世紀の大プロジェクトか、こけおどしの大風呂敷か-。中国政府が幅120キロ超の台湾海峡に世界最長の海上大橋と海底トンネルを建設し、中国本土と台湾を結ぶ計画を喧伝(けんでん)している。台湾への武力侵攻を排除せず軍事的な威嚇も強める習近平指導部からの一方的な提案に、台湾側の反応は当然ながら「独りよがりだ」と冷ややかで、軍事利用への警戒感も根強い。
中国と台湾を橋やトンネルで結んで「陸続き」にする計画は、習近平国家主席が台湾対岸の福建省幹部だった1990年代から取り組んでいる自身肝いりの構想だ。2020年までの「第13次5カ年計画」に福州と台湾を鉄道で直接結ぶ構想が盛り込まれるなど、中国側の長期インフラ構想にしばしば登場してきた。
ただ台湾側では、対中傾斜を強めた国民党の馬英九政権(08~16年)ですら、世論の対中警戒感の高まりを背景に大橋計画へのゴーサインを出すことはなかった。計画の本格始動には台湾側の合意が不可欠で、膠着(こうちゃく)状態が長年続いている。
にもかかわらず中国の習指導部は、同計画への前のめりな姿勢を崩していない。想定ルートの一つで中国側の起点となる福建省福州市から、台湾に最も近い中国の島である平潭(へいたん)島までの約90キロ区間は、20年に高速道路と鉄道が開通した。中国側から海上大橋に接続する「取りつけ道路」部分がすでに完成していることになる。
今年2月には、共産党中央と中国政府が発表した35年までの全国的な交通運輸網の整備計画案に「福州から台北」に至るルートを明記。中国で台湾政策を担う国務院(政府)台湾事務弁公室の報道官は11月下旬、この整備計画に言及し、「両岸(中台)同胞のためによりよい交通運輸資源とサービスを提供できる」と早期建設をアピールした。
《ニュース》
中国政府は、幅120キロメートルを超える台湾海峡に、2035年までに世界最長の橋と海底トンネルを建設し、中国本土と台湾を結ぶ計画を進めています。すでに一部の道路は完成し、習政権の本気度がうかがえます。
《詳細》
中国と台湾を「陸続き」にする計画は、福建省福州市と台湾・台北市などをつなぐ複数の候補が議論されており、習近平・国家主席が福建省幹部の時代から温められてきました。習氏は2019年に「福建省沿岸から電気、ガス、橋をつなげる」と指示したほか、現地視察も20回以上行ってきたなど、同氏肝いりの構想であるのは間違いありません。
今年11月24日、中国政府の台湾に対する窓口である国務院台湾弁公室の報道官がこの計画の進捗状況に言及。中国本土と台湾の中継地である福建省・平潭(ピンタン)島の公道鉄道両用大橋は開通したといいます。現地では、台湾への延伸を意識した8車線の幹線道路も敷かれ、高層マンションが続々建設されています。
《どう見るか》