ウクライナ戦争のリアルな戦況分析。世界屈指の政治学者、ミアシャイマー教授。消耗戦を決める三要因とは?(釈量子)【言論チャンネル】
◆ウクライナの反転攻勢
ウクライナの反転攻勢が始まりました。
6月4日時点のウクライナ戦争の状況を地図に表した「戦争研究所の地図」をみると5月21日頃、ウクライナ戦争の激戦地バフムトが陥落し、ロシアの支配下になりました。
戦争研究所の戦況地図
https://storymaps.arcgis.com/stories/36a7f6a6f5a9448496de641cf64bd375
5月22日、ウクライナの兵士が国境を越えて、ロシア国内のベルゴルド州を襲撃しましたが、その後ロシア軍に鎮圧されています。
さらに6月4日頃、ウクライナ軍がバフムトやザポリージャ州の南部で反転攻勢を開始しましたが、6月6日には、ウクライナ東部のカホフカ水力発電所のダムが爆破されました。
ウクライナはロシアがやったと言っていますが、ロシア側にも塹壕が流され甚大な被害が出ましたので、欧米側も事故ではないかという報道も出ています。
ウクライナ軍の反転攻勢は、ロシアとクリミア半島を分断することを狙っており、ザポリージャ州南部のロシアの防衛線を突破して、マリウポリやベルジャンスクまで進軍することを目指しています。
◆ロシアの野戦要塞を突破できないウクライナ軍
ウクライナ軍は7つの集落を奪還していますが、国境線に沿ってロシアが広範囲に渡って防衛線を展開しているため、ウクライナ軍は前線を突破できていません。
しかも、ロシア軍の攻撃によって西側が提供した戦車や兵器に大きな被害が出ています。
6月12日のCNNによると、米国はこれまで109台のブラッドレーをウクライナに提供してきましたが、そのうち15%が、ロシア軍によって破壊されたと報じています。
また、ゼレンスキー大統領は、「ゲームチェンジャー」になると話していた、フィンランドが供与した地雷を除去しながら、部隊を前線に安全に運ぶことができる戦車レオパルト2は、ロシア軍によって6台のうち3台が爆破されました。
6月13日、プーチン大統領は「欧米が提供した兵器の25~30%を失わせた」「ウクライナは戦車160両、装甲車360両以上を失ったが、ロシアが失った戦車は54両」「ロシアの損害はウクライナの10分の1」と指摘しました。
ゼレンスキー大統領にとっては、武器さえあれば反転攻勢が成功するということを示したいところですが、予定通りには進んでいません。
◆ミアシャイマー氏の見解
戦況は今後も変化していくと思いますが、今後の戦況について、シカゴ大学のミアシャイマー教授の見解を紹介したいと思います。
日本では、昨年5月に「文藝春秋」に特集記事が掲載されたので、ご存知の方もいらっしゃると思います。
【1】 ロシアが戦争に勝利する
ミアシャイマー教授は5月22日、「ウクライナ戦争は今後どうなるのか」という演題で講演し次のように言っています。
「ウクライナ戦争は、第一次世界大戦に似た「消耗戦」であり、消耗戦では、(1)決意、(2)人口、(3)弾薬量、の三つのバランスを見る必要がある。」
これらの点を総合すると、ミアシャイマー教授はロシアが戦争に勝利するだろうと見ています
「決意のバランスについては、ウクライナ軍は領土を奪還するために戦っている一方で、ロシア軍は特別軍事作戦の目的を果たすために戦っている。どちらも確固たる決意が備わっており、甲乙つけがたい。」
続いて、ミアシャイマー教授は次のように分析しています。
「人口のバランスについては、人口バランスで見ると、ウクライナ人1人に対してロシア人3.5人だったが、現時点でウクライナ人1人に対してロシア人5人になった。」
「弾薬量のバランスについては、おそらく、ロシア5:ウクライナ1、もしくは、ロシア10:ウクライナ1だろう。」
「ウクライナはすでに総力戦になっており、75歳の兵士も数多く参戦している。訓練も十分になされていない、が、ロシアは正規軍に加えて、新たに30万人を動員している。」
「バフムトの戦いでは、ウクライナの最高の部隊が追い出されたが、ロシア軍の本流にある正規軍はまだ本格的に投入されていない。(5月22日の講演当時)」
シカゴ大学のミアシャイマー教授の見解の続きを紹介します。
【2】和平合意の可能性
ミアシャイマー教授は、和平合意の可能性について分析し「両国が合意することは難しい」と結論づけています。根拠として三つあげています。
まず、「領土の問題」です。
