2016.8.31 01:00 http://www.sankei.com/premium/news/160831/prm1608310001-n1.html より
【政界徒然草】 護憲派は改憲派だったのか?!
天皇陛下の生前退位で「改憲すべき」…民進党支持者80・8%&共産党支持者70・7%
天皇陛下が8月8日、ビデオメッセージで「生前退位」への強いご意向を表明された。これに関連した興味深い世論調査結果が出た。ビデオメッセージ直前ではあるが、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が同月6、7両日に実施した合同世論調査によると、「生前退位が可能になるよう憲法を改正してもよい」との回答が84・7%に達したのだ。生前退位の是非はさておき、国民の憲法改正に対する「壁」という意味で、驚きの数字だった。
数字を支持政党別でみると、さらに興味深い傾向がうかがえた。憲法改正を党是とする自民党支持層では、88・7%が改憲に賛成した。それをも上回ったのが公明党だ。現行憲法に新たな条文を加える「加憲」の立場を取りつつ、具体的な憲法改正の推進には慎重な同党の支持層では89・8%が改憲に賛成したのだ。より衝撃だったのは、護憲派の政党だった。「絶対護憲」を掲げる共産党支持層でさえ改憲への賛成が70・7%に達し、社民党も78・9%という高い数字が出た。憲法改正への立ち位置が相変わらずはっきりしない民進党支持層も賛成は80・8%だった。
単純に比較できないが、7月16、17両日に実施した産経・FNNの合同世論調査では、憲法改正そのものへの賛成が42・3%、反対が41・7%だった。最近の改憲の賛否は、おおむねこの数字と同じ傾向が続いている。従って、生前退位を可能にする憲法改正だけ賛成が突出しているのは、ある意味矛盾していることになる。もっとも、8月の世論調査の設問には多少の説明が必要だ。設問の全文は次の通りである。
「今後、天皇の『生前退位』が可能となるように、憲法を改正してもよいと思いますか、思いませんか」
一つ前の設問では、「現在の皇室制度では、天皇が生前に退位し、天皇の位を皇太子に譲る『生前退位』の規定がありません。生前退位について、あなたは政府がどのように対応するべきだと思いますか」とあるが、生前退位のために憲法改正が必要不可欠なのかどうか、現行憲法の下で実現するために何か障害があるのかといった丁寧な説明がない。一般論として、電話で行った世論調査で詳細な質問を行うのには限界がある。とはいえ、生前退位のための改憲賛成が多数を占めた背景には、「陛下のご意向を尊重するためならば、ありとあらゆる手立てを講じるべきだ」と考えた人が多かったのではないかと推測する。
では、生前退位を可能とする憲法改正とは、いったいどのようなものが想定されるのだろうか。
まず憲法第2条には「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とある。従って憲法を改正しなくても、皇室典範の改正で生前退位を定め、陛下のご意向は尊重できるとの説がある。一方、憲法第1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」としている。「天皇の意思」で生前退位をした場合、「国民の総意」に反しかねず、憲法改正で生前退位の規定を明記する必要があるとの論点もある。
また、憲法第4条1項は「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」としている。政府や国会が今回の陛下のメッセージと直結して何らかの政治的な動きをした場合、「天皇の政治行為」を禁止したこの項目に抵触するのでないかとの議論がある。現実的ではないと思うが、この4条の規定を改正して「天皇の政治行為」を認めるようにすることも理屈としてはあり得る。ことほどさように、生前退位と憲法改正をめぐる論点は尽きない。そんな中、安倍晋三首相は陛下のメッセージの後、記者団に「天皇陛下ご自身が国民に向けてご発言されたことを重く受け止めている」と述べ、以下のように続けた。
「天皇陛下のご公務のあり方などについては、天皇陛下のご年齢やご公務の負担の現状にかんがみるとき、天皇陛下のご心労に思いをいたし、どのようなことができるのか、しっかり考えて決めなければいけないと思っている」
陛下のご意向に向き合いつつ、憲法4条との兼ね合いの中で政府として何がやれるかを模索する-。そんな苦悩がうかがえる発言だった。政府はいずれ何らかの対応を迫られることになるだろう。「陛下のご意向に直結して動くわけではない」との姿勢は建前に過ぎないかもしれない。それでも現時点で政府として憲法に抵触しない範囲で発することができるギリギリの線の言葉だった。
ところが、ふだんは盛んに護憲を訴える勢力は陛下のメッセージを受け、政治的な動きの加速に前のめりになっている。憲法4条の規定は眼中にないかのようだ。共産党の志位和夫委員長は陛下のメッセージ直後の記者会見で「政治の責任として生前退位について真剣な検討が必要だ。国会として政治の責任においてなされるべきだ」と明言した。志位氏は「今日のご発言を直接受けた形での立法ということではなく」と断ってはいたが、「可能性としては皇室典範の改正、あるいは特別立法といういくつかのやり方がある」とまで踏み込んだ。
志位氏が陛下のご意向を受けて即、法的な対応が必要だと主張したことは意外だった。護憲派こそが憲法4条を完全に順守するものだと思っていたからだ。そもそも皇室制度に本質的に反対の共産党が、あたかも「天皇の政治利用」を率先しているようにも映った。
社民党の又市征治幹事長も、陛下のメッセージ後に「必要があれば皇室典範を改正するなどの対応を行うべきである」との談話を出した。
志位氏は「これは法律の改正の問題だ。憲法の改定に関わる問題ではない」とも述べた。「憲法改正ありき」で陛下のご意向を利用することは、それこそ憲法の精神に反し、厳に慎むべきだ。だが、仮に陛下のご意向を尊重するために憲法改正が必要だとしたら、その選択肢を最初から否定するのも不可解な話である。共産党よりも共産党支持層の方が柔軟だからこそ、改憲賛成派が多数を占めたのだろう。
いずれにせよ、憲法改正に否定的だとされる世論の壁は、状況によっては簡単に崩れる可能性があることがはっきりした。共産、社民両党はこの際、憲法改正を否定しない自らの支持者と真剣に向き合ってはどうだろうか。(政治部 酒井充)
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日本が強くなる可能性があることは全て反対。 弱くなる隙が出来ることは全て賛成。
中国様の命じるままに動いてるだけよ。