「コンクリートから人へ」で進む
日本列島のインフラ荒廃化
[HRPニュースファイル270]転載
2012年5月11日
茨城県鉾田市と行方市を結ぶ鹿行(ろっこう)大橋の
中央約60メートルが落ち、霞ケ浦に沈んでいる――
5月10日の報道ステーションの特集「全国でインフラ老朽危機」
で、無残な鹿行大橋の姿が映し出されました。
鹿行大橋(長さ404メートル)が落ちたのは、東日本大震災が
起こった昨年3月11日。
走行中の車1台が転落し、運転していた男性が死亡しました
。震度は6強でした。
鹿行大橋は建設から43年。橋脚は揺れで変形しやすく
耐震性が低い構造でしたが、橋を管理する県の「点検」は
職員が車の中から見るだけ。震災1週間前にも目視はして
いましたが、結果は「異常なし」だったということです。
(4/30 毎日「進む橋の老朽化 膨らむ財政不安」
鹿行大橋の崩落は地震がきっかけであったとは言え、
根本的な原因は橋梁の老朽化と見られています。
昨日の[HRPニュースファイル269](http://goo.gl/UJQUP)
でも指摘されていますが、日本の橋梁は、寿命と言われている
50年を越えるものが現在は8%ですが、10年後には26%、
20年後には53%になります。
(5/1 朝日「橋や道路、迫る寿命 膨らむインフラ補修費」
⇒ http://goo.gl/q3sq5)
老朽化等により通行規制を受けた橋は2008年から3年間で680から
1129に増えています。京大大学院の藤井聡教授は
「いつどこで橋が落ちる事故が起きても不思議ではない」と指摘。
実際、2007年には香川県、昨年は高知県で橋が落ちています。
(同上)
老朽化に起因する落橋事故は、日本より早くインフラ整備が
なされたアメリカでは既に起き続けています。
最初の落橋事故が起こったのは1967年。ウェストバージニア州と
オハイオ州を結ぶシルバー橋(橋齢40年弱)が老朽化により落橋し、
通行者46名が死亡する大惨事となりました。
(根本祐二著『朽ちるインフラ』日経新聞社⇒ http://goo.gl/ywBei)
当時のジョンソン大統領(民主党)は貧困対策として、バラマキ
政策に次々と予算を充てる一方、橋や道路への投資は後回しにし、
事態の更なる悪化を招きました。
「コンクリートから人へ」を掲げている日本の民主党も
同様の過ちを犯しており、結果的に「人の命」を危険に
晒しています。
その後も、アメリカでは築40年を経過した橋の崩落事故が
続いています。直近では2007年、ミネソタ州の橋が
ラッシュアワー時に、わずか5秒間というスピードで完全崩落。
死者・行方不明者13名、重軽傷者80名にのぼる大惨事と
なりました。(同上)
この橋が建設されたのは1967年ですが、日本では1964年の
東京オリンピック前後に建設ラッシュとなり、多くの橋や
道路等のインフラが建設されており、間もなく大量の橋や
高速等のインフラが耐用年数を迎えようとしています。
そのため、今後、耐用年数を迎えたインフラの維持管理・更新費
は2030年に現在の約2倍、2040年に現在の約5倍に達します。
公共投資予算が今と同じなら、維持管理・更新で予算を
使い切り、新設はできなくなる計算です。
(4/15 日経「グラフ:このままでは更新費用が急増へ」
⇒ http://goo.gl/wGE8G)
現在、日本経済の成長と共に建設された膨大なインフラの
耐用年数が迫る一方、政府や自治体は財政難で維持管理や更新
が困難な状況にあります。しかし、このまま放置すれば、橋の
崩壊や道路の荒廃など、既に海外で起きていることが日本でも
起こります。
東洋大教の根本祐二教授は「ゆっくりと震災が起きて
いるようなもの。問題が起きたときに対応しても手遅れで、
直ちに動き出すべきだ」と指摘しています。
(4/15 日経「インフラ高齢化にどう対応」
⇒ http://goo.gl/lEZvq)
経費削減のためには、[HRPニュースファイル187]
「進むインフラ老朽化~公民連携(PPP)で財政負担を減らせ!」
( http://goo.gl/7A8Wh)でも指摘されている通り、従来、
「官」の仕事とされていた道路、橋梁等のインフラの維持管理を
民間に委託するような大胆な発想転換が必要です。
例えば、北海道の清里町と大空町は、市町村が管理する道路や
河川の維持業務を民間企業に委託。舗装の穴埋め補修や除雪、
作工物の修理などの業務を民間に一括委託し、維持補修費の
約25%削減に成功しています。⇒ http://goo.gl/ua0Qp
高度経済成長期に人類史上最速で進んで来た日本のインフラの
多くが間もなく築後約50年を迎えます。人類史上最速のスピードで
日本に「インフラ老朽化」問題が襲って来ることは避けられない
現実です。
世界最高速の少子高齢化やインフラ老朽化を含め、どの国も
経験したことがない課題に直面している「課題先進国・日本」
は、今こそ、大胆な発想の転換と不屈のチャレンジ精神、
高度な技術革新によって次々と課題を克服し、世界の危機を
救うリーダー国家となるべきです。
(文責・黒川白雲)
執筆者:黒川 白雲 (42)
政務調査会長
公式サイト: http://kurokawa-hakuun.hr-party.jp/news/
禍々しい政治屋の群れ。