離人っこ

小説 虐待から生き延びた女の子の話

離人のはじまり

2019-12-02 12:34:42 | 日記
物心ついたころから

父と母が殴りあいをして

家の中で大暴れして

叫び

物を壊し

そこらじゅうが

血まみれになっていた

お母さんの助けて!助けて!の叫びで

子供ながら必死で体をはって

母親の体に身をのせた

それもむなしく

母親は殴られ


血まみれになっていた

そんな光景をボンヤリ眺めていた


ある日から

母親の目付きはわたしに向けられ

両足をつかまれ

床に何度も叩きつけられた

まるでぐったりした人形のように

ばたんばたんと

何度も床に叩きつけられ

暗闇のなかで


何度も殴られた

痛い

悲しい

辛い

もう許してほしい

もうはやくおわってほしい

何度も願いながら 


なんども

許して!と

懇願するが

許してもらえず

殴り続けられた

わたしは

許しを求めても


消して許させないことを

ここで


体で思い知らせられ

許されない絶望から

身をまもるために

あみだした魔法が

離人である

心を遊園地にとばし

殴られている間は

わたしは遊園地であそんでいるので

いたくも悲しくも辛くもない

立派な離人っこが

このときに形成された

そして

離人っこであるがために

幸福と不幸を両方味わう人生を送ることになるのだった

離人っこのはじまりである