黒川白雲氏、日記転載 http://kurokawa-hakuun.hr-party.jp/news/
7月26日、中国人民解放軍は、南シナ海で南海・北海・東海の3艦隊合同で演習を行いました。最新鋭のミサイル駆逐艦も参加し、三艦隊全ての軍艦が、戦闘機や長距離ミサイル発射装置を伴う大規模な演習でした。
さらに昨日7日の香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙は、中国人民解放軍が広東省韶関(しょうかん)にミサイル基地を建設し、第2砲兵(戦略ミサイル)部隊を配置したと報じています。基地には射程2000km以上の弾道ミサイルが配備され、南シナ海の大半が射程圏に入ります。
中国が南シナ海で急速に軍事力を誇示している背景には、7月23日、ハノイで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)でクリントン国務長官が「南シナ海の航行の自由をアメリカの国益と考える」と主張し、中国の南シナ海における覇権主義を国際的な場で批判したことがあります。
米国が、中国の南シナ海支配を懸念する事の発端は、本年3月、中国高官が米高官に「中国にとって南シナ海は中核的利益(core interest)をなす」と発言したことがトリガーだと考えられます。
中国にとって「中核的利益」とは「防衛のためには、断固、武力行使も辞さない地域」を意味し、これまでチベットや台湾について同用語が使われていましたが、南シナ海で使われたのは初めてのことです。
「シーレーン」を脅かす戦略的地位にある南シナ海が「中国の海」になることは日本にとって大問題です。日本は、原油の8割が南シナ海を経由するシーレーンを通過しており、同海域の「航行の自由」が阻害されれば、日本にとっては経済は勿論、国民生活自体が立ち行かなくなる「死活問題」です。
↓シーレーン(SLOCs) 『防衛白書』より転載
こうした背景もあり、クリントン国務長官の発言に対し、ASEAN加盟国のみならず、日本やEU、オーストラリアも賛同の意を表明しました。
クリントン長官が、南シナ海の領海紛争を「多国間」の枠組みで解決するべきとしたことに対し、中国は猛反発していますが、これは中国が南シナ海の領海紛争を「多国間」でなく「二国間」での交渉に持ち込み、各個撃破する戦略を取っているためです。
ベトナムからインドネシアまで、単独で中国とやりあうのは難しく、各国が力を束ね、アメリカと結束してこそ、中国と対峙することができます。
↓南シナ海で6カ国・地域が領有権を主張する海域
日本の死活的利益である南シナ海の「航行の自由」は、日本にとっても「譲れない一線」であり、アメリカ、ASEAN 諸国と協力して中国の南シナ海支配に対抗していくべきです。
菅首相は、日米両政府間の協議で8月末を期限とした普天間基地移設先の工法決定を先延ばしにする意向を表明していますが、普天間基地問題については、よりマクロ的視点から、日米同盟強化となる選択肢を選ぶべきです。
太平洋や南シナ海へと無限に膨張する中国の軍事力を、抑止力で押し返せるのは、「日米同盟」の強化をおいて他ありません。
↓昨日8月7日、海上自衛隊横須賀基地一般公開で、きりしま(海上自衛隊護衛艦(イージス艦)DDG-174)に搭乗
↓米第七艦隊のフィッツジェラルド (米ミサイル駆逐艦(イージス艦)DDG-62)にも搭乗