AIJの年金消失事件の教訓
2012-02-27
井原義博 氏ブログ転載、
独立系の投資顧問会社であるAIJ投資顧問が、
企業年金から運用委託されていた約2000億円の大半が
消失していた事が明らかになりました。
同社は高利回り(平成14年以降からの累積で247%)を
謳っていたものの実際にはパンフレットで示された利回りは
確保されておらず、顧客にも実際とは異なる運用実績が
報告されていたそうです。
AIJがなぜ資金を失ったのかは現時点では明らかになっていません。
この事件を防げなかった問題点として、同社はケイマン諸島の
租税回避地を利用していたため、日本の監督官庁による
監視が行えなかった、ということが挙げられています。
また投資顧問会社は銀行などとは異なって「事業免許」を
必要としないため、当局による厳しい監査もありませんでした。
AIJに年金の運用を依託していたのは、中小企業が非常に
高い割合を占めています。デフレ経済の中で所得が低減して
いる中で少なからず積み立ててきた年金が失われてしまった事は
大変お気の毒な事です。この事件が起きた原因の解明、
顧客への補償(どれくらい資産が残っているかは不明ですが、
1割程度のようです)、経営陣の責任をいち早く明らかに
することが求められます。
金融庁はこの事件を受けて、国内の投資顧問会社263社の
運用実態の調査に乗り出しました。
では今後同様な悲劇を繰り返さないようにするためには、
どのようにしたら良いのでしょうか?
まず、金融庁など監督官庁による監査を徹底的に行えるよう、
法改正や制度改正を行う、ということが考えられます。
しかし、当局によって新たな「規制」を設ける事には反対です。
自由経済社会においては、株式等の金融商品の価格の上下は
市場において決まります。その価格は人為的には決定できない事
から、想定している価格に比べて、必ず上下のぶれが発生します。
損失を被るケースも「自然」の摂理として出てくるわけですから、
市場の自由な価格決定を阻害するような、当局の規制の強化は
あってはならない事です。
また、AIJと同様の業態を持つ会社が263社も
あるそうですので、それらを逐一監督するには大変多くの
労力(政府のコスト)が必要となります。
そもそも年金の運用は、株式投資と同じで、自己責任が原則です。
すなわち、自らの判断で投資を行い、その結果利益を得ても
損失を被っても、その結果は自らが行った選択の結果によって
現れてくるものです。
利益を得た場合には自分のものとするが、
(政府が監督していたにもかかわらず)損失を被った場合は、
(政府に)損失補填(補償)を求める、というのは、
公平な態度ではありません。
AIJは、他社より高い配当を約束していました。
しかし、ハイリターンはハイリスクである、というのは、
株式投資を行っていない人でも知っている当たり前の事です。
AIJに運用を依託していた人たちは素人ではなく、
企業の年金運用担当者です。
(一応)プロの年金運用担当者であるならば、投資に
あたっては次の原則を徹底すべきなのです。
・ハイリターンはハイリスク。 うまい話には必ず「裏」がある
・分散投資によるリスク管理を行う
AIJが高配当を「粉飾」していた可能性は非常に高いです。
他社が軒並み運用益がマイナスになっていたときも
プラスの運用益を出していたとPRしていますが、その
段階で怪しい、と思わなければなりません。
また、「絶対」に儲かるということはこの世の中には
あり得ないので、投資先を分散してリスク低減を
計らなければなりません。
AIJの事件は、その意味で自由経済社会を維持するための
「コスト」でもある(聖学院大学鈴木真実哉教授)と考えられます。
この事件の教訓は、投資家は賢くなければならない、ということなのです。
転載、させていただいた記事です。
http://ameblo.jp/muggle1009/entry-11177033424.html
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