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インタビュー - トランプvs.習近平 2019年を「南シナ海」で読み解く
2018.12.24
来年の世界情勢は、やはり米中の対立が中心だ。
両国は貿易の関税問題では妥協できても、南シナ海問題は譲れない一線となっている。
その問題から来年の流れを見据えたい。
(編集部 山本慧、長華子)
トランプvs.習近平 2019年を「南シナ海」で読み解く
インタビュー - トランプvs.習近平 2019年を「南シナ海」で読み解く
Interview
アメリカの「核の傘」がなくなる
南シナ海危機とインド太平洋戦略について、元自衛隊幹部に話を聞いた。
元航空自衛隊空将
織田 邦男
(おりた・くにお)
1974年、防衛大学校卒。第6航空団司令官、航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)などを歴任。現在、東洋学園大学客員教授、国家戦略研究所所長。
中国は、2020年から25年までに台湾を統一し、25年から40年までに南シナ海やインド周辺の支配、40年から45年までに尖閣諸島と沖縄を奪取する国家計画を立てています。
2013年にオバマ前大統領が「アメリカは世界の警察官ではない」と発言したことが、中国を増長させました。
その半年後に中国は、南シナ海の南沙諸島をあっという間に埋め立て、西沙諸島も掌握しています。あとは、フィリピンの近くにあるスカボロー礁を占領すれば、制空権・制海権を完全に確保し、米艦隊や潜水艦、哨戒機を寄せつけない「聖域」が完成します。
かつて米ソ冷戦では、ソ連が北海道の北東にあるオホーツク海を聖域化し、米軍は1ミリも近づけませんでした。中国の海軍も、米艦艇に異常接近などをして、南シナ海からアメリカを追い出そうとしています。
中国にスカボロー礁をとられれば、日米はゲームオーバーとなり、中国に屈服します。
南シナ海の3つの価値
南シナ海の聖域化には3つの戦略的価値があります。
最も重要なのは、中国が南シナ海を支配できれば、原子力潜水艦が太平洋に自由に出られ、米本土を核攻撃できる点です。アメリカは中国に核攻撃されるリスクを恐れ、日本を守る「核の傘」がなくなるでしょう。
現在は、米原潜が南シナ海の海底で中国の原潜を待ち伏せており、いつでも魚雷攻撃を仕掛けられる状態にあります。中国はそれを恐れています。
2つ目は、海上交通路(シーレーン)の確保です。南シナ海では、日本の全貿易船の5割、原油の9割が通過しています。中国がここを抑えれば、「日本のタンカーがオイル漏れしているぞ。チェックするまで運行を中止せよ!」というような難癖をつけ、通れなくさせられます。
3つ目は、南シナ海に眠る石油などの天然資源を手に入れられることです。
中国は沖縄の反米運動を支援
中国は南シナ海だけではなく、沖縄も狙っています。米議会の米中経済安全保障調査委員会のレポートには、「中国は沖縄を舞台とする日米分断工作を推進」と明記されています。
中国は、軍事情報を収集する諜報員と反基地運動を煽る工作員を沖縄に送り込んだり、米軍へのスパイ活動を行ったりしています。例えばレポートには、工作員が米軍関係者の居住ビルを買収し、管理者用の合鍵で米兵の自宅に侵入し、機密情報を奪っているとまで書かれています。沖縄の基地反対・反米運動は、中国が支援しているのです。
インド太平洋戦略で対抗を
世界は今、アメリカを中心とし、自由を標榜する「パックス・アメリカーナ」か、中国を中心とした自由を抑圧する「パックス・シニカ」のどちらを選ぶかという判断の時代に入っています。一帯一路に対抗するインド太平洋戦略は、自由、民主、人権などの価値観を共有する国々が団結しようというものです。
残念ながら、今の日本には南シナ海を守るだけの戦力はありません。少なくとも日本は、自分の国は自分で守れる体制を早急に整えなければなりません。それはアメリカとしても、日本に根拠地を持つ米第7艦隊を守ることを意味します。
中国は今後、一時的に南シナ海に配備したミサイルを撤去し、トランプ政権の追及から免れようとするかもしれません。日米は中国の野望をくじくために、インド太平洋戦略を強力に推進し、一帯一路を機能させないようにすべきです。
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2019年 安倍外交が行き詰まる - トランプvs.習近平 2019年を「南シナ海」で読み解く
日中関係
2019年 安倍外交が行き詰まる
強硬姿勢から「中国寄り」になり、様子がおかしい。その理由とは。
アメリカが中国との競争から対決に入るなか、安倍首相は2018年10月に中国を訪れ、
日中関係を「競争から協調」路線に変え、一帯一路などに協力することに合意した。
経済界も、日立製作所は一帯一路を通るタイの高速鉄道計画に関心を示し、
トヨタも燃料電池車や自動運転車の中国生産に言及するなど、中国重視を打ち出している。
だが、違和感を覚えるかもしれない。安倍政権は中国に強硬的であり、
インド太平洋戦略によって対中包囲網の形成を率先していた。
日本企業に対しても、中国の覇権拡大に手を貸すのはいかがなものか、と。
産経新聞特別記者の田村秀男氏も、「日本は事業の透明化を条件に一帯一路に協力しますが、
その前に中国の不当な金融システムをやめさせるのが筋です」と、中国の自由化を求めないやり方を批判する。
なぜ安倍政権の対中外交は「変節」したのか→https://the-liberty.com/member/login.php?iid=15221