この映画は嵐の二宮和也主演とはあるが、話の舞台は過去(満州国)と現在の時代を舞台にして
明確に分かれているため、過去パートは西島秀俊が実質の主演となっている。しかも全編を通して
過去パートの方がボリュームがあるため、私の感想では二宮和也と西島秀俊のW主演といっても
良いのではないかと思う。演出としてこの2つの舞台を上手くリンクさせてはいるのだが、この
物語の肝であるところの「料理」という部分は現代ではほとんど描かれていない。初日の舞台挨拶
でも笑いを誘っていたほど、二宮和也演じる佐々木充は料理をしているシーンよりむしろ(料理が
完璧でないと)流し台に投げ捨てるシーンの方が印象にあるくらいだ。過去のシーンではレシピを
作るため必然的に料理を作るシーンや食べるシーンも多く登場していた。
私は原作を読んでいたため、『大日本帝国食菜全席』という200種類以上を超える高級食材を使用
した料理が映画でどう再現されるのかに興味があった。それともう一つ。山形直太朗が何故満州に
渡り前述のレシピ作りを命じられ、そのレシピがどうして失われることになったのかという経緯が
丁寧に描かれてかなりの頁が割かれていたので、それをどう映画では描くのかに興味があった。
原作を読んで強く感じたのは「料理には国境もなくいかなる民族の心をも融合する力を持っている。
料理とは人を幸せにするものだ。」というメッセージであり、人は気付くか気付かないかに関わらず
自分の生まれる前からなにかを受け継いでいる、それをまた次の世代に繋いでいく使命を帯びているのだ
ということだ。
原作の後半部分は佐々木充にその事を気付かせるのだが、壮大なミステリィの謎解きをしているようで、真実
に辿り着いていく件は鳥肌が立つ思いだった。その点、映画では時間の関係もあるのだろうが
コンパクトに纏め
られていたのが、私には少し不満だった。が、原作を読んでいなければ感動的な話になっていたと思う。
一緒に見た友人は原作を読んでいたが、涙するほど感動していたから、きっと私が原作に肩入れし過ぎている
のかも。
少し先入観を取り払って、もう一度観賞してみても良いかも知れないと思ったりもしている。