韓国の腰砕けを警戒するアメリカが北朝鮮に与えた「最後の時間」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54475
平昌五輪の裏で進むハードな国際政治
事実上の「南北連携」が進んでいる
そんな北の思惑を文大統領は百も承知のうえで、会談提案に「環境を整えて実現しよう」と応じた。前のめり姿勢はあきらかだ。文政権は制止する日米を振り切って、いまや「事実上、北と連携しつつある」と言っていいのではないか。
それは、在韓邦人の撤退問題に韓国が応じない点にも示されている。同時期に開かれた日韓首脳会談に関連して「邦人の退避や安全確保に向けた連携で一致」と一部で報じられたが、全容を知る政府高官によれば「退避問題で韓国側は極めて慎重だった」という。
つまり、韓国はいざとなれば、観光客を含めて約6万人といわれる在韓邦人を盾にとってでも、米国の北朝鮮攻撃を阻止する構えなのだ。文政権はそれくらい「米朝戦争を絶対に回避する」強い決意を固めている。
以上のような背景の下で、文氏が訪韓したペンス副大統領にもちかけたのが対話路線だった。ペンス氏は米国への帰途、専用機内でワシントン・ポスト紙のインタビューに応じ、中身を明かしている。核心部分は以下のとおりだ。
「ポイントはここだ。同盟国が非核化に向けた意味のあるステップと信じられるような何かを北朝鮮が実際に示さなければ、圧力は緩まない」「したがって最大限の圧力は続き、強化する。だが、もし相手が話し合いたいという望むなら、我々は話し合う」(https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/pence-the-united-states-is-ready-to-talk-with-north-korea/2018/02/11/b5070ed6-0f33-11e8-9065-e55346f6de81_story.html?utm_term=.ecae6deca7b7)
この対処方針を、副大統領は「最大限の圧力と対話の同時進行(maximum pressure and engagement at the same time)」と説明している。従来は「非核化とミサイル開発断念に向けた意味のある譲歩を示さない限り、対話に応じない」という姿勢だった。だから一見、軌道修正のようにも見える。
だが、そもそも北朝鮮が核とミサイル開発を断念する可能性はあるのか。残念ながら、北朝鮮の側に立って合理的に考えれば、完成間近のいまとなってはほとんどない、と言わざるをえない。
五輪を前に開かれた南北閣僚級会談でも、北朝鮮側は「非核化の話をするなら、会談は水の泡になる」といきなり高飛車に啖呵を切ってみせた。その後、文大統領は数度にわたる金与正氏ら北代表団との協議で、非核化については話を持ち出すことすらできていない。
安倍総理訪韓の本当の意味
にもかかわらず、ペンス氏が対話に前向きな姿勢を示したのはなぜか。同紙記事によれば「文大統領はペンス氏に『北朝鮮が非核化に向けた具体的なステップを取らない限り、北朝鮮が経済的または外交上の利益を得ることはない』と保証した」からのようだ。
つまり、対話に応じただけで報償を与えることはない、という話である。ここは従来と変わらない。原則論で言えば、圧力一辺倒といっても、圧力のための圧力ではない。北に方針を変えさせるための圧力だ。もし変わる兆しがあるなら、対話するのは当然である。
ペンス氏の発言は「北が方針転換する兆しがあるのかどうか、米国はそれを見極めよう」という趣旨だったのだろう。
米国には世論に配慮しなければならない事情もある。
圧力一辺倒のまま軍事攻撃という展開になれば「なぜ最後まで対話を模索しなかったのか」という批判が出るのは避けられない。それでなくても、トランプ政権の支持率は高くない。そうであれば、なおさら「外交努力は尽くした」という姿勢が不可欠になる。
だからこそ、北朝鮮に対しては「非核化を決断すれば、対話の門戸は開かれている」姿勢を示しておく必要もあった。
この点は日本の安倍政権も同様である。日本は在韓邦人だけでなく、北朝鮮に拉致されている日本人もいる。彼らの安全確保について、米韓と十分な連携、外交努力が必要だ。だからこそ今回、訪韓に強い批判があるのを承知のうえで、訪韓したのだ。
結局、鍵を握っているのは北朝鮮だ。金正恩氏が最後まで核とミサイル開発をあきらめないなら、いくら米国が対話姿勢をにじませたところで、平和的な解決には結びつかない。文政権は「対話を始めれば非核化の話になる」と思っているかもしれないが、甘い。
北朝鮮は非核化をテーマにした対話を拒否するに違いない。米国は対話を始めたところで、非核化の果実が見通せなければ圧力を緩めないどころか、むしろ強化するだろう。
実際、安倍首相とトランプ大統領は2月14日夜(日本時間)、70分間にわたって電話会談し「北朝鮮が非核化を前提とした対話を求めてくるまで、最大限の圧力をかけていく」点を確認した。さらに、韓国の腰砕け姿勢に警戒心も共有した。
ペンス発言は「北朝鮮に最後の時間を与えた」とみるべきだ。
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