第二次大戦時にドイツ軍が誇る史上最高の暗号機“エニグマ”の解読に挑み、連合軍の勝利とコンピュータの発明に貢献した実在の天才数学者アラン・チューリングの時代に翻弄された過酷な人生を映画化した感動の伝記ドラマ。天才でありながら社会性に乏しく、周囲から孤立してしまうチューリングが、彼の理解者となる女性と出会い心を通わせていく様を、エニグマ解読作業チームの奮闘を軸に、スリリングかつ感動的に描き出す。主演はTV「SHERLOCK(シャーロック)」、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のベネディクト・カンバーバッチ、共演に「はじまりのうた」のキーラ・ナイトレイ。監督は「ヘッドハンター」で世界的に注目されたノルウェーの俊英、モルテン・ティルドゥム。
<感想>東京では3月に公開されたのに、地方では4月25日にやっと上映された。これは実話に基づいた作品です。天才的な頭脳を持ちながらも、不器用にしか生きられない男の生涯が巧みなドラマに仕上がっている。主人公のアラン・チューリングに扮したベネディクト・カンバーバッチの熱演が光る。
数学者のアラン・チューリングは、第二次世界大戦中にナチスのエニグマ暗号の解読に挑んだ、英国の天才数学者の悲劇の末路ということになるが、これがそんじょそこらの伝記映画の枠を超えているのはいうまでもない。
第二次世界大戦という戦時下の苦難の歴史にもみくちゃにされながらも、彼はいかにして難解な暗号の解読を成し遂げたかというメーンのテーマもさることながら、天才であるがゆえの孤独や苦悩にまで鋭いメスを入れ、そこにユーモアとサスペンスを交えて重厚な人間ドラマに構築している。
それだけではない、暗号解読の過程で今のコンピューターに通じる機械を考案し、その機械が人間をまねる、つまり人間のイミテーションを作りだすことをゲームのように実現したのが、この天才数学者なのである。その後のコンピューターの基礎となるものを作りだし、スティーヴ・ジョブズやビル・ゲーツからもリスペクトされていたが、その人生は謎が多かった。
それというのも、政府が第二次世界大戦中に水面下で進めたエニグマ解読作戦のメンバーだったからで、1930年代に英国はヒットラー率いるドイツに宣戦布告して大戦がはじまる。ケンブリッジ大学の特別研究員で、数学の天才と言われていたアランは、政府の機密作戦に参加して、ドイツ軍が送る暗号機エニグマの解読に挑む。暗号の解読には膨大な時間が必要で、10人が24時間働き続けても、2000万年がかかるといわれていた。最初のチームリーダーは、チェスの天才ヒュー(マシュー・グード)で仲間たちと解読を進めていくが、アランは仲間から離れて計算用のマシーンを作る。
しかし、快活な性格でクロスワード・パズルが得意なジョーン(キーラ・ナイトレイ)がチームに加わると、アランも少しずつ仲間に心を開き、暗号解読によって戦争に巻き込まれた英国人の命を救いたいと考え始める。
映画は、50年代(戦後)、20年代(パブリック・スクール時代)、30年代~40年代(戦争中)と3つの時代のアランの行動を追う。時間軸が前後するところもあり、混乱させられるも、アランの人生の謎解きのような構成になっていくので、パズルの重要なピースが少しずつ明かされることで映画の緊張感が高まっていきます。
彼は、パブリック・スクール時代から周囲に馴染めず虐められていたアラン。そんな彼をただ一人温かい、目で見守るのが友人のクリストファーで、そんな学校時代での切ない友情は、80年代の「アナザー・カントリー」をも思わせる。アランは同性愛者だが、解読チームのジョーンとは普通の男女の強い絆で結ばれていく。ジョーン役にはキーラ・ナイトレイで、自分らしい生き方を貫く女性に扮して、はつらつとした魅力を見せている。
その他にも、仕事仲間のヒューに扮したダンディなマシュー・グッド、上司役のマーク・ストロング、軍人役のチャールズ・ダンスなど英国の実力派の演技陣がずらりと揃うことで、映画のコクと旨みが増しているようです。
しかし、映画の中では、第二次大戦における英国軍のおそるべき軍事作戦が暴かれ、歴史ミステリーとしても楽しめるが、観終わった後に胸にズシンとくるのは、アランの複雑な想いである。天才的な頭脳を持ち、コンピューターの基礎となるマシーンを作り、それを駆使することで英国に貢献するが、彼の戦時中の功績は、最高機密として隠されていたため何の助けにもならず、既に危かった精神は崩壊して、最後は自殺という結果に終わってしまう。
