パピとママ映画のblog

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ムーンライズ・キングダム ★★★★

2013年02月12日 | ま行の映画
若きオタク職人、ウエス・アンダーソンが、ボーイスカウト版「小さな恋のメロディ」でまさかのメインストリーム進出。

時は1965年の夏。米国東北部の沖に浮かぶニューペンザンス島は、1日に2便しか船が来ない辺鄙な小島で、警察官は疲れた中年オヤジ、シャープ警部(ブルース・ウィリス)たった一人だけ。だがその彼もヒマをもて余すほど呑気な場所だった。しかし、事件発生。毎年キャンプを行っているウォード隊長率いるボーイスカウトから、12歳の少年サムが脱走したのだ。
時を同じくして、島に住む同じ年のスージーも自宅から姿を消す。どうやら二人は、1年前の野外劇の舞台裏で電撃的な出会いをし、文通のやり取りで駆け落ちを相談しあって実行に移したらしい。2人の行く先は、「3.25海里 潮流口」2人が勝手に“ムーンライズ・キングダム”(月がのぼる王国)と名付けた手つかずの自然が残る入り江だった。
海に飛び込み、本を読み、レコードを聴き、ダンスをしてキスをするサムとスージー。しかし、シャープ警部やウォード隊長、そしてボーイスカウトたちの奮闘によって2人は捕えられてしまう。だが、そのボーイスカウト仲間は、夜口数の少ないサムの生い立ちを知る。彼は孤児で、里親のもとで不幸な人生をおくっていたのだ。しかも今回の件で里親に見捨てられ、精神鑑定と電気ショックによる治療を受けた後、少年収容所送りになるというのだ。
「サムとスージーを逃げさせてやろう」こうしてボーイスカウト総出の駆け落ち作戦が発動した。

<感想>本作は一直線に進む明快なストーリーなので、今までのアンダーソン作品の、ヤマなし意味なしのオフビートなストーリーとは比べ物にならない。「小さな恋のメロディ」を思わせるサムとスージーのピュアなラブストーリーは、繊細に練られた脚本と魅力的な小道具を駆使して撮影された映像が独特の空気感を生み出している。主役は子供たち。二人以外にもたくさんいる彼らは、みんな仏頂面のボーイスカウトの年少組。
大人は弁護士のビル・マーレイと、妻のフランシス・マクドーマンドがスージーの両親。マクドーマンドは気のいい独身の警部ブルース・ウィリスとの浮気現場を娘に見られている。「ルーパー」でタフガイを演じていたアクションスターのウィリスだが、そもそも「ダイ・ハード」はコメディ色が強かったし、「キッド」で子供との絡みも経験済みだし。今作では哀愁溢れる中年役もハマっている。

エドワード・ノートンがボーイスカウトのキャンプの隊長、そしてこれまでのアンダーソン映画ならアンジェリカ・ヒューストンのところを、今回はサムを追う福祉局員をティルダ・スィントンと、フランシス・マクドーマンドというキツめのオスカー女優2名を参戦。

加えて物語のナレーターを「ゴスフォード・パーク」の原案者でもあり、シャラマンの「レディ・イン・ザ・ウォーター」では犬に食べられる映画評論家に扮したボブ・バラバンが務めている。なお、終盤には大物ゲストとして、ボーイスカウトの司令官としてハーヴエイ・カイテルが顔を見せている。
ユニークな大人のキャラクターたちと、子供たちは何故かみんな真面目である。部屋に飾られた絵から音楽の使い方、スージーが読み聞かせる絵本の表紙まで、お洒落のセンスは抜群。

そんな中で、かつてアンダーソン映画のミューズ的存在だった、グウィネス・バルトロウを思わせる濃い水色のアイシャドウに黒々とした目張りのアイメイク、そのくせ子供だから白いハイソックス、という取り合わせが奇妙なスージーと、虐められっ子の聡明な少年サムが繰り広げる恋の逃避行。

びっくりするのが嵐で島が鉄砲水に襲われ、それに高波まで押し寄せ、高台の教会にみんなが避難する。しかし、そこに駆け落ちしてきた2人がいて見つかってしまう。2人は嵐の中、教会の鐘の塔まで登りつめ、雷轟く嵐の中あわやというところまで追いつめられる。そこへブルース警部が助けに駆け付け、サムを養子にするというのだ。しかし、2人は足を滑らせて、さすが「ダイ・ハード」オヤジだ、ロープをしっかり体に巻きつけて2人を助ける。
映画を観終わった後に印象に残るのは、彼らを包む美しい島の入り江。赤のコートに緑色の帽子の男(ボブ・バラバン)がレポーターを務めれば、映画の始まりとエンドクレジットに流れ、使われている楽器の説明が入る音楽が対になっているのがとっても素敵です。
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