「ゼレンスキー大統領はウクライナの領土を取り戻すことなしに、停戦合意はあり得ないと言っている。一方で、ロシアは併合した四州とクリミアを絶対に手放さない。」
「次に、「中立化の問題」がある。ゼレンスキー大統領はNATOに加盟したいが、加盟させてもらえない。しかし何らかの安全保障の枠組みを米国やNATOに求めている。」
「一方で、ロシアは開戦当初よりウクライナの中立化を求めている。ロシアはウクライナに中立化の意思がないならば、ウクライナという国家を機能不全に陥れることを考えている」というわけです。
ちなみに6月2日、ゼレンスキー大統領はエストニアのカリス大統領との共同記者会見で、「戦争が続いている間はNATO加盟国になれない。加盟を望んでも不可能だからだ」と発言しています。
さらに、ミアシャイマー教授は「信用の問題」を指摘しました。
「2015年に締結したミンスク合意について、西側のリーダーはプーチンにウソをついた。ミンスク合意には、ドンバスの紛争を終了させるという内容が含まれていた。」
「当時のドイツのメルケル大統領、フランスのオランド大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領、ロシアのプーチン大統領の間で約束していた。」
「しかし当時の西側リーダーたちはミンスク合意を機能させることに関心がなかった。彼らはロシアと戦うためにウクライナを強化するための時間かせぎを考えていた。なので、プーチンは西側を信用していない。」
以上のことから結論として、ミアシャイマー教授は、ウクライナ戦争が停戦合意に至ることは難しいので、いわゆる「凍結された戦争」になるだろうと主張します。
これは、朝鮮戦争の際に38度線で結ばれた休戦協定のイメージです。韓国と北朝鮮はあくまで休戦状態であり、戦争が終結しているわけではありません。
講演の終盤でミアシャイマー教授は、「米国には『NATOの東方拡大が大きな災いをもたらす』と主張している人が数多くいて、これは驚くべきことだ」と話しました。
さらに興味深いのは、「プーチン大統領はミンスク合意を大事にしていたので、ドンバスに侵攻するつもりはなかった。2021年12月に解決策を提示したが、バイデンは聞く耳を持たなかった。」
ミアシャイマー教授は、一貫して「NATOの東方拡大に問題があり、プーチンにウクライナ侵略の意図はなかった」と主張しています。
最後に、「ロシアが勝利すると思っているが、ロシアが万一負けそうになれば、核兵器を使用する可能性がある」と警告しました。
◆日本が果たすべき役割
ウクライナ戦争における日本の立ち位置は完全にNATO側です。
最近も、6月2日、米軍が砲弾を増産するために日本企業に「火薬」の生産を依頼しているという報道がありました。
サプライチェーンに組み入れられると日本はいよいよ弾薬の支援をすることになります。しかし日本のこれ以上の肩入れは、日本を危機に晒すことにもなるので無用だと思います。
NATOの連絡事務所を日本に設置するという話も出ていますが、これにも反対です。日本はEUの一員でも、NATOの一員でもないからです。
ちなみに、世界がウクライナを見ている間に、中国軍は揚陸訓練を実施し、戦闘機が台湾海峡を脅かすなど、活発になっています。
日本の報道では、未だにゼレンスキー大統領を英雄視する見方が大半です。
しかし、ゼレンスキー大統領は、究極の事態を予想せず、撤退戦を知りません。このままでは国を滅ぼす最悪の大統領になる可能性があります。
幸福実現党は、ウクライナの国民を守るためにも、ウクライナの中立化によって国民の命を守るとともに、世界大戦に拡大することを避けるべきだと主張してきました。
ウクライナの側も国民を守るため、EUとロシアと中立の関係で存続への道を模索する方が、必要なのではないでしょうか。
ブラジルやインドネシアなどは停戦を呼びかけていますが、日本こそ、停戦の仲介に力を尽くすべきではないかと考えています。

執筆者:釈 量子
幸福実現党党首
マスコミが報じないウクライナ戦争。ウ軍の反撃は成功するのか?(釈量子)【言論チャンネル】
1:42秒位からかなぁ。
ウクライナ政府が決めていた制限をゼレンスキーさんが撤廃していた?
2019年の大統領就任ですからね。
IMFと世界銀行は金融秩序的に言うと
BISの下ですからね。
借金奴隷にされた挙句に、国土を売れと?
ゼレンスキーさんは日本的にいうと戦争する前から売国奴?