パピとママ映画のblog

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六月燈の三姉妹 ★★★

2014年06月06日 | ら行の映画
鹿児島で和菓子店を営む一家を舞台に、経営不振の店を再建すべく3姉妹が奮起する姿を描いたホームコメディー。大型ショッピング店の台頭に悩む商店街で、3姉妹が店の立て直しに奮闘しながら、家族のあり方を見つめ直す姿をつづる。3姉妹には、次女に吹石一恵、長女に吉田羊、三女に徳永えりがふんし、津田寛治や市毛良枝が共演。監督は、『半落ち』『ツレがうつになりまして。』などの佐々部清。現代の世相を織り込みながら描かれる、互いに協力し合う家族の姿や人々の温かさ、地域の祭りの様子など今も昔も変わらない人間模様に感動する。
あらすじ:鹿児島のとあるシャッター商店街。家族で営む和菓子店のとら屋は、次女の奈美江(吹石一恵)は離婚調停中、長女の静江(吉田羊)は離婚、三女の栄(徳永えり)は婚約破棄をし不倫中で、3姉妹全員が実家に戻ってきていた。一家は店の再建を懸け、地域の祭りである六月燈の夜に新作の和菓子を出そうと考えるも……。

<感想>旧暦の6月から鹿児島で行われるお祭り、六月燈に向けて、再生に奮闘する老舗和菓子屋の姿を描いたドラマ。地方ではいずれも同じように昔と違って不景気のせいなのか、何処もシャッター商店街になっているようで、小さな商店は経営不振で火の車である。
そのように不景気なお話なのに、観終わると幸せになる。地方の実情を踏まえた良質のドラマが、「ご当地映画」から続々と生まれてきている現状についてはもっと注目されていいと思う。
和菓子屋のわけあり三姉妹を的確に描き分けておりいい感じになってます。鹿児島市内を走るチンチン電車に、フェリー乗り場、桜島の白い煙に驚く次女の旦那さん。表面上は静かなドラマだが、秘めたる思いの火花に薩摩を想いました。地元の六月燈の祭りは、初めて知りました。夜に燈籠に灯が燈るとそれは綺麗で、浴衣姿の美人姉妹も綺麗でしたね。

それぞれ、ワケありな美人三姉妹のキャスティングが絶妙です。中でも実際に九州出身である長女の静江を演じた吉田羊の、美しく落ち着いた鹿児島弁の響きに惹かれるものがあります。
それに、彼女たちを束ねる母親役の市毛良枝と、その元旦那役の、西田聖志郎が人間臭くて、駄目なところがまたグットきます。
何ていっても、母親が2度も離婚経験者で、長女がバツイチで、次女が出戻って来たのを嬉しそうに見守り、わざわざ東京から連れ戻しに来た婿さんに、娘はもう離婚したのだから、とっとと帰ってくれと、元旦那と口を揃えて言うのだ。

普通なら、わざわざ東京から寄りを戻しに話合いに来たのに、また元どうりになるように娘を説得するのが親というものだろうに。この家の人たちは、鹿児島気質というのか、あっさりとしており、嫌なものはしょうがないといった調子なのだ。
実家の母親の元旦那も、離婚したのに同居をして店の和菓子職人として働いているし、長女と次女は前の夫との間に生まれた娘で、母親は離婚をした時に長女を引き取り、次女は父親に引き取られたのだ。それが2年前にその父親が亡くなり、次女は母親のいる実家へと度々帰って来るのだ。

三女は、2度目の亭主との間の娘で、どちらかというと上の二人より器量が悪い。それに、父親と喧嘩をして家を出て別に暮らしていて、現在は妻のある男と不倫中なのだ。そのことも、元旦那と母親は気に入らなくて、本当は婿取りをして家を継がせたいのに、思うようににはいかない。
予定調和の家庭劇と言えば、それだけで悪口になりそうだが、元々家庭劇という代物は、おおかた子供たちの成長や結婚、離婚、家出とかで終わるものだった。今までの「東京物語」や「東京家族」もそう、話がうまい具合で終わったからといって、必ずしも面白くないわけではないのだ。

中でも侍女の吹石は、結構ワガママな出戻りで、これが抜群の出来なんですね。姑と上手くいかなくて離婚すると実家へ帰って来た次女の奈美江。
一方では、まだ妻を愛しており連れ戻しに来た旦那さんの津田寛治は、珍しく生真面目な性格で、振り回されっぱなしという展開。つまり、丁度六月燈の祭りのために、新和菓子を作って売り出すという忙しさ、それに店を手伝わされる始末。

六月燈の祭りに出す和菓子の名前に「カルキャン」という、“かるかん”と三姉妹の“キャンディーズ”を引っかけてネーミングした次女の旦那さん。祭りでは完売という売れ売れで、キャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」を歌う三姉妹の艶やかさについ見とれてしまった。

新商品開発という物語が隠し味的に出て来るのだが、残念ながら最後に長女が、自分が作った和菓子と偽り両親に差出し、その陰に本当は三女が、試行錯誤して作った新商品だったということ。晴れて実家に戻って店を継ぐことになる目出度しの展開なのだが、そこに三女の徳永えりを一枚かませるためには、もっと伏線が必要だったはず。
それでも、最後には納まるところに丸く納まっており、和やかな雰囲気で上々の仕上がりになってます。
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