北朝鮮軍の特殊戦部隊がパラグライダーを活用して米韓軍の拠点を奇襲攻撃する練習を行っているという。

 北朝鮮は韓国内にローテクノロジーの無人偵察機を飛ばして米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の発射台などの撮影にも成功している。パラグライダーによる奇襲攻撃で米韓軍が機能不全に陥ることは考えにくいが、北朝鮮のローテクを侮ることはできなそうだ。

米韓司令部の制圧訓練

 韓国の聯合ニュースによると、北朝鮮軍の特殊戦部隊が韓国内にある米韓連合司令部を奇襲して制圧する訓練を行ったと、韓国軍側が分析しているという。

 その奇襲に使うのがパラグライダーで、レーダーに映りにくいだけでなく、戦闘機のようなジェットエンジン音もないことから、相手に察知されずに接近することができる。

 また、装備は数キロ程度と自由に持ち運びも可能だ。北朝鮮軍は、特別訓練場に米韓連合司令部の模型を設置して、実戦さながらの奇襲攻撃訓練を実施したとみられている。

 パラグライダーによる奇襲攻撃は、最新鋭の戦闘機やヘリに比べれば移動スピードや攻撃力は著しく低下するが、ローテクの活用によってステルス性は高いことになる。

ソニー製カメラで偵察

 さらに、国連安全保障理事会の決議に基づいて各国が行う制裁によって経済基盤が脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮にとって、安価なパラグライダーは重要な軍事作戦を可能にする兵器の1つとなる。

 今年6月には、市販で買える模型飛行機のような無人機にソニーのカメラを搭載し、韓国内のTHAAD発射台を撮影していたことが明らかになった。

 無人機は燃料不足などのトラブルで韓国内に墜落したが、北朝鮮側から無人機を飛ばして韓国軍のレーダー網をかいくぐってTHAADの発射台付近まで飛行させたことは脅威にもなる。

 同類の無人機で情報収集を図るだけでなく、化学兵器を運搬してまき散らすことも技術的には可能だ。

守りは脆弱

 そう考えれば、戦闘機やヘリに比べてレーダーが捕捉しにくいパラグライダーを使って米韓軍の拠点を急襲できれば、戦局を一変させるような攻撃とはいかないまでも、重要施設や人物に被害を与えることは可能だ。

 ただ、圧力を強める米国が爆撃機を北朝鮮周辺に展開させているが、北朝鮮軍側は戦闘機を緊急発進(スクランブル)させていない。

 韓国内では、北朝鮮がレーダーの性能や電力の消耗などを考慮して対空レーダーを常時、稼働させていないとの分析もある。パラグライダーによる奇襲攻撃という斬新な戦略を錬る一方で、守りの強化はなかなか進んでいないようだ。