「下山の思想」は世界にもあった!
脱成長論の危険性を斬る
[HRPニュースファイル289]転載
2012年5月30日
村上龍氏が主宰するメールマガジンJapan Mail Media(以後JMM)
で「経済成長と幸福」を扱ったテーマがありました。
詳細はこちら http://bit.ly/N9QxyL
□成長期に必ず出てくる脱成長論
上記のメルマガでは、大方成長を肯定する意見が多く出ていますが、
巷では「下山の思想」をはじめとする「脱成長論」が蔓延しています。
こうした議論は古くからあり、決して新しい話題ではありません。
例えば、1970年代の高度経済成長期には公害や都市過密化などが
社会問題化したことを受け、「くたばれGNP」という議論が
ありました。
80 年代に入ると、いわゆる「バブル経済」期に中野孝次氏の
『清貧の思想』がベストセラーとなる現象が起きました。
もう一つ例を挙げれば、1970年代にローマクラブが「成長の限界」
というレポートを出し、20年間で石油資源は枯渇するため、
成長には限界があると予測しました。現実は、全く逆であり、
彼らは技術革新の効用を見落としていたわけです。
□幸福を指数化する試み
近年では、ノーベル経済学者のJ・スティグリッツとアジア人
初のノーベル経済学者であるA・セン教授は、GDPは極めて不完全
な会計であり、人間の幸福度を測る指標を作成することを研究
しています。実際、フランス政府は二人の教授を招聘したほど
力をいれています。
日本でも1973年に経済審議会がNNW(Net National Welfare 国民純福祉)
の導入を試みました。
GDPには含まれない公害や個人の余暇の経済価値を金額に換算して
評価する手法です。ただし、指標を作成する際の基準が曖昧であり、
指数化することが難しいため、NNWは「なにがなんだか分からない」
と揶揄され、結局失敗に終わっています。上記二人の教授が進める
研究は、果たしてうまくいくのか、極めて疑わしいと言わざるを
得ません。
成長と幸福に関してはブータン王国の例があります。
ワンチュク国王夫妻が来日されたことでも有名になったのが、
GNH(Gross National Happiness、国民総幸福度)と呼ばれる手法です。
人口70万人の9割程度が幸福を感じているとして、メディアでも
紹介されましたが、見落とされている事実があります。
ブータン王国は09年の成長率は6.7%、10年には8.3%、11年には
8.1%を記録しています。つまり、ブータン王国では経済成長の
重要性を十分に認識したうえで、生活の質や幸福を追求している
のです。成長なくして幸福はないと言い換えても過言では
ありません。
□経済成長なき幸福という幻想
成長と幸福の関連性は、欧州でも活発に議論されています。
ニューズウィークのシュテファン・タイル記者の10年4月26日
の記事によれば、イギリスやフランスでも「下山の思想」に
相当する考え方が政策に影響を与えていることが分かります。
ただし、シュテファン記者は、脱成長論の道徳倫理的な価値観を
認めつつも、健康や長寿、生活の質は経済成長と密接な関係に
あることを強調します(前回紹介したR・バロー教授の研究も
同様の結論を出している)。さらに、経済危機や成長が鈍化する
としても、成長を諦める理由はないとします。
むしろ、教育や技術革新などを通じて成長を高める政策に全力を
尽くすべきだと提言しています。→ http://bit.ly/KENDks
これまでの議論を総括に相当し、脱成長論は間違いであることを
強調しているのが、法政大学大学院の小峰隆夫教授の論文です。
小峰教授は、成長には所得上昇と雇用の増大、税収の拡大などを
含め七つのメリットがあると説き、「経済成長は七難を隠す」
と言い切ります。
同教授は、「脱成長を唱える人は、自分の所得を喜捨してから
そういうことを言ってほしい」という趣旨の発言をした高名な
経済学者の言葉を引用していますが、まさに正鵠を得た言葉です。
脱成長論者には、高名な政治家や学者、メディアに存在しますが、
そういう方はえてして高所得者です。ご自身の信念として清貧の
思想を貫くのは結構ですが、国の成長を否定するのは間違っています。
□脱成長論は亡国への道
これまでの議論からわかる通り、経済成長と幸福には正の相関関係が
あると言えます。人間の悩みの大半が経済的問題であることを考慮
すれば、成長が果たす役割は無視できません。貧しい方を本当に
救いたいならば、やはり成長することで所得や雇用を増やすべきです。
ましてや、震災や原発事故があった日本で脱成長を唱えるのは、国家
としての自殺行為です。その意味で、脱成長論は亡国への道であり、
絶対に与してはなりません。(文責:中野雄太)
執筆者:中野 雄太 (46)
幸福実現党静岡県本部幹事長
公式サイト: http://yutasteve.blog.fc2.com/
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他人には清貧を勧めるなんて悪魔ですね。
脱原発論者たちもみな同じことです。
簡単な矛盾に気づかない人たちです。
ミクロ、マクロの違いを理解しない人が多すぎることが問題です。
ミクロ思想をそのままマクロにすり替えようとする。
この考え方こそ諸悪の根源です。