(本作は「三条の方覚書」「十六の母(諏訪御寮人異聞)」の関連作でもあります)弘治元年十一月(1555年12月)、甲斐の国はすでに冬の装いとなり、すでに借り入れの終わった田畑には朝霜が降り、富士
*信玄*弘治から永禄にわたる年は飢饉が酷かった。前年の大水害は、治水工事が進んだ甲斐で...
*序* 「あの毛利元就殿も亡くなられました」病床の夫人は侍女に支えられて起き上がり、信玄に向かう。つい先月、中国地方の大大名、毛利元就が亡くなったことは信玄も知っていた。