『パラノーマル・アクティビティ』シリーズなどのヒットメーカー、ジェイソン・ブラム製作のもと、俳優のジョエル・エドガートンが監督を務めたサイコスリラー。幸せに暮らす夫婦が、ある男から執拗(しつよう)にプレゼントを贈り続けられる恐怖を描く。不気味なギフトに翻弄(ほんろう)される夫婦に『ディス/コネクト』などのジェイソン・ベイトマンと、『それでも恋するバルセロナ』などのレベッカ・ホールがふんし、彼らを恐怖に陥れる男をジョエルが演じる。
あらすじ:転居先で幸せな生活を送っている夫婦サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)の前に、サイモンの高校時代の同級生だというゴード(ジョエル・エドガートン)が現れる。再会を祝いゴードは1本のワインをプレゼントし、その後もたびたび二人を訪ねては贈り物をし続ける。次第にその内容がエスカレートしていき、二人が違和感を抱くようになると、周囲で異変が生じ……。
<感想>繰り返し届く、“贈り物”が恐ろしいほどにエスカレートし、幸福な夫婦に悪夢をもたらしていくサイコ・スリラーもの。衝撃のラストで明らかになる“恐怖の贈り物”の真実とは?・・・「華麗なるギャツビー」などの俳優ジョエル・エドガートンが、初監督・脚本に挑み、夫婦に執拗にプレゼントを贈る男を自ら演じているのも最高。
夫婦役には、「宇宙人ポール」のジェイソン・ベイトマンと「アイアンマン3」のレベッカ・ホールが、恐怖に引きずった顔のロビンを演じる。そして「パラノーマル・アクティビティ」シリーズの仕掛け人、ジェイソン・ブラム製作を務めている。
カリフォルニア郊外に引っ越してきた若い夫婦が購入したのは、緑豊かな景色が一望できる豪華な邸宅。ガラス張りのデザインが特徴的で、そとから内部が丸見えの構造がサスペンス演出に生かされている。ふとした衝撃で壊れるガラスそのものが、突然の人生の崩壊を暗示しているかのように取れた。
新人離れした演出力をみせる「ブラック・スキャンダル」の実力派俳優のジョエル・エドガートン監督。オリジナルの脚本も自ら執筆して、ワインや地元業者の連絡リストといった当初のささやかな“贈り物”が、じわじわとイヤな方向へとエスカレートしていく展開が心理的な恐怖感を感じるのだ。
25年ぶりに再会した夫とその旧友の間に隠された“因縁”を巡る物語が、何も知らない妻の視点で描かれていく。ストーカー事件に発展しそうな旧友からの“贈り物”攻撃が、不穏なスリルをみなぎらせながら、衝撃的な真相へと急展開していくドラマに釘づけになってしまう。
血まみれの残虐シーンは一切ないのに、背筋が凍りつきエドガートンの繊細にして巧妙なストーリーテリングの手腕に驚かされてしまった。
たいして仲良かったわけでもないのに、夫の同級生がたびたび新居に訪ねて来ては“贈り物”を置いていく。良い人そうなんだけど何か不気味だよね。という主人公夫婦の不安が、どんどんエラいことになってしまうのがこの作品の狙いです。音響効果が凄いのと、豪邸が広いので一人で住むには怖いでしょう。でも、そんなに怖くありませんからね。
“贈り物”として、池に立派な錦鯉を放っていくのと、ゴード邸に招かれて行くと、そこが自分のところよりも豪邸であって、私生活のトラブルを告白するゴード。サイモンがこれを機に「俺たちに構わず自分の問題に取り組め」と一方的に言い、彼とは距離を置くことにする。招かれたゴードの邸宅って、もしかして強盗で入って自分の家にしたのでは、と思ったほど立派で子供部屋まであったし。地下室にこの家の持ち主が殺されているのでは、なんて思ってしまったよ。
だが、この絶縁から間もなく、夫婦の周囲で不穏な出来ごとが連発する。池の鯉が死に、愛犬も行方不明になった。そこへ、ゴードから謝罪の手紙が届く。「過去のことは水に流そうと思っていた」という謎めいた言葉が綴られていた。
サイモンとゴードの過去に何があったのか?・・・。クライマックスに届けられる“最後の贈り物”に向けての伏線も見事で、ラストシーンまで全く目が離せない。
口を閉ざす夫への疑念から、妻のロビンは自ら謎を探り始める。そして、衝撃的な真実が暴かれた時、行方不明だった愛犬も戻り、ロビンも妊娠をして夫の会社での昇格のパーティで、夫に貶められた同僚が乱入して、リビングの大きなガラスが割れる。
その衝撃で妻が産気づき、病院へと、無事男の子を出産するも、妻は「あの家には帰りたくない」と言うのだ。そして、家に“最後の贈り物”乳母車が届くのだ。それには、自分の家で取られた監視カメラの映像と盗聴器、そのDVDを見る夫の顔が青ざめて行く。生まれた子供は、あいつの子供なのかもしれないと。
そして、過去の因縁を背負っているのか真性のサイコ野郎なのかを、悟らせない絶妙なる陰気顔で謎の男を演じるジョエル・エドガートンもいい。彼がサイコスリラーものを選んだのは、ジャンル的な好みではなく、どうしても伝えたいメッセージがあったからだと言う。
彼が描きたかったのは、最悪の狂気が身近に突然現れるかもという漠然とした恐怖の具現化ではないのだ。むしろ逆であり、すべての悪意には必然的な理由があり、それを今の社会は量産していないか?・・・ということでもある。
特に、自分の幸せを手に入れるために、他人の、競争相手を傷つけても、それは敗者の自己責任だと言って、はばからない思想を、彼ははっきりと標的にしている。
周りの人を幸せにできるだけの能力を十分に持ちながら、それを自分の為にしか使わない「勝者」たちが、この社会全体を脅かす恐怖を、知らず知らずのうちに生んでしまっているからなのでしよう。
