劇団「五反田団」主宰で、映画化もされた演劇「生きてるものはいないのか」や小説「夏の水の半魚人」、映画「横道世之介」の脚本などで知られる前田司郎が、映画監督に初挑戦し、自身の同名小説を映画化した青春ドラマ。
絶縁状態だった大学時代の友人・大川と15年ぶりに再会した洞口は、人懐っこい大川のペースにのせられ、ある旅行の計画に巻き込まれる。大川の同棲相手・楓と、洞口の昔の恋人だった京子も強引に計画に引き入れ、4人はなぜかスキヤキ鍋を持って海に向かうことになるが……。洞口役の井浦新と大川役の窪塚洋介が「ピンポン」以来11年ぶりに共演。
<感想>もう終わりだというので鑑賞した。「横道世之介」の脚本でも知られるクリエーター、前田司郎が監督デビューを果たしたロードムービーである。そして、この作品で話題なのが、「ピンポン」以来となる井浦新と窪塚洋介の共演なのだ。当時から親交が深かった2人であるが、息の合った絶妙な掛け合いは、この作品の大きな見どころでもあります。
多彩な前田司郎の監督デビュー作なので、会話の微妙なズレが笑いを誘うが、この空気感をいい雰囲気に仕立てているひとつとして、重要なのが音楽でもある。ムーンライダーズの曲が3曲挿入歌として使用されている。どこに使われているかは、観てからのお楽しみですよね。
洞口、そして大川も人生に行き詰まりを感じているが、今の時代どこにでもいそうなリアルさがいい。部屋のセットの小道具など、今時な男の興味が凝縮して分かるのも面白いですよ。
大学時代の親友が15年ぶりに再会し、男女4人で小旅行をするロードムービーになっているのだが、事件らしい事件もなく、行き当たりばったりの退屈な旅に見えてしまうのだ。
冒頭、かなり高さのある陸橋から落ちる井浦新。キャスティングとしては、大川役の窪塚洋介がそっちをやった方がいいのではと思った。(以前、飛び降り自殺をした経験者なのだ)だから、ナチュラルっぽさを装った笑えないツッコミ合戦的な台詞の応酬にも、辟易してしまった。「なんか俺、一発でかいことやった方がいいよね」と大川が言えば、「たくさん小さいことやった方が良いんじゃない」なんて洞口が言う。人間同士の分かり合えなさと、分かり合いたさの、せめぎ合いが凄い。2人の自然なやりとりは巧妙で笑える。
台詞も一見脱力系に見せながら、絶妙な言葉の掛け合いが鋭く、思わず笑ってしまう。ですが、旅が始まると、そんなこともついつい忘れてしまい、いい意味でのグダグダ感に包まれてしまうのが苦痛になる。このまま主人公4人の、道程を見続けていたいという思いは、前作で手掛けた「横道世之介」で抱いた、横道らの大学生活を延々と眺めていたいという気持ちと同じ感じなような気もした。これにも、監督の世界観が存分に出ていたようですね。
生死の境界の攪乱、小旅行にモラトリアム、時おりテーマを射抜くムダなお喋りなど。これまで演劇や小説などで前田司郎作品に慣れ親しんできた人たちから見れば、これ以上のないくらい前田ワールド全開になっているので満喫できるでしょう。
しかし、彼の持ち味を存分に発揮された作品が、オーソドックスなドラマからは逃れてはいるものの、結果としてどこか類型に陥ってしまっているよう気もする。
4人のモノローグで構成した原作は、学生時代に自殺した仲間に対する屈折した心理が、ドラマを引っ張っている気がするのだが、映画ではその心情が伝わってこない。クライマックスのスキヤキが、それぞれの人生の分岐点になったことを、推測させるような映像的な工夫が欲しいところでもありますね。
そういえば、前にDVDで観た女性の友情を描いた「ペダルダンス」と似ているような気がしました。後で記事を載せたいと思います。
2013年劇場鑑賞作品・・・347 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
絶縁状態だった大学時代の友人・大川と15年ぶりに再会した洞口は、人懐っこい大川のペースにのせられ、ある旅行の計画に巻き込まれる。大川の同棲相手・楓と、洞口の昔の恋人だった京子も強引に計画に引き入れ、4人はなぜかスキヤキ鍋を持って海に向かうことになるが……。洞口役の井浦新と大川役の窪塚洋介が「ピンポン」以来11年ぶりに共演。
<感想>もう終わりだというので鑑賞した。「横道世之介」の脚本でも知られるクリエーター、前田司郎が監督デビューを果たしたロードムービーである。そして、この作品で話題なのが、「ピンポン」以来となる井浦新と窪塚洋介の共演なのだ。当時から親交が深かった2人であるが、息の合った絶妙な掛け合いは、この作品の大きな見どころでもあります。
多彩な前田司郎の監督デビュー作なので、会話の微妙なズレが笑いを誘うが、この空気感をいい雰囲気に仕立てているひとつとして、重要なのが音楽でもある。ムーンライダーズの曲が3曲挿入歌として使用されている。どこに使われているかは、観てからのお楽しみですよね。
洞口、そして大川も人生に行き詰まりを感じているが、今の時代どこにでもいそうなリアルさがいい。部屋のセットの小道具など、今時な男の興味が凝縮して分かるのも面白いですよ。
大学時代の親友が15年ぶりに再会し、男女4人で小旅行をするロードムービーになっているのだが、事件らしい事件もなく、行き当たりばったりの退屈な旅に見えてしまうのだ。
冒頭、かなり高さのある陸橋から落ちる井浦新。キャスティングとしては、大川役の窪塚洋介がそっちをやった方がいいのではと思った。(以前、飛び降り自殺をした経験者なのだ)だから、ナチュラルっぽさを装った笑えないツッコミ合戦的な台詞の応酬にも、辟易してしまった。「なんか俺、一発でかいことやった方がいいよね」と大川が言えば、「たくさん小さいことやった方が良いんじゃない」なんて洞口が言う。人間同士の分かり合えなさと、分かり合いたさの、せめぎ合いが凄い。2人の自然なやりとりは巧妙で笑える。
台詞も一見脱力系に見せながら、絶妙な言葉の掛け合いが鋭く、思わず笑ってしまう。ですが、旅が始まると、そんなこともついつい忘れてしまい、いい意味でのグダグダ感に包まれてしまうのが苦痛になる。このまま主人公4人の、道程を見続けていたいという思いは、前作で手掛けた「横道世之介」で抱いた、横道らの大学生活を延々と眺めていたいという気持ちと同じ感じなような気もした。これにも、監督の世界観が存分に出ていたようですね。
生死の境界の攪乱、小旅行にモラトリアム、時おりテーマを射抜くムダなお喋りなど。これまで演劇や小説などで前田司郎作品に慣れ親しんできた人たちから見れば、これ以上のないくらい前田ワールド全開になっているので満喫できるでしょう。
しかし、彼の持ち味を存分に発揮された作品が、オーソドックスなドラマからは逃れてはいるものの、結果としてどこか類型に陥ってしまっているよう気もする。
4人のモノローグで構成した原作は、学生時代に自殺した仲間に対する屈折した心理が、ドラマを引っ張っている気がするのだが、映画ではその心情が伝わってこない。クライマックスのスキヤキが、それぞれの人生の分岐点になったことを、推測させるような映像的な工夫が欲しいところでもありますね。
そういえば、前にDVDで観た女性の友情を描いた「ペダルダンス」と似ているような気がしました。後で記事を載せたいと思います。
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