パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

きいろいゾウ ★★★.5

2013年02月06日 | か行の映画
「余命1ヶ月の花嫁」「ヴァイブレータ」など男女の愛について描いてきた廣木隆一監督が、西加奈子の同名ベストセラー(小学館・刊)を映画化。秘密を抱えたまま出会ってすぐ結婚した二人が、悩み傷つきながらお互いと向き合い夫婦になっていく様子を綴る。

ともに原作のファンである「ツレがうつになりまして。」の宮崎あおいと「新しい靴を買わなくちゃ」の向井理が、互いにかけがえのない存在になっていく二人を演じる。ほか、「映画 怪物くん」の濱田龍臣、「陰日向に咲く」の緒川たまき、「ぐるりのこと」のリリー・フランキー、「私の人生 わが命のタンゴ」の松原智恵子、「悪人」の柄本明らが出演。主題歌はゴスペラーズの『氷の花』。
あらすじ:妻利愛子(つまりあいこ)=“ツマ”(宮崎あおい)は、幼少の頃過ごした入院生活の中で、『きいろいゾウ』という絵本を大切に読み、日々の慰めにしていた。絵本を通じて自由に旅をする空想をするうちに、ツマは木々や動物たちの声が聴こえるようになる。

売れない小説家の無辜歩(むこあゆむ)=“ムコ”(向井理)は、過去に捕らわれていた。彼の背中には、大きな鳥のタトゥーが入っている。ある満月の夜、ツマとムコは出会い、すぐに結婚する。日々を慈しみながら穏やかに生活をする二人。
しかし二人はそれぞれ秘密を抱えている。ある日、ムコ宛てに差出人名のない手紙が届く。それはムコがぬぐい去ることができない過去に関係しており、二人の関係が揺らぎ始める……。(作品資料より)
<感想>観ていてそこはかとなく高村光太郎の「智恵子抄」の現代版みたいな印象を受けた。ムコは小説を書く傍ら、毎晩ツマへの想いを日記に綴っている。ツマは、毎日のようにやってくる犬や、山羊と会話を楽しんだり、水撒きをしながら植物とも会話をして、時には悩みを打ち明けたりするのだ。

ところが、夜になって寝床の蚊帳の上に大きな穴が開いており、そこから入ってきたのであろう蛾がムコの額に止まっていた。ツマは全部の虫とか植物とか生き物を好きなのではないのだ。お風呂に入ろうとして、湯船に小さな沢蟹が茹っており、大騒ぎをしてムコに知らせる可愛い子供じみた面もある。

上品な夫婦喧嘩映画ともいえるわけだが、それにしてはムコが元不倫相手と、手紙の差し出し人である彼女の夫(リリー・フランキー)に会いに東京へ行き、その間ムコが戻らないのではと、心細い思いをしているツマの心情が痛いほど伝わってきて、夫婦喧嘩の解決の部分があっさりして適当な処理方だったのが、勿体なかったと思う。ムコ宛てに差出人名の手紙が届いた夜、ツマがヤキモチを焼いて、ムコの手の甲をコップや茶碗でガンガンと殴るのは、行き過ぎではないかとハラハラした。
不器用で浮世離れした若い夫婦の、オママゴトのような日常生活。周囲の人たちもみな風変わりで、仲睦まじい隣人夫婦のアレチ(柄本明)と痴ほう症の妻セイカ(松原千恵子)は、ムコとツマにとって憧れの存在でもある。
何かから逃げ、何かからハミ出している。変わり者たちが、互いの痛みや傷口をいたわり合っているこういう映画もあってもいいと思う。

夫婦間の問題だけでなく、話を広げて言葉とか絵本とか個人的な思いが理不尽に、あるいは不条理に現実化する恐怖みたいなものを、表面に出しているのがユニークですね。
手の込んだやり口を凝らした上で、一見艶やかに仕上げた世界観、それを映画はちゃんと映画化していた。ロケ地や、美術もいいですよね。ツマとムコのセリフの関西弁の表現力が、観客にも自然に響いて違和感がなく素晴らしいい。
原作つきということは、そういう小説のコンセプトに企画者が惹かれたのかもしれません。劇映画なのにエッセー映画のような、そんな言葉が当てはまるように感じたのはそのせいか。
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