中国本土で「嫌香港」拡大 「自分たちはデモをしたらすぐに捕まるのに」香港に対するジェラシーも
大前研一 大前研一のニュース時評 https://www.zakzak.co.jp/soc/news/191007/for1910070001-n1.html
2019.10.7
日経新聞に「嫌香港が中国本土で拡大」と題する記事があった。「逃亡犯条例」の改正案をきっかけとする香港の過激な抗議活動が続く中、中国本土で香港人に対する感情が悪化しているというものだ。「同じ中国人なのに香港人は大陸の人間を下に見ている」と感じる人が増えているという。
中国本土の「嫌香港」の感情は、「自分たちはデモをしたらすぐに捕まるのに」という香港に対するジェラシーもある。それが「香港の奴らはなぜあんなに偉そうなことを言っているのか」「生意気だ」「そんなに中国が嫌なら、出ていけばいいじゃないか」という声になった。
一方、香港の若者たちは「自分たちは香港人で、中国人ではない」と思っている人が多く、「中国は香港に高度な自治を認めると定めた『1国2制度』の約束をねじ曲げ、さまざまなことを形骸化させて『1国1制度』に持っていこうとしている。デモをテロ行為と呼んで警察力を持って鎮圧すべし、と香港政府に圧力をかけている。とんでもない話だ」という主張を強めている。
「1国2制度」は1997年に香港の主権が英国から中国に返還された際に導入されたもの。当時の香港は生活水準も高く、中国から見れば仰ぎ見るくらいうらやましい存在だった。トウ小平は改革開放の特別区を隣の深センに設置したのも「おこぼれ」がほしかったからだ。しかしいまや深センは人口1400万人でGDPも香港をしのぐようになっている。極端に言えば香港の歴史的使命は終わった、と北京が考えていても不思議ではない。97年当時の中英共同宣言では香港は特別行政区と定められ、資本主義や言論や集会の自由を含めた民主社会制度の維持が認められた。将来、行政長官選挙を普通選挙で行うという目標も明記されていた。返還から50年、つまり2047年まで維持される措置のはずだった。
しかし、中国政府はこれを守らず、行政長官選挙制度導入を17年まで遅らせたうえ、民主派の立候補を事実上認めない条件を突きつけた。香港の若者たちが行政長官選挙制度の民主化を要求した14年の大規模デモ「雨傘運動」が香港警察に強制撤去されて以降、議会選挙にも民主運動をしていた人は立候補できなくなった。
さらに、中国政府を批判する人は、中国旅行をしている間に身柄を拘束された。民主社会ではありえない弾圧が相次ぎ起きた。
中国は台湾に対しても「1国2制度を重視する」と言っている。しかし、台湾は「もし中国に近づくと、いずれ香港と同じ状況になる」と懐疑的だ。
だいたい、中国の主張する「1国」は「やがて台湾を統一して1つの中国にする」ということ。一方、台湾の「1国」はかつて蒋介石が言っていたように、「中国本土を中国共産党から取り戻して1つの中国にすること」だ。想定している「1国」がまったく違う。
いずれにしろ、中国の観光客は香港にも台湾にも行かなくなった。この夏、中国の台湾向け観光窓口機関が、中国大陸から台湾に向かう個人旅行の許可業務を一時停止した。
これにより、漁夫の利を得ているのが日本やタイ、シンガポールだ。中国の国慶節(建国記念日)に伴う大型連休(10月1~7日)で、中国本土からの渡航先で日本が1位となった。2年連続でトップ。2位はシンガポールだった。ビザ申請件数は昨年比で2割増加している。日中関係が正常化すれば今後も大幅に増えるだろう。
※ビジネス・ブレークスルー(BBTch)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。
。
【中国のSNSで拡散されている香港警察応援の動画】
— 黒色中国 (@bci_) October 5, 2019
中国の内側では、警察が英雄で、抗議者はテロリストにしか見えないように「細工」されているわけですが、この動画を見ると、今の中国人の脳内をのぞきこむようでわかりやすいです。#antiELAB#香港反送中 pic.twitter.com/TXYApNp9WS