ナチス幹部ラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画“エンスラポイド作戦”を描いたローラン・ビネのベストセラー『HHhH プラハ、1942年』を映画化した戦争サスペンス。ヒトラー、ヒムラーに次ぐ実力者としてナチス党内からも恐れられた男ハイドリヒ台頭の道のりと、英国政府とチェコスロバキア亡命政府によって立案・実行された暗殺計画の行方をスリリングに描き出す。出演はジェイソン・クラーク、ロザムンド・パイク、ジャック・オコンネル、ジャック・レイナー、ミア・ワシコウスカ。監督は「マルセイユ・コネクション」のセドリック・ヒメネス。
あらすじ:ヒトラー率いるナチス党が躍進する中、海軍を不名誉除隊させられたラインハルト・ハイドリヒ。婚約者でナチ党信奉者のリナに励まされ、ナチス党親衛隊(SS)指導者ハインリヒ・ヒムラーに自分を売り込み、ナチ党に入党するや出世街道を突き進む。そしていつしかSSでヒムラーに次ぐ実力者となっていく。やがてハイドリヒがチェコの統治に乗り出すと、危機感を募らせた英国政府とチェコスロバキア亡命政府は、ハイドリヒ暗殺計画、コードネーム“エンスラポイド(類人猿)作戦”を立案、ヤン・クビシュ、ヨゼフ・ガブチークらチェコスロバキア亡命軍の若者を選抜し、チェコ領内へと送り込むのだったが…。
<感想>なぜヒトラーでもヒムラーでもなく、彼だったのか?史上唯一成功した、ナチス高官の暗殺計画。誰も知らない真実の物語。2月に鑑賞した作品です。
邦題や宣伝ヴィジュアルからは想像もつかないが、ナチスのナンバー3だったハイドリヒを描く伝記映画ではありません。彼の暗殺を計画して、チェコ亡命政府が送り込んだ工作員メンバーの暗躍を描いており、後半ではナチスに彼らがじりじりと追い詰められる攻防である。
主人公の金髪の野獣と言われ、恐れられていたハイドリヒの冷酷非情さは、みるもおぞましい。ヒトラーが何度も暗殺未遂にあった史実は、さまざまなエピソードが映画化されているのでよく知られていると思いますが、ナチス政権の高官暗殺計画で成功した唯一の例が、このラインハルト・ハイドリヒです。
その上美形のロザムンド・パイクが、ハイドリヒの妻となり筋金入りのナチス信奉者を演じると、役柄と称してユダヤ人を絶滅することに地の利をあげた人物を描いたこの映画の衝撃は、強烈でありました。
あれだけ強烈なキャラクターを演じた彼女が、以降、そのイメージにとらわれているかというと、そうとも言えない。そんなロザムンドの得体の知れなさが、熱心なナチ信者、かつ貴族である本作の役どころでは、遺憾なく発揮されており、ハイドリヒを洗脳した張本人としての不気味な存在感はある意味ハイドリヒよりも大きい。
彼がナチスの高官になる前のスキャンダルや、彼にナチスのイデオロギーを吹き込んだ妻との関係、淡々とユダヤ人大量虐殺について会議を行っている様子などは、平然と行われていて全体的に不気味さが漂う作品であり、そういう点でもハイドリヒの持っていた空気が投影されているように感じられます。
ただし、それは前半までで、後半では彼を暗殺するための、チェコ人青年舞台によるエンスラポイド作戦に話が変わるのだった。結果、映画は接ぎ木のような有様になる。
後半でのハイドリヒ暗殺のシーンでは、チェコ青年たちが前もって計画していたように進んでいき、この後半だけを切り取った作品が、キリアン・マーフィらが出演した2016年のショーン・エリス監督『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』(チェコ、英、仏)であります。
チェコ青年たちの教会での地下室籠城シーンは、この作品ではあまり詳しくは描いていませんが、地下室に隠れていることが知れ渡り、ナチスの軍隊が奇襲攻撃をするシーンは残酷であり、水責めにするシーンとかも同じでしたね。
その部分でのアクション大作の風格を持つキレのいいカット割りが魅力的でもあり、リアリズムもしっかりと描かれていた。それでも、30代でナチス党幹部に昇りつめたラインハルト・ハイドリヒとは何者だったのか。単に軽薄で冷酷な出世欲の塊だったのか。それ以上はこの作品からは何も伝わってこなかったと思います。
監督はスピルバーグあたりの演出を意識しているのかとも考えたのだが。とはいえ、現代の映画なのに、ナチスの軍人がドイツ訛りの英語で話すのはどうかと思った。前半、後半はそれぞれが力強いドラマになているので、独立した別々の作品として観たかったですね。
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