に観光客の行動をユーモラスに描くマノエル・デ・オリヴェイラ監督作品「征服者、征服さる」の、4本で構成される。世界でも屈指の歴史的名所で撮影をしながら、どの短編にも監督の独自の世界観が色濃く刻み込まれている。

あらすじ:ギマランイスのとあるバー。男は朝からランチのための仕込みを行い、客を待っていた。しかし、近所のレストランに次々と客が吸い込まれていく様子を男は目にする(『バーテンダー』)。クーデターに参加したアフリカ系移民労働者の青年ヴェントゥーラ。森で倒れてしまい、その後精神病院に収容された彼は過去の亡霊と出会う(『スウィート・エクソシスト』)。

感想>地方でもミニシアターで上映。ポルトガルとその歴史に、特に関心のある人は別にして、一般の映画ファンは、果たしてこの題材とこのタイトルに興味を示すかどうかである。案の定、客席は2人で今週で打ち切りでしょう。
ポルトガル発祥の地を描く企画に、四者四様のアプローチを見せる興味深いオムニバス。長さも、画面サイズも、手法も違うのに、その不均衡が絶妙の調和をかもしだす並びがすごいのかもしれませんね。
まぁ、それはともあれ、ここに名を連ねる4人の監督の顔ぶれは凄い。なんといっても、104歳になるマノエル・デ・オリヴェイラ監督のコメディ調のその迷いと無駄のない偽装された観光映画。無人の広場から観光客の集団がわいてきて、やがて固まりとなって移動し始める。

その一連の現象だけで映画を観ているなぁと実感できる贅沢さ。かつては観光地でカメラを向ける日本人の姿が、揶揄されたけれど、今や誰もがどこかでスマホで静動画を撮影する時代。巨匠のユーモラスな映像に救われます。
異才ペドロ・コスタ監督のカーネーション革命の闘いは今もまだ続いているという政治的メッセージなのだろうが、その突飛な歴史への視線は当然として、ビクトル・エリセ監督の群衆写真の前でのインタビューが労働者階級の悲哀を浮かび上がらせていく迫真性など。

そして、アキ・カウリスマキのさりげない日常描写のコミカルな味わい。なぜフィンランド出身のカウリスマキと思ったら、彼は現在ポルトガル在住なんですね。
ポルトガル最初の王の銅像を通して、見る見られる関係性のアイロニーで締めくくられる。

そして曲者たちの仕事ぶりだが、どうも最高の出来とは思えない。個人的にはエリセの作品にちょっと惹かれたけれど、他は興味が薄れて辛いものがある。
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