パピとママ映画のblog

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恋するリベラーチェ ★★.5

2013年11月03日 | か行の映画
1950~70年代アメリカで派手な衣装やパフォーマンスで一世を風靡し、同性愛者でもあった実在の天才ピアニスト、リベラーチェの晩年を、マイケル・ダグラス&マット・デイモン主演、スティーブン・ソダーバーグ監督で映画化した。
1977年夏、ラスベガスで出会ったリベラーチェと青年スコット・ソーソンは、年齢や住む世界を超えて互いにひかれ合う。スコットは運転手兼愛人としてリベラーチェを支え、リベラーチェはスコットの親代わりにもなり、2人の秘められた関係は順調に続くかと思われた。しかし、薬物への依存やマンネリ化した日々が次第に2人の間に溝を深めていく。ダグラスがリベラーチェに、デイモンがスコットに扮した。

<感想>リベラーチェって知らなかった。アメリカの天才ピアニストだというが、その名前もアメリカでは記憶の彼方へ追いやられているようだし、ましてや日本では音楽通の人しか知られていないだろう。
しかしだ、エルトン・ジョンも真っ青なド派手な衣装に身を包んだ、伝説のショービズ系ピアニストにして同性愛者だった、リベラーチェの伝記になっているんですね。日本では、ド派手な衣装に、宙ズリでステージを盛り上げるというと、歌手の美川憲一に匹敵するのかしら。

コンサートというよりもまさにショーで、キンキラキンの衣装を着け、アクロバティックなまでの指さばきでピアノのキーを叩く。聴くというより見るという感じだから、クラシックファンはいないと思う。観客を巻き込んでの演出では、男性客と女性客に分けて声掛けをさせ、「ほら、男性客も来てるよね」などと言う。リベラーチェのステージに詰めかけるのは、オバチャンだけという世評に対するささやかな抵抗なのだ。
実際多くのアメリカ男性にとってリベラーチェは、男の恥であったらしい。メディアは彼の女性的な態度や好みを攻撃し、同性愛者と書きたてた。
ハリウッドが創り出したマッチョ幻想がまだ支配的だった1950年代に、おんな男ぶりを見せつけながら、しかし彼は、同性愛者とされることには死ぬまで徹底抗戦したリベラーチェ。そのために私生活が漏れることをは用心を極め、同性愛者ではという推測記事を書いた「デイリー・ミラー誌」を名誉棄損で訴え勝訴している。
この映画は、暴露手記をもとにしているから、リベラーチェは同性愛者という前提が揺るがないのだ。演じるマイケル・ダグラスがステレオタイプのオネエ演技を見せつけるのに対して、マット・デイモン演じるスコット・ソーソンは、バイセクシュアルということでいくらかオネエっぽさは感じない。

それに、リベラーチェが心酔していたドイツのバイエルン国王ルートヴィヒ二世との比較の方が興味深かった。インテリアや衣装はもっとルートヴィヒ調にすべきではないのか。彼は同性愛者という認識は薄いと思う。何よりも美しいもの、ロマチックなもの、ゴージャスなもの、そして謎めいたものが好きなだけなのだ。

父親ほどに年上のリベラーチェはしかし、悪魔のような性格だったようだ。甘い言葉でスコットを操るかと思えば、気分次第でつれなくし、飽きて来ると若い男と浮気に走る。純粋なスコットは徐々に精神のバランスを崩していき・・・。
って、スコットもヤク中で酷いし、養子にしてもらい挙句にLAに屋敷まで買ってもらう。それを書面として自分で持っていた無かったこと。遺言状のことだって、普通は写しを持っているでしょうに。豪華な衣装や、車に宝石と、おこずかいだって使い放題だし、その時でも少しづつ貯金しておけばよかったのにね。

でも、リベラーチェの最期は、老いてゆく自分の顔を見て、「まるでドリアン・グレイの最期だ」と溜め息を付く。永遠の美しさを得るために、顔の美容整形も老人には崩れて見るも無残だし、エイズにかかって死ぬとはね。これも同性愛者の宿命なのかしら。
何よりもキッチュさ満載の煌びやかな映像と、マイケル・ダグラスの怪演ぶりに驚かされました。そして、この映画のメーキャップが主役だと言って良いほど目立ってましたね。エミー賞特殊メーキャップ賞に日本人の矢田弘さんが受賞しているそうです。
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