まったくの初対面の人に趣味を聞かれると、空想地図と言うとそもそも空想地図って何ってところから話さないといけないし、しかしそういったアイスブレイク的な場での尺に話すには長過ぎるトピックだしで、まあ知らない町歩くのは好きだからなと脳内で一瞬逡巡した結果だいたい「旅行」と答えています。Ranoです。
大阪に行っていました。
架空地図・架空言語学会というイベントがあり、先日の記事で言及した空想地図学会によく似ているものですが、とにかく趣味のそういうイベントが開催されており、それに参加するための旅行と相成っていた訳です。
土曜日にも関わらず開始は朝の9時という強気な時刻でした。5時前に起床して始発の新幹線に乗り、6時うつらうつらしながら景色が流れていきました。いつも2人がけの席に座るので、西へ向かう際は右側に窓があるのに慣れています。
2時間半は慣れてないと短く、でも慣れてるとひたすら長く感じる尺でした。新大阪でようやっと降りてからは御堂筋線に乗り換えますが、朝8時台に通勤電車を待っている、一見日常っぽいシチュエーションだけどここは東京じゃなくて大阪で、旅行の非日常感と普段の日常感の境界が曖昧になったような心地よい違和感がありました。
和室の2室ぶち抜きで開かれた「学会」は夕方5時までぶっ通しで行われました。テーマも濃ければ主催者も濃いイベントだったので、ある意味これが一番非日常でした。
懇親会を終えるともう夜の8時でした。庄内というところに宿を取っていたのですが、会場のある江坂から真西にあるのに電車で行くと遠回りっぽく、歩いていけなくもない距離だし、知らない街だしで宿まで歩くことにしました。
30%のうまさを主張する埼玉県の餃子店として著名な「ぎょうざの満洲」の、関西地方における拠点を偶然発見してちょっと満足しました。道のりはわかりやすく、暗すぎず明るすぎずで気持ちよく歩けました。春は気候のコンディションが思いっきり散歩向きでいい季節です。
庄内という街は駅のすぐ近くはもちろん駅前らしくお店が集まっているんですが、10分ぐらい歩いた特に駅から近くない場所にもスナックや居酒屋が集積する謎の通りがあります。
こういう界隈は経緯をちゃんと深掘れば納得する場合がほとんどなんですが、あいにく掘れておらずよくわかってません。歩道がなく、路側帯もなく、建物ギリギリまで「道路」な風景はわたしの住む川崎市にも結構ある光景で、特に武蔵新城とかこんな景色だなと思いながら歩いていました。地図作者は街を総花的に見ながら歩くので、よくある視点だと思います。
宿はゲストハウスでした。庄内の駅から10分以上歩くし、地図ぱっと見ただけだと思いっきり住宅街の中にあるの不思議だ……と思ってたのですが、行ってみたら上の写真みたく地図じゃ気づかないステルス商店街の端っこみたいな場所にあり、行ってみないとわからないなと思ったものです。
始発から動いてイベントでどっと疲れていたので、床や寝具や壁紙から圧倒的実家感を感じる部屋の佇まいへの安堵もあり、夜の10時には電気を消して寝ていました。まだ時間があるからと電子機器で情報を手当たりしだいに食べるんじゃなく、このぐらい落ちるように寝入り続けられれば健康になるのかなと思いました。吸い込まれるような入眠でした。
翌朝はチェックアウトの30分前に起き、カラスの行水をこなし、投宿即就寝で拡げすぎていなかったので5分で荷物も纏まりスムースに宿から飛び出しました。
当たり前ですが、日が出ているときに歩くと、夜の間には見えなかったものが次々現れ、昨日歩いたのにまったく新しい場所を歩いてるようにさえ思えます。
大阪周辺の街にある商店街はやたら屋根がついています。東京の5倍は付いてる気がします。梅田やなんばの駅から出る電車に乗っていても、屋根付き商店街のない駅にはしばらく止まることがないと思います。
商店街の通りにアーケード屋根があると、商店街の中に並列にあったいくつかの通りが「屋根がある通り」と「屋根のない通り」の2種類に分化されます。また自ずとその地区で中心的な通りがわかりやすく浮き出てくるようです。個人的に、通りのどこにも屋根がない街と比べると、賑わいの移ろいが激しくなく、激しかったとしても屋根のある通りが中心という構図はやはり簡単に崩れないし、街の軸が地図上でもわかりやすく見えるようになるアイテムだと思います。
屋根の隙間からデカい看板が見えました。「キリンド」だそうです。発音はキリン堂かもしれませんが、とにかく表記は「キリンド」だそうです。衣料品が主体の大きな昭和の商業施設。
ひとしきり歩き回ったので満足して駅に向かいました。
商店街は庶民的な庄内ですが、大阪ではハイソなイメージもある阪急電車の駅です。駅のアナウンスでかならず「みなさま」って呼びかけ、ホームをn番線じゃなくてn号線と称するいい電車です。
次はどこに行くか特に決めずに乗り、結局となりの三国という駅で降りました。
駅前はすごくこざっぱりしています。
この写真を見て思い出したのですが、庄内にせよ三国にせよ飛行機が上空スレスレをすごくひっきりなしに飛んでいて、伊丹空港が近いからなんですが、しかしこういうのって地図見たりストリートビュー見てるだけだと気づかない情報だなというか、いくら予習しても実地に行って五感を使うとあまり気を回してなかった情報や新しい情報がいろいろな方面から次々と飛び込んでくる、そんな偶然が楽しかったりします。
で、壁みたいな駅で裏にはデカマンションがあったりする一見こざっぱりした三国ですが、
アーケード商店街はちゃんとあります。そこにいてはります。
庄内で済ませようと思ってたけど店が決められず、うーんと思ってる間にいや別の町で決着つけるかと思って先延ばしにしていた朝食を、この商店街でいただくことにしました。モーニングが美味しそうな広めの喫茶店を発見しました。
名古屋が有名ですが、大阪もモーニング文化ありますよね。
600円也。お支払いして店を出たら呼び止められてビックリ、席にiPhoneを忘れていました。25歳だとまだそこの"お兄ちゃん"!って呼ばれるんですね。何歳までなんですかね。
アーケード商店街って上も横も塞がれてて「閉じた」空間なんですが、そこに屋根の無い道が刺さると外の世界の景色が広がる窓みたいで面白いと思ってます。
大都市圏って当たり前なんですけど街が沢山あって、東京圏なら住んでるので気が向いたら出かけて回れば良いんですが、京阪神はそうはいかず、そこらじゅうのあらゆる街が気になる体質だと一体全体マジで時間が足りないと狂いそうになることこの上ないです。
地図で街を作るようになってから、その見本たる現実世界の都市にますます興味が湧くようになりました。街をめぐるだけの人生もう一回分ほしい25歳です。
本当は旅行の記録を家に帰るまで全部綴ろうと思ったのですが(編を分けると続きを書かないことに定評もある)、ことのほか記事も執筆時間も長引きそうなのでここらへんでわけます。
お知らせ。
4月29・30の両日に幕張メッセで開催される「マニアフェスタVol.7」に
『空想地図マニア』として4/30(日)の1日出展します。
これまでは↓のような「多奈崎市」関連作品をたくさん出していましたが、
今回はそれに限らないものを作る予定です。意気込んでます。
時間ないです。がんばります。
連休最初の思い出にぜひ。
らのでした