2016年劇場鑑賞作品・・・271<映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/
あらすじ:転居先で幸せな生活を送っている夫婦サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)の前に、サイモンの高校時代の同級生だというゴード(ジョエル・エドガートン)が現れる。再会を祝いゴードは1本のワインをプレゼントし、その後もたびたび二人を訪ねては贈り物をし続ける。次第にその内容がエスカレートしていき、二人が違和感を抱くようになると、周囲で異変が生じ……。
<感想>繰り返し届く、“贈り物”が恐ろしいほどにエスカレートし、幸福な夫婦に悪夢をもたらしていくサイコ・スリラーもの。衝撃のラストで明らかになる“恐怖の贈り物”の真実とは?・・・「華麗なるギャツビー」などの俳優ジョエル・エドガートンが、初監督・脚本に挑み、夫婦に執拗にプレゼントを贈る男を自ら演じているのも最高。
夫婦役には、「宇宙人ポール」のジェイソン・ベイトマンと「アイアンマン3」のレベッカ・ホールが、恐怖に引きずった顔のロビンを演じる。そして「パラノーマル・アクティビティ」シリーズの仕掛け人、ジェイソン・ブラム製作を務めている。
カリフォルニア郊外に引っ越してきた若い夫婦が購入したのは、緑豊かな景色が一望できる豪華な邸宅。ガラス張りのデザインが特徴的で、そとから内部が丸見えの構造がサスペンス演出に生かされている。ふとした衝撃で壊れるガラスそのものが、突然の人生の崩壊を暗示しているかのように取れた。
新人離れした演出力をみせる「ブラック・スキャンダル」の実力派俳優のジョエル・エドガートン監督。オリジナルの脚本も自ら執筆して、ワインや地元業者の連絡リストといった当初のささやかな“贈り物”が、じわじわとイヤな方向へとエスカレートしていく展開が心理的な恐怖感を感じるのだ。
25年ぶりに再会した夫とその旧友の間に隠された“因縁”を巡る物語が、何も知らない妻の視点で描かれていく。ストーカー事件に発展しそうな旧友からの“贈り物”攻撃が、不穏なスリルをみなぎらせながら、衝撃的な真相へと急展開していくドラマに釘づけになってしまう。
血まみれの残虐シーンは一切ないのに、背筋が凍りつきエドガートンの繊細にして巧妙なストーリーテリングの手腕に驚かされてしまった。
たいして仲良かったわけでもないのに、夫の同級生がたびたび新居に訪ねて来ては“贈り物”を置いていく。良い人そうなんだけど何か不気味だよね。という主人公夫婦の不安が、どんどんエラいことになってしまうのがこの作品の狙いです。音響効果が凄いのと、豪邸が広いので一人で住むには怖いでしょう。でも、そんなに怖くありませんからね。
“贈り物”として、池に立派な錦鯉を放っていくのと、ゴード邸に招かれて行くと、そこが自分のところよりも豪邸であって、私生活のトラブルを告白するゴード。サイモンがこれを機に「俺たちに構わず自分の問題に取り組め」と一方的に言い、彼とは距離を置くことにする。招かれたゴードの邸宅って、もしかして強盗で入って自分の家にしたのでは、と思ったほど立派で子供部屋まであったし。地下室にこの家の持ち主が殺されているのでは、なんて思ってしまったよ。
だが、この絶縁から間もなく、夫婦の周囲で不穏な出来ごとが連発する。池の鯉が死に、愛犬も行方不明になった。そこへ、ゴードから謝罪の手紙が届く。「過去のことは水に流そうと思っていた」という謎めいた言葉が綴られていた。
サイモンとゴードの過去に何があったのか?・・・。クライマックスに届けられる“最後の贈り物”に向けての伏線も見事で、ラストシーンまで全く目が離せない。
口を閉ざす夫への疑念から、妻のロビンは自ら謎を探り始める。そして、衝撃的な真実が暴かれた時、行方不明だった愛犬も戻り、ロビンも妊娠をして夫の会社での昇格のパーティで、夫に貶められた同僚が乱入して、リビングの大きなガラスが割れる。
その衝撃で妻が産気づき、病院へと、無事男の子を出産するも、妻は「あの家には帰りたくない」と言うのだ。そして、家に“最後の贈り物”乳母車が届くのだ。それには、自分の家で取られた監視カメラの映像と盗聴器、そのDVDを見る夫の顔が青ざめて行く。生まれた子供は、あいつの子供なのかもしれないと。
そして、過去の因縁を背負っているのか真性のサイコ野郎なのかを、悟らせない絶妙なる陰気顔で謎の男を演じるジョエル・エドガートンもいい。彼がサイコスリラーものを選んだのは、ジャンル的な好みではなく、どうしても伝えたいメッセージがあったからだと言う。
彼が描きたかったのは、最悪の狂気が身近に突然現れるかもという漠然とした恐怖の具現化ではないのだ。むしろ逆であり、すべての悪意には必然的な理由があり、それを今の社会は量産していないか?・・・ということでもある。
特に、自分の幸せを手に入れるために、他人の、競争相手を傷つけても、それは敗者の自己責任だと言って、はばからない思想を、彼ははっきりと標的にしている。
周りの人を幸せにできるだけの能力を十分に持ちながら、それを自分の為にしか使わない「勝者」たちが、この社会全体を脅かす恐怖を、知らず知らずのうちに生んでしまっているからなのでしよう。
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