TPPの外交・安全保障的側面―
―アジア・太平洋地域の海洋秩序の形成
黒川白雲氏のブログ転載
2011年11月17日 現在、日本ではTPP
(環太平洋パートナーシップ)に参加するか否かで
国論が二分されています。
特に「日本の脆弱な農業が壊滅する点」
「農業だけでなく、金融・医療・サービス事業への
外資参入」などが論点となっています。
これらについても今後、言及して参りたいと思いますが、
これまで日本国内で行われてきた議論は、余りにも
日本国内の論議だけに終始しており、より高次な
外交・安全保障に関わる戦略的観点については、
民主党政権を含め、十分な考察がなされて
来たとは言い難いものがあります。
TPPについては、幸福実現党のついき秀学党首が
「【声明】野田首相のTPP交渉参加表明を受けて」
において、「TPPは、単に経済上の問題にとどまらず、
我が国の安全保障にとっても大きな意義を有している」
と指摘しています。
TPPは「自由貿易促進」のための取り決めですが、
これは経済的な側面だけでなく、
「アジア・太平洋地域の海洋秩序」を形成する
狙いがあります。
地球儀あるいは世界地図を広げてTPP参加国を
見ていくと、TPP参加交渉に臨んでいる国家は
海洋に面した国家がほとんどであり、
米国や日本、シンガポールなど海上貿易によって
自国の富を生み出しているのが特徴です。
(↑図は時事ドットコムより)
日本を含む、これらの海洋国家にとって、
海洋秩序の形成とコントロールは死活的な重要性
を持ちます。
これらの国々で自由貿易が活発に行われるためには、
自由な海上交通が保障されていることが前提に
なります。
もちろん、「公海」あるいは「EEZ」における
沿岸国の恣意的な妨害がないことを含みます。
この沿岸国の恣意的な妨害を現在行っているのが
中国です。
中国と海域の境界問題を抱えるベトナム、
フィリピン、日本などは海洋問題に関して
個別に中国と対処していますが、「一対一」の
外交交渉では、大国である中国有利の展開は
覆せません。
今後は、TPP参加を表明している、米国、日本、
ベトナム、フィリピン、シンガポールの五か国間で、
海洋問題に対処する上での共通の規範・法の導入を
進めることで、中国の恣意的な妨害に対抗して
いくべきです。
TPPは、2010年横浜APECで首脳宣言がなさわれた
「アジア・太平洋自由貿易圏の創出」に向けて
の数あるアプローチのうちの一つであり、その
最終目標は、「北米自由貿易協定」(NAFTA)や
「欧州連合」(EU)を凌ぐ
「アジア太平洋自由貿易圏」(FTAAP)の構築に
あります。
先日、日本がTPP交渉参加を表明したのを受けて、
カナダやメキシコもTPP参加の意向を表明しました。
TPP交渉中の9か国に加えて、日本、メキシコ、
カナダが加わった場合、GDPベースで世界経済に
占める比率は約4割に達します。
既に、米国はこれまでの欧州・中東重視の外交・
軍事戦略から、アジア・太平洋地域への
コミットメントを増やしていくことを決定しています。
「アジア太平洋自由貿易圏」の実現に向けては、
TPP以外にも、韓国が提案し、中韓が推すASEAN+3による
「東アジア自由貿易地域」(EAFTA)構想、ASEAN+6に
よる「東アジア包括的経済連携協定」(CEPEA)構想
などが同時並行的に動き出しており、米中間で
自由貿易圏達成に向けての主導権争いが展開されて
います。
インドネシアで19日開催される東アジア首脳会議では、
東南アジア諸国連合(ASEAN)+6
(日中韓、オーストラリア、ニュージーランド、インド)
の16カ国で広域自由貿易圏の構築を目指す宣言草案が
明らかにりました。
中国は当初、自国の影響力低下を懸念して、
ASEANプラス3(日中韓)の13カ国案を主張していました
が、米国主導で環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が
加速するのを警戒し、16カ国構想に歩み寄って、
米国をけん制する姿勢と見られます。
(11月15日 日経新聞)
日本としては、自由貿易圏達成に際して、鳩山氏が
提唱した「東アジア共同体構想」のような
「中国主導の枠組み」が展開されていくことは、
安全保障における東アジアの勢力均衡の観点からも
決して望ましいものではありません。
もちろん、日本を除くアジア太平洋諸国による
自由貿易圏(日本だけ貿易鎖国状態)が構築されることは、
日本にとって最も不利な状況を招くことは言うまでも
ありません。
今後はTPPやCEPEA(ASEAN+6)の展開を見極めながら、
上手な対中バランシングを構築していくことが
望ましいと考えます。
http://kurokawa-hakuun.hr-party.jp/eco/1926/
。
実はTPPは「対中包囲網」だった
http://blog.goo.ne.jp/sakurasakuya7/e/c1a89200b0ddde30cd8f8425c79ad5ef
TPP参加総論賛成
http://blog.goo.ne.jp/sakurasakuya7/e/bda51cf2c411ea976feeaaf7eff959de
TPPに踊らされる日本に思う。
http://blog.goo.ne.jp/sakurasakuya7/e/4fbc4161001584f0adb51bf01583f879
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