パピとママ映画のblog

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ファーナス/訣別の朝 ★★★

2014年10月02日 | アクション映画ーハ行
レオナルド・ディカプリオやリドリー・スコットが製作に回り、オスカー俳優クリスチャン・ベイル主演で放つドラマ。アメリカの片田舎で暮らす主人公が、ささいなことをきっかけに転落の人生を歩む姿をつぶさに映し出す。弟を『ジェシー・ジェームズの暗殺』などのケイシー・アフレックが演じ、ウディ・ハレルソンやウィレム・デフォーら怪優たちが共演。閉塞感漂う町で必死にあがきつつ生きる男たちの生きざまが胸に突き刺さる。

<感想>「クレイジー・ハート」のスコット・クーパー監督のもとに、主演のクリスチャン・ベイルをはじめ、男気あふれる豪華キャスト陣が集結したクライム・サスペンスである。ペンシルバニアの片田舎町を舞台に、ささいなことをきっかけに家族や恋人を失い、絶望のどん底に立たされた男が、孤独な戦いに挑んで行く様を描いている。
タイトルのファーナスとは、溶鉱炉のこと。主人公のラッセルにはクリスチャン・ベイルと、彼が製鉄所の溶鉱炉の前で働く姿や、恋人のゾーイ・サルダナとの穏やかな暮らしに満足していたが、危なっかしい弟の行動が気掛かりだ。

ラッセルの弟ロドニーには、ケイシー・アフレックが扮して、父や兄のような製鉄所勤めを嫌って軍へ入隊し、イラク戦争から帰還したばかり。心身ともに傷ついており、怒りを露わにしながらも過激な賭け事にハマっていく。
犯罪組織絡みから借金をしている弟。兄はロドニーに代わって借金を返済し、家路に急ぐラッセルの車が、横から来た車を接触し交通事故を起こして刑務所に入ってしまう。
父親は重病を患っている。その傍らに伯父さんのサム・シェパードが父親の面倒を見ているのだが、ラッセルが服役している間に父親は亡くなってしまう。

出所後、恋人は警官のフォレスト・ウィテカーと結婚しており、弟は違法な仕事、ストリート・ファイトに関わっている事を知る。その元締めにはウィレム・デフォーが演じており、また悪役である犯罪組織ボスを演じるのは、ウディ・ハレルソン。アメなんてしゃぶってはいるが、とんでもなく狂人なオッサンを演じていました。
作品ごとに毛髪から歯並び、体重までも増減させる鬼気せまる役作りで知られているカメレオン俳優クリスチャン・ベイルが、今回はアウトローになっていた。今回は寡黙で真面目だが、心の奥に怒りと苦しみをくすぶらせている主人公を、抑制された深みのある演技で演じきっている。

主人公が伯父さんのサム・シェパードと鹿狩りに行くシーン。舞台がピッツバーグの周辺で、帰還兵の話とくれば「ディア・ハンター」を思い出すが、これはハリウッドの人たちにとってはオマージュと感じられるのだろうか。
ヤクザもののような極端なアウトローや、あるいは圧倒的な被害者として描かれることが多いのも仕方のないことだろう。
帰還兵問題とは、戦場から帰ってきた者が、平穏な日常生活の中に突然入ってきたことで起こる特殊な事柄。弟にしてみれば、今度は国のためではなく、自分のために戦って金儲けをしたい。たとえそれが、痛みを伴いもしかして自分が死ぬかもしれなと知っても構わない。やけくそのような気持ちもあったでしょう。

しかし、そんな弟の行動を心配し、兄として行方不明となった弟のことを探している内に、国が介入しない山奥のコミュニティが見つかる。そこを拠点として違法賭博やドラッグ売買はもちろんやりたい放題。
ウィレム・デフォーに連れられて弟ロドニーが試合に挑むのだが、確か勝利したように見えたのだが、帰りしなに待ち伏せをうけてウィレム・デフォーと、弟ロドニーは殺されてしまうのだ。
弟の仇を取りたい兄のラッセルに、警察は彼に自重を促すばかりなのだが、鉄工所も閉鎖に追いやられ、恋人もウィテカーに奪われ、全てを失った男には悪に対しての復讐しかないのだ。
しかし、ラッセルが復讐に来ることを知っていたのに、銃も持たずのいたウディ・ハレルソン。クリスチャンとウディのドンパチくらい観れるのかと期待したのに、何だか最後は呆気なく殺されましたね。

ストリートファイトという近現代のアメリカを象徴するようなモチーフに、ドラッグ、ブルーカラの真面目な兄と傷ついた帰還兵の弟の兄弟愛を織り交ぜ、国家や社会への怒りや悲しみ、善悪の定義さえも問うような、またしてもアメリカの不幸をてんこ盛りしたような作品で、男くさい映画でもあります。ただ残念なことにそれだけの映画に終わっていることは否めないですね。
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