そして、最近になってやっと彼の業績が評価され始めた。「時には誰も想像しない人物が、偉業を成し遂げることがある」という印象的な言葉が登場するが、アランは孤独や痛みを抱えながらも、自分を信じる道に希望を見出していたに違いない。
2015年劇場鑑賞作品・・・89映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>東京では3月に公開されたのに、地方では4月25日にやっと上映された。これは実話に基づいた作品です。天才的な頭脳を持ちながらも、不器用にしか生きられない男の生涯が巧みなドラマに仕上がっている。主人公のアラン・チューリングに扮したベネディクト・カンバーバッチの熱演が光る。
数学者のアラン・チューリングは、第二次世界大戦中にナチスのエニグマ暗号の解読に挑んだ、英国の天才数学者の悲劇の末路ということになるが、これがそんじょそこらの伝記映画の枠を超えているのはいうまでもない。
第二次世界大戦という戦時下の苦難の歴史にもみくちゃにされながらも、彼はいかにして難解な暗号の解読を成し遂げたかというメーンのテーマもさることながら、天才であるがゆえの孤独や苦悩にまで鋭いメスを入れ、そこにユーモアとサスペンスを交えて重厚な人間ドラマに構築している。
それだけではない、暗号解読の過程で今のコンピューターに通じる機械を考案し、その機械が人間をまねる、つまり人間のイミテーションを作りだすことをゲームのように実現したのが、この天才数学者なのである。その後のコンピューターの基礎となるものを作りだし、スティーヴ・ジョブズやビル・ゲーツからもリスペクトされていたが、その人生は謎が多かった。
それというのも、政府が第二次世界大戦中に水面下で進めたエニグマ解読作戦のメンバーだったからで、1930年代に英国はヒットラー率いるドイツに宣戦布告して大戦がはじまる。ケンブリッジ大学の特別研究員で、数学の天才と言われていたアランは、政府の機密作戦に参加して、ドイツ軍が送る暗号機エニグマの解読に挑む。暗号の解読には膨大な時間が必要で、10人が24時間働き続けても、2000万年がかかるといわれていた。最初のチームリーダーは、チェスの天才ヒュー(マシュー・グード)で仲間たちと解読を進めていくが、アランは仲間から離れて計算用のマシーンを作る。
しかし、快活な性格でクロスワード・パズルが得意なジョーン(キーラ・ナイトレイ)がチームに加わると、アランも少しずつ仲間に心を開き、暗号解読によって戦争に巻き込まれた英国人の命を救いたいと考え始める。
映画は、50年代(戦後)、20年代(パブリック・スクール時代)、30年代~40年代(戦争中)と3つの時代のアランの行動を追う。時間軸が前後するところもあり、混乱させられるも、アランの人生の謎解きのような構成になっていくので、パズルの重要なピースが少しずつ明かされることで映画の緊張感が高まっていきます。
彼は、パブリック・スクール時代から周囲に馴染めず虐められていたアラン。そんな彼をただ一人温かい、目で見守るのが友人のクリストファーで、そんな学校時代での切ない友情は、80年代の「アナザー・カントリー」をも思わせる。アランは同性愛者だが、解読チームのジョーンとは普通の男女の強い絆で結ばれていく。ジョーン役にはキーラ・ナイトレイで、自分らしい生き方を貫く女性に扮して、はつらつとした魅力を見せている。
その他にも、仕事仲間のヒューに扮したダンディなマシュー・グッド、上司役のマーク・ストロング、軍人役のチャールズ・ダンスなど英国の実力派の演技陣がずらりと揃うことで、映画のコクと旨みが増しているようです。
しかし、映画の中では、第二次大戦における英国軍のおそるべき軍事作戦が暴かれ、歴史ミステリーとしても楽しめるが、観終わった後に胸にズシンとくるのは、アランの複雑な想いである。天才的な頭脳を持ち、コンピューターの基礎となるマシーンを作り、それを駆使することで英国に貢献するが、彼の戦時中の功績は、最高機密として隠されていたため何の助けにもならず、既に危かった精神は崩壊して、最後は自殺という結果に終わってしまう。
そして、最近になってやっと彼の業績が評価され始めた。「時には誰も想像しない人物が、偉業を成し遂げることがある」という印象的な言葉が登場するが、アランは孤独や痛みを抱えながらも、自分を信じる道に希望を見出していたに違いない。
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