ロカルノ国際映画祭ほか世界中の映画祭や映画賞を席巻した、未成年の保護施設を舞台に生きる喜びを描いた感動のヒューマンドラマ。ティーンエイジャーをケアするための短期保護施設で働くヒロインの心の闇や、彼女を取り巻く施設の子供たちが心に受けた傷を丁寧にすくい取る。監督と脚本は、これまでショートフィルムなどを手掛けてきたデスティン・ダニエル・クレットン。主演は、テレビドラマ「ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ」シリーズなどのブリー・ラーソン。人とのつながりや人の温かさを感じさせる、珠玉のストーリーが心に響く。
あらすじ:問題を抱える子供のためのグループホーム「ショートターム12」で働くグレイス(ブリー・ラーソン)。グレイスは、新入りのジェイデン(ケイトリン・デヴァー)という少女を担当することになる。グレイスは施設の同僚メイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)と付き合っていたが、ある日、妊娠していることが判明する。そんな中、グレイスはジェイデンが父親に虐待されていたことに気付き……。
<感想>10代の少年少女を対象とした、問題を抱える子供たちのためのグループホーム。その物語と聞けば、子供たちの生育環境とか、彼らを救おうとする努力とかが描かれるかと想像してしまう。けれど、途中から話は、ケアテイカーの一人、グレイスが自身の過去と闘う話へとシフトされていく。
救われているのは往々にして救おうとしている側の方なのだ。それは最悪の場合、両者の共倒れを招くのだけれど、上手くいけばハッピーエンドも待っている。
車の窓をたたき割っている少女がいる。自分を虐待し、刑務所から出所してきた父親が乗っている車だ。十代の問題を抱えた若者たちを、短期間世話する施設に彼女はいるのだが、世話をするやはり若い男女と、世話をされる側のどちらがどちらだか判らなくなる瞬間がこの映画にはあるように思えた。
現在進行形のある状況を示しているようで、生々しい現実。星条旗をまとって逃げる男もいる。彼らは、施設の敷地外へ飛び出した子どもの身体に触れてはいけないという規則がある。だから、逃亡した子どもを連れ戻す時も、ひたすら追いかけ、言葉で説得し続けるしかない。人にうちあけられない自分の内面の爆発と、底に落ちていくような不安を描きだして、なおも若さの爽やかさと熱気があるようにも感じた。
ラップや絵、創作童話が少年少女の心の叫びを代弁して、親密なクローズアップが効果的に用いられているのがいい。
撮影が行われたカリフォルニアの眩しい陽光が、心に傷を負った者たちを温かく包み込みながらも、彼らの陰影みたいなものを強調するのだ。
撮影方法が、なるべく引かずに、できるだけ近づき寄り添うように撮っている手持ちカメラも悪くないと思う。
グループホームや指導員ができることの限界もきちんと触れてはいるのだが、全体的にちょっと行儀がよすぎるというのか、いい話すぎやしないかと感じてしまうところもある。
登場する指導員たちの自給は12ドルの設定(資料によると)だというから、こうした仕事は、あちらもこちらも何かとキツそうに見える。保護施設の運営も、指導員たちも自分たちの生活とかは度外視して、殆どボランティアなのだろう。
見ていて、最後にはこういった子供たちをケアしてくれる施設や、そこで働く人たちことを知るということが、映画を観ていて何だかそういう人たちに対して、自分の心も優しくなり安らいだ気持ちになってくる。余りにも自分の置かれた現在の立場が幸せだからだろう